散歩路地《サンポロジー》      毎日が発見! 身近な自然が見えてくる!


 ☆ 多摩丘陵

 ☆ 世田谷の散歩道

 ☆ ネイチャークラフト

 ☆ 環境学習ゲーム

タコの葉細工とトビウオ桟橋  小笠原レポート 最終回

2013-09-03 | その他探訪記
夏の小笠原探訪。最後の話しをしよう。

小笠原土産で、僕のお気に入りは3つある。
①小笠原産のフルーツや野菜。
②わしっこの魚
③タコの葉細工

フルーツや野菜はすぐにわかると思う。特にバナナとシカク豆はお薦めだ。
バナナは、小ぶりのいわゆるモンキーバナナだ。甘いだけではなく、さわやかな酸味があり、何とも美味しい。そのほか、パッションフルーツやマンゴーも良いのだが、最近の世界遺産ブームのせいか、あまりにも値段が高騰してしまい、僕には手が出せなくなってしまった。

それからシカクマメ。これは、10cmほどのフリルのついた莢ができる豆で、その断面が、長方形に近いため付いた名前らしい。癖がなく、煮ても、茹でても、何と一緒に調理しても美味しく食べられる。その種も売っているので、買って帰り、我が家の庭に植えてみた。6株植えたら、夏の間は、2日に1回ボール一杯取れ、ほぼ毎日食べられた。

  庭で育ったシカクマメ(左)2011-09-17 と 収穫した莢 2011-10-01 共に庭(世田谷) 

ただ、9月の半ばになると、目ざとくウラナミシジミが現れて、せっせと卵を産んでくれる。ウラナミシジミは、日本の南岸に多く、小笠原にもいる。世田谷あたりでは、9月の中頃になるといくらか見られるが、それほど多くはない。それが、シカク豆を植えたら、毎日、何頭も居座って、せっせと卵を生んでくれる。卵はつぼみや若い莢に生むため、9月の終わりには、食べるのをあきらめた。あとはウラナミシジミに提供しよう。

   ウラナミシジミ(左)、産み付けられた卵(中)、幼虫が食い進んだ穴(右)2011-10-01 庭(世田谷)

わしっことは、和紙で作られた魚のことだ。これは型打ち落雁(砂糖菓子:これがわからないか?)のように、木型にちぎった和紙を詰めて形を作り、それに彩色して作ったものだ。
始めて見たものは、剥製かと思ったほど精巧なものだった。大変気にいって、行くたびに1匹ずつ買って帰り、今では10匹ほどが居る。


我が家の壁に泳ぐわしっこの魚たち(左)とユウゼン(右) 

最後は、タコの葉細工。
これは、タコノキという小笠原固有の植物の葉で作られた細工のことだ。美しく、強度が高いため、極めて実用的だ。

 
タコノキ 気根が幾本も下がる 2003-08-00 母島   タコノキの実 2010-10-17 母島

父島に棲む友人が、タコの葉細工の体験講座があるとおしえてくれたので、ビジターセンターに見学に行ってみた。
その日作っていたのは、ブレスレット。会場には、タコの葉細工のできるまでの行程を紹介したパネルや、実際の作品が並べられていた。指導も丁寧で、参加者はとても楽しそうだった。

 
体験講習会で展示されていたタコの葉細工と展示パネル(タコの葉細工研究会作成)

体験講習会の後、講師を務めていた友人と共にトビウオ桟橋へ向かった。そこにシロワニがきているというのだ。
シロワニとは、オオワニザメ科に属する大型のサメで、小笠原近海には多いらしい。これが、湾内に入ってきていて、夜間照明に照らされるトビウオ桟橋に現れるというのだ。

行ってみると、10人ほどの人がそれぞれに腰を据えていた。
「イヤー。シロワニ見たら帰ろうと思っていたんだけど、今日はまだ出ていないな~」などと言葉少なに話す。決して井戸端会議の会場になっているのではない。それぞれが、一日を振り返っているかのように、水面を静かに眺めているのだ。新たな傍観者が来ると、ちょっと挨拶を交わし、また、それぞれの時間に入る。
子どもたちもいた。小学校の中学年と思われる3人が、「今日はシロワニ来ないね~」と素朴な笑みを湛えている。時計を見ると8時半。都会の多くの子供たちはテレビを見たり、ゲーム機で遊んでいたりするのだろうなと思った。

 
昼間のトビウオ桟橋(手前) 2013-08-21 父島    ハリセンボン 2013-08-19 父島

なんとも良い時間…。

大人も、子供も、シロワニを通して、自分の心を見つめているように思えた。
母島でも、似たような経験がある。観光客のあまり来ない、夕日がきれいに見えるポイントへ連れて行ってもらった。そこへ着くと、既に来ていた村人に、「こんにちは」、「今日は雲が少しかかってるな」などと挨拶を交わし、その後はそれぞれの静かな時間に入るのだ。
夕日など、もう何回も見たはずなのに…。それでも、何度も足を運ぶ。まるで、夕日に透かして、自分を見つめているかのようだった。

結局その日、シロワニは現れなかった。僕は友人と共に、ふっと無重力的に浮かぶハリセンボンと、スクリンセイバーのように刻々と姿を変える小魚の群れを見ながら、ゆったりとした一時を過ごした。

都会生活者には想像できない時間が、そこにはあった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿