遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

ままごと『わが星』

2024-04-18 00:30:06 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

 

 

 

2024/4/16

・地球と月とその家族の在り様を、時報のリズムに乗せて言葉とダンスで表現していく話。話なのかな。

・作中で、幼い女の子であるちいちゃん(地球)とその幼馴染の月の関係性を人の一生分一気に見せる。

・最初は『わが町』と関係ないのかなと思ったけど、この部分だけ取り出すとやっぱり発想元と思われる。

・最初の時報のリズムにあわせて群唱するところは躍動感があってかっこいいんだけど、なかなか話に入っていかないので少し不安になる。

・抽象表現が多いと、全体の尺の中でどのくらい進んでいるのかわかりにくいので長く感じやすい。

・本作では、ちいちゃんと月の二人の物語が組み込まれていて、そういうストレスは少なかった。

・それだけなら良くも悪くも単なる「いい話」だけど、宇宙の概念をねじ込むことで、ものすごく遠くから突き放したような視点を獲得している。

・繰り返される誕生日とテレビと冷蔵庫の話は日常の象徴ということでいいのかな。

・振り返って考えていくと、やっぱり『わが町』がベースになっているような感じがしてくる。

・単になぞったり置き換えたりするのではなく、分解して組み直して、繰り返しで強調ポイントを作って、いろいろ装飾して、この形になっているように見える。

・本作は2011年の公演だけど、今の感覚だと、親と同居していて、夫が働き、妻が家事をする(夫婦それぞれが選択している言葉がそれっぽい)ような家庭って、日常の記号になりえるのかなと思ったりはする。

・必ずしも現代を描く必要はないんだろうけど。

・中盤から後半にかけては、演劇というより長いラップの曲を聴いている感じになってくる。

・セリフと動きと演出効果のタイミングがものすごくシビアで、一つ間違えると大混乱を招きそう。とてもハラハラする。

・どうして重なって寝たんだろう。月食?

・さらに終盤になると曲ですらなく祭りになっていく。

・囲み舞台なので客席も映っているんだけど、ニコニコで首を振りながらリズムをとっているお客さんがいてとても共感した。

・言葉レベルでも構成レベルでも、星の一生と、人の一生が上手いこと重なっていて、ほんとよくできた作品だった。

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関根光才監督『太陽の塔』(2018年)

2024-04-17 13:43:00 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

 

 

2024/4/16

・岡本太郎の作品や人柄を、10個のキーワードをもとに、様々な立場の人が証言していくドキュメンタリー。

・自分にとっての岡本太郎は、幼いころ、テレビで「芸術は爆発だ!」と言っているギョロ目のおじいさん。

・後になってたいへん優れた芸術家であり、ただの変わったおじさんではないことに気づかされた感じ。

・亡くなったのは1996年だが本作の公開は2018年。東日本大震災後。わりと最近。

・最初は万博というテーマで当時の様子を解説していく。

・当時も色々あったんだろうけど、カジノの前座として公費を浪費している今の大阪万博と比較すると、盛り上がり方にかなり差があるように見える。

・1970年から少しでも進歩しているのか、退化しているのか。

・当時の万博のテーマ、科学の発展による「人類の進歩と調和」に岡本自身は批判的だったのに、当時の責任者は彼を起用して、あんなに巨大なモニュメントを作らせたのは度量が広い。今なら無理そう。

・あれだけ色々あったのに太陽の塔だけ残っているのは不思議。

・科学の発展からこぼれ落ちるものを大切にしているという話。

・科学的に理解するために分類することはとても重要だと思うけど、手段と目的が逆転して分類さえすれば理解した気になっている人は多い。自分も気を付けたい。

・東北や沖縄など、各地の伝統文化に触れ、民俗学から考古学まで取り入れ作品に活かしている。

・「日本という泥にまみれるしかない」。

・アイヌのマレウマウや岩手の鹿踊もちょっと出てくる。

・「世界を支えているのは無名の人々」というキーワードはちゃんと咀嚼して血肉にしたい。

・話者の言葉にあわせて画面上に表示される線画演出がかわいい。

・「芸術は決意だ。決意した瞬間に芸術は始まる」。

・南方熊楠と比較されていた。「粘菌の中に大宇宙が見える」。

・生命として、人間としての根源的な力を引き出そうとしている感じなのかな。

・映像内でダンサーの菅原小春さんが『明日の神話』の前で踊っている映像がかっこいい。

・駅に作品があるので、ストリートピアノを置いたり、ごく簡単でも踊れるステージを作ったりすれば、岡本太郎とコラボできていいのに。やりたい人いるんじゃないかな。

・大阪に行きたくなった。

(PrimeVideo)

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クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第6話 ある愛に関する物語

2024-04-16 17:59:57 | DVD・VHS・動画など

 

2024/4/16

望遠鏡で隣の建物の情事を覗き見していた若い男トメクは、覗きの対象の女性マグダと仲良くなるが、性行為がうまくいかなくて自殺未遂する話。

解説文の(彼の視姦は性的なものではなく)「むしろ純粋な愛の対象を見守るまなざしとしてのみ心に残る」と自分の印象が全然一致しなくて困る。

彼女に会いたいがために、郵便局員が為替関連の書面を偽造するのもやりすぎに思える。好きな人をクレーマーに仕立てたのも陰湿すぎる。

1988年のポーランドならOKなんだろうか。

女性がそれに対して寛容すぎるのも変な誤解を招きそうだし、あげく手首を切って自殺未遂なんてただひたすら面倒くさい。

性交渉うまくいかなくて落ち込むのはよく聞く話ではあるし、映画の主人公が全員善人である必要はないけど、それにしても酷い。

ちゃんと調べない雑な局員(上司)も酷かったけど、こちらは日常にありそうな酷さ描写なので好き。

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ダニー・ネフセタイ『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』

2024-04-15 13:39:00 | 読書感想文

2024/4/1

イスラエル空軍に在籍経験があり、今は日本で家具を作っているイスラエル人が著者。情報量が多い。

最初に文章内でちゃんと右派と左派を定義しているところが信頼できる。

政治の話題で使われる「右」や「左」は、人によって意味が全然違うので、言葉としての機能を失ってることが多い。

本書では言葉を尽くして抑止力としての武装を否定している。キリがないという。

アメリカの銃規制みたいだなと思う。

自分自身、現時点で日本の非武装化は現実的ではないと思うけど、とりあえず理想を掲げて、そこに近づこうとすることは大事。

今は逆行しているのが残念。現実に敗北している。

一方で対パレスチナに関するイスラエル人の考え方、気持ちはわかる。肯定はできないけど、身近に同じような国があったから。

イヤなことは山ほどあるけど、パレスチナ人が生活していた痕跡すら徹底的に消すという活動がおぞましい。

アーカイブ精神の真逆。

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劇団あはひ『流れる —能“隅田川”より』(2022年)

2024-04-11 00:12:31 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2024/4/8

・松尾芭蕉と弟子の曾良が川の渡し守のところで、訳あり気な女と舟守と子供に出会う話。

・「奥の細道」ではなく、能の「隅田川」がベース。

・能という伝統芸能の敷居の高さはいったん脇に置いて素直に会話が楽しい。

・ライターの貸し借りだけでひと笑いある。

・舟守のところに自分が行くか弟子に行かせるか二人でいくかという、どうでもいいやり取りがおもしろい。

・物腰のやわらかな芭蕉になごむ。

・曾良は無自覚に失礼な人だと見ていたけど、女性と話す時はちゃんとしている。

・アレンジは現代劇風。服装や小道具、言葉遣いや会話も現代人どうしのやり取りに聞こえる。曾良が黒のダウンジャケットを着ている。

・「ご当地俳句読み倒れツアー」。

・時代感があるのは、川の船着き場みたいな場所だけ。

・舞台はモノクロ。きわめてシンプル。

・映像でも奥の黒い壁と床の白いパネルが地平線のように画面を二分している。美しい。

・登場人物の動きもシンプル。各人の動きよりも配置のほうが重要に見える。様式的で引き算の表現。

・二組に分かれてそれぞれで会話するところ、一組が会話を始めると、もう一組はストップモーションになる。

・時空が多層的になっている表現なのかな。どういうルールなんだろう。

・シンプルでも、立ち方歩き方がきれいで、かなり身体表現の訓練をされた人のそれに見える。

・登場人物の服装は黒い人が三人、白い人が一人、半分が一人。何か意味があるのかな。

・そのシンプルさが能っぽいと感じたけど、本当にそれが能に基づくものなのかはよくわからない。

・アトムが出てくると時間軸が良くわからなくなる。能と比べればはるかに現代なのに古めに感じる。

・境遇は似ていたとしても、なんでわざわざアトムと天馬博士にしたんだろう。

・能の隅田川と同じく、伊勢物語の「名にし負はばいざこと問はむ都鳥わが思ふひとはありやなしやと」が引用されている。漱石の話も出てくる。

・既存の作品の組み合わせる効果がうまく読み取れず、どういう意図だったのかしばらく考えてしまいそう。

(U-NEXT)

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クシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』第5話 ある殺人に関する物語

2024-04-10 00:39:58 | DVD・VHS・動画など

 

2024/4/9

タクシー運転手を殺した若者が死刑になる話。

その若者と、彼の弁護士、被害者の三者の目線で構成されている。

若者が凶行に及ぶ過程がよくわからない。

たぶん、わざとそういう風に見せている。

無軌道な若者がためらいながらも一線を越えるという話は、類型がたくさんありそう。

理不尽だけど、不運なタクシー運転手は、あんまり共感できないような人間性でバランスをとっている。

十戒で言うと、第6の「人を殺してはいけない」らしい。

ただ、殺人NGは一般常識の範囲なので、かえって難しいお題なのかも。

どこまで現実に即しているかわからないけど、死刑の準備や段取りが生々しい。

日常業務としての絞首刑。事前に床が開く仕組みを確認したり、縄の長さを調整したり。

ワイヤー巻き巻きおじさんが激しい。

死刑は国家による殺人であるという指摘は本当に妥当なんだろうか。

トイレのキザ男がかなりかわいそう。

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黒澤明監督『生きものの記録』(1955年)

2024-04-09 00:50:34 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

2024/4/8

・終戦から復興しつつある日本で、ある老人が水爆や原爆の恐怖から逃れるため家族を連れて南米に逃げようとする話。

・今の感覚で見ると、年を取ってから陰謀論に染まってしまい、せっかく築いてきた財産を切り崩していく感じに近いのでわりと共感できる人は多いかもしれない。

・ただ、よく見ると結構違う部分もあるので、そのまま入れ替えられるような話でもない。

・例えば、戦争からの時間が浅い。終戦から10年。戦争(特に原爆)で人が死ぬということが、今とは比較にならないくらい身近なことだったりする。

・彼の恐怖には根拠がある。

・未来人である自分は南米に逃げることが正解か不正解か知っているけど、これだって後出しに過ぎない。

・家族にジュースをふるまったり、必ずしも悪人というわけではないのが厄介。フード理論的に重要な行動。

・実際、中立の立場で観客の立場に一番近い調停役の藤田が、おじいちゃんに共感している。

・でも、やっぱり共感できないのは、このおじいちゃんが人の人生に口を出し過ぎること。自分の言うことを聞いていれば全部うまくいくんだという過信。

・当時の価値観をきちんと表現しているということでもあるんだけど、男女の力関係とか、日常生活の描写も見ていてきつい。

・おばあちゃんが完全に個を失っている。

・唯々諾々としていて、本来なら問題解決の最重要人物であるはずなのに、まったく機能していない。どちらかと言うと、火に油を注ぐ役なのが生々しい。

・縁側にいたおじさんが裏MVPだった。お化け屋敷じゃあるまいし、本気で怖がっている人を煽るな。

・おじいちゃんの役は三船敏郎。35歳なのに70歳の役を演じているそうだ。

・適齢の俳優がいないわけではないだろうけど、猛々しいおじいちゃんと弱々しい他の家族を対照的に見せるために必要な配役だったのかもしれない。

・あと、話のフックが少なめなので他の役者さんだったら退屈度が増していたと思う。

・タイトルがよくわからない。決めるのに苦労したという話を聞いたので、何だったら納得できるのか自分なりに考えてみたい。

(U-NEXT)

※▼タイトル決めに難航したという話。単なるブレストの可能性もあり。
徹底検証!『オッペンハイマー』と映画は原爆をどう描いてきたのか(高橋ヨシキ+柳下毅一郎+てらさわホーク)

 

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松井周の標本室『標本(複写)』(2021年)

2024-04-08 16:20:02 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

2024/4/8

光合成できる特殊体質だと気づいた俳優が、その後の生き方に悩む話。

ほぼ一人語りの進行。演者は金子岳憲さん。

客席に向かって劇場やコロナ禍について語り掛けつつ、少しずつフィクションの割合を増やしていく。

完全に話に入った後は、複数の登場人物を一人で演じながら進行する。

座っていないだけで、落語のテンポ感に近い。

主人公を脇に置いて、女性二人がつかみ合い、たたき合いをするシーンも、動作の単純化、取捨選択が巧みで、全くテンポを損なわずに一人二役を演じていた。

終盤の、プログラムをミスったMMDキャラみたいな機械的かつ非人間な動きもおもしろかった。

「余らせたもの」というキーワードは、あまり理解できなかったけど、突然変異と自然淘汰による進化論的なことなのかなと考えたりした。

なので、光合成ができたからって、生き残れるかどうかは別の話だった。

(U-NEXT)

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ヨハン・ヨハンソン監督『最後にして最初の人類』

2024-04-04 22:46:37 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

2024/4/4

作曲家のヨハン・ヨハンソンの音楽と、古典SF小説をもとにした20億年後の人類からのメッセージ、旧ユーゴスラビアの戦争記念碑「スポメニック」の映像を組み合わせた作品。

公式HPにもあったけど、物語ではなく、言葉に映像と音楽を組み合わせた詩でいいんだと思う。

スポメニックのことは知らなかったけど、説明がなくても、その奇妙さと大きさに魅了される。

たしかにSFっぽい見た目だし、異世界のそういう兵器なんだと言われたら納得してしまうくらい。

ネットで画像は見られるけど、大きさあってのものだと思うので、実物を見てみたい。

逆によく知っていたら、なんで戦争記念碑と20億年後の未来が融合しているんだろうとノイズになりそう。

映っている物体の数々が未来の人類の成れの果てなのかなと考えたりしたけど、そこまで言葉と絵は一致していない。

どこに力点を置いて楽しめばいいのか最後までわからなかった。

(PrimeVideo)

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クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』

2024-04-02 12:45:18 | 映画を見てきた

2024/4/2

・原爆の父と言われたオッペンハイマーの評伝劇。

・180分ある。家でサブスク視聴するには厳しい長さ。こういう作品こそ映画館がはかどる。

・せっかくの話題作なのでIMAXにしたけど、会話が9割だったので、そこまでこだわらなくてよかったかも。

・ただ、ロスアラモスの原爆実験はすさまじい。クリストファー・ノーランがCGを使わないということくらいは知っていたので、ますます凄みを感じる(実際にはちょっと使っていたらしい)。

・爆発時の数字を聞いて、単に大きな爆弾が炸裂したと思って喜んでいるライト層と、とんでもない異常な規模だとわかる専門家たちの表情の違いも見どころ。

・彼のキャリアの振り返りと、戦後の公聴会のシーンが切り替わりながら話が進む。

・最初、公聴会で調査しているのは人道的な意味での是非なのかな、ちゃんと検証しているアメリカはえらいなって思っていたけど、全然違っていた。

・セックス描写の必要性がわからない。特に公聴会中のシーンは、作り手側の悪ふざけに見えてしまった。そういうタイプの話ではないのに。

・冒頭にプロメテウスの説明。人類に火を与えた罪で永久に苦しみ続けるという神。そのまんま、この映画のオッペンハイマーを説明している。

・原爆を落とさないと日本は降伏しなかったのではないかという指摘。絶対ないとは言えないのがつらい。

・アインシュタインがイメージ通りの見た目と言動。

・科学者からの指摘を、決して正面から受けず、流して崩して倒す合気道の達人のような悪い政治家。

・なるほど、こうやって悪い政治家は正論と戦うのかと、暗い気持ちになる。

・一応、説明はあるので、オッペンハイマーと友好的な人、敵対者、この人たちは何をやろうとして何が問題になのか、最低限のことはわかるようになっている。

・それでも登場人物が多く、前提知識も足りず、何が進行しているシーンなのかよくわからない時間帯があった。

・映画や演劇を見るときは前情報なしが好きなんだけど、評伝劇に関しては展開に面白味があるわけではないので、下調べしてから見たほうがよかったかも。

・良くも悪くも戦争関連のグロい表現はないので、長時間のわりに見やすいタイプの戦争映画だった。

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