遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

黒澤明監督『生きものの記録』(1955年)

2024-04-09 00:50:34 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

2024/4/8

・終戦から復興しつつある日本で、ある老人が水爆や原爆の恐怖から逃れるため家族を連れて南米に逃げようとする話。

・今の感覚で見ると、年を取ってから陰謀論に染まってしまい、せっかく築いてきた財産を切り崩していく感じに近いのでわりと共感できる人は多いかもしれない。

・ただ、よく見ると結構違う部分もあるので、そのまま入れ替えられるような話でもない。

・例えば、戦争からの時間が浅い。終戦から10年。戦争(特に原爆)で人が死ぬということが、今とは比較にならないくらい身近なことだったりする。

・彼の恐怖には根拠がある。

・未来人である自分は南米に逃げることが正解か不正解か知っているけど、これだって後出しに過ぎない。

・家族にジュースをふるまったり、必ずしも悪人というわけではないのが厄介。フード理論的に重要な行動。

・実際、中立の立場で観客の立場に一番近い調停役の藤田が、おじいちゃんに共感している。

・でも、やっぱり共感できないのは、このおじいちゃんが人の人生に口を出し過ぎること。自分の言うことを聞いていれば全部うまくいくんだという過信。

・当時の価値観をきちんと表現しているということでもあるんだけど、男女の力関係とか、日常生活の描写も見ていてきつい。

・おばあちゃんが完全に個を失っている。

・唯々諾々としていて、本来なら問題解決の最重要人物であるはずなのに、まったく機能していない。どちらかと言うと、火に油を注ぐ役なのが生々しい。

・縁側にいたおじさんが裏MVPだった。お化け屋敷じゃあるまいし、本気で怖がっている人を煽るな。

・おじいちゃんの役は三船敏郎。35歳なのに70歳の役を演じているそうだ。

・適齢の俳優がいないわけではないだろうけど、猛々しいおじいちゃんと弱々しい他の家族を対照的に見せるために必要な配役だったのかもしれない。

・あと、話のフックが少なめなので他の役者さんだったら退屈度が増していたと思う。

・タイトルがよくわからない。決めるのに苦労したという話を聞いたので、何だったら納得できるのか自分なりに考えてみたい。

(U-NEXT)

※▼タイトル決めに難航したという話。単なるブレストの可能性もあり。
徹底検証!『オッペンハイマー』と映画は原爆をどう描いてきたのか(高橋ヨシキ+柳下毅一郎+てらさわホーク)

 

コメント
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