2024/11/11
・幕末、会津の侍である高坂が、闇討ちのさなかに140年後の未来に飛ばされ、時代劇の斬られ役に転身する話。
・本物の侍がタイムスリップして、現代の時代劇に紛れ込むというコンセプトは誰でも思いつく範囲。
・アイディアは凡庸でも具現化するのは簡単ではない。
・時代劇の役者と140年前の侍を、フィクションの枠組みなかで差別化して見せなければいけない。
・そのあたり、主演の侍を演じた山口馬木也さんの演技力で何とかしていた。
・最初はメイクと衣裳の違いでわかりやすいけど、だんだん生活に馴染んできて、髪の毛、服装、行動までも現代化していくので、どんどん演技の難易度が上がる。
・髪の毛も服装も行動も現代人なのに、それでも幕末の人っぽい雰囲気を残せるのがすごい。
・本物の侍→時代劇の斬られ役に転身という、話の根幹部分に結構な飛躍があると思うけど、あんなに真正面から説明されたら納得せざるを得ない。
・現代社会に不慣れな人を茶化すような、ありがちなカルチャーギャップ描写はほとんど省略されている。
・むしろ、知的で謙虚、辛抱強さ、それゆえの著しい環境の変化に対する適応力。
・東北の人の良いパブリックイメージそのままの人柄で、好感度がすぐに上がるように作られている。
・「侍として生きたい。元の世界に戻りたい」となりそうなものを「豊かな日本になっていて嬉しい。自分の侍としての役割は終わった」と思える度量。
・こういう話だと支援者側の誰かは「昔の侍が現代にタイムスリップしてきた」と信じてあげるものだけど、それはしない。本人も説明しない。
・最初から最後まで記憶喪失でおかしなことを言っているおじさんとして認識されていて、展開のスピードアップに繋げている。
・時代劇というフィクションへの愛情を描く作品のなかで、本物の侍だからリアルな演技が見せられるというテーマ上の矛盾をどう解消するのかも難しいところ。
・歴史上の悲劇、終盤の見せ場、助監督の最後のリアクションを絡めて、エンタメの枠内で絶妙なところに着地させていたと思う。お見事。
・やや過去の話で、2024年現在の時代設定では成立しない話なのかと思うとちょっと苦い気持ちになる。
・助監督の眼鏡にレンズが入っていないのはずっと気になった。
(11/11 TOHOシネマズすすきの)
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