「虹」
本居 寝子
霧になる手前の空気が辺りを包んでいる。
瞼に伝わるひんやりとした感触に耳をそばだてて。
足先に清流の音、高みから流れの先をゆっくりと追いかける。
やって来る露をはらんだ風が、やがて深い茂みのそれを一層濃いものへと変えてい行く。
深い深い眠りから、
明けて行く空に立ったまま手を回して、私は、一本の木と浮遊していた。
深く切立った渓谷に添うせせらぎの音。
岩肌から枝を伸ばす青々とした匂い。
きらきらと影を撒きながら降り注ぐ木洩れ日。
過ぎて行く景色を、
案内されるそのままに、果て無い先を私は見つめていた。
まだ見ぬもの、
いつか架かる海と空を辿って。
ひと時、木に止まり休む鳥のように。
ひと息、風を掴んで飛ぶ鳥のように。
手を離し、
やがて飛んで行く鳥のように。
ー飛ぶ夢2ー
2009.8.2「Open Sesame」(初出)。
http://pub.ne.jp/nekome9_1/?entry_id=2329408
2013.8.30。
「様に」を「ように」に。読点を一箇所足しました。
《Plala Broach「土手猫の手」2013.8.30》
本居 寝子
霧になる手前の空気が辺りを包んでいる。
瞼に伝わるひんやりとした感触に耳をそばだてて。
足先に清流の音、高みから流れの先をゆっくりと追いかける。
やって来る露をはらんだ風が、やがて深い茂みのそれを一層濃いものへと変えてい行く。
深い深い眠りから、
明けて行く空に立ったまま手を回して、私は、一本の木と浮遊していた。
深く切立った渓谷に添うせせらぎの音。
岩肌から枝を伸ばす青々とした匂い。
きらきらと影を撒きながら降り注ぐ木洩れ日。
過ぎて行く景色を、
案内されるそのままに、果て無い先を私は見つめていた。
まだ見ぬもの、
いつか架かる海と空を辿って。
ひと時、木に止まり休む鳥のように。
ひと息、風を掴んで飛ぶ鳥のように。
手を離し、
やがて飛んで行く鳥のように。
ー飛ぶ夢2ー
2009.8.2「Open Sesame」(初出)。
http://pub.ne.jp/nekome9_1/?entry_id=2329408
2013.8.30。
「様に」を「ように」に。読点を一箇所足しました。
《Plala Broach「土手猫の手」2013.8.30》