<塔ノ岳山麓のミツマタが綺麗に咲いている>
丹沢:ネコも踊り出す塔ノ岳の春
(第14回)(単独山行)
2008年3月12日(水)
■やっと塔ノ岳に登れるぞ!
昨日(3月11日)は,季節外れの暖かい日であった。私は,すんでの所で,塔ノ岳に行きそうになったが,一昨日,所用で出掛けていた小諸から帰ったばかりだったので,連チャンで家を留守にするのも気が引ける。何とか自制して自粛することにした。そのかわりに,今日,3月12日は,何をさておいても,塔ノ岳に登ろうと思っていた。
残念ながら,今日の天気予報は,余り芳しくない。それでも,12時頃までは晴のようである。ただ,午後から天気が崩れるらしい。今日の気温は昨日より5℃ほど低めで,寒いらしい。とはいえ,今はもう3月中旬である。寒いとはいえ,厳冬期の寒さとは大分違うだろうと,勝手に考える。
早朝4時に起床する。天気予報では「寒い」と言っていたが,実際は案外暖かい。私は昨夜来の決意を,即,実行して,午前中に塔ノ岳を往復してしまおうと思い立つ。
何時もの通り,大船から東海道本線に乗って,6時45分に小田原に到着する。この頃は,1ヶ月ほど前に比較して,夜明けがますます早くなっている。早出も苦にならず,随分と楽になってきた。
■山旅スクールの女性が乗り込む
何時ものパターンで,小田原で小田急電鉄の急行新宿行に乗り換える。駅のコンコースから,ホームまでの階段を降りて,手近なドアーから電車に飛び乗る。そして,直ぐ近くの座席に座る。ややあって,私の斜向かいにリュックを背負った中年の女性が座る。この女性,名前は良く分からないが,山旅スクールの山行で,ときどき一緒になる方である。
今日の私は,なるべく一人で山行をしたいと思っている。幸いなことに彼女は,斜向かいに私が座っていることに気が付いていないようである。そこで,私は素知らぬ顔で,目を閉じてタヌキ寝入りを始める。そして,ときどき薄目を開けて,辺りを見回す。
その内に,困ったことに,本当に眠くなってくる。今度は,渋沢駅を乗り越してしまわないかと心配になる。目をつぶったまま,眠気に耐えるのは,こんなに辛いものかと改めて実感する・・・が,それでも,ついウトウトとしてしまう。
突然,何かが急変したような感じがして目覚める。電車が,丁度,新松田駅に到着したところである。ふと気が付くと,斜向かいに座っていた女性は,新松田で下車したらしくて,見当たらない。多分,大野山か西丹沢方面に行ったのだろう。
私は,ホツとする。
■バス停大倉から歩き出す
何時ものように,渋沢駅7時16分発渋沢行バスに乗車する。どういう訳か,乗り合わせた登山客は,たった5人。ご常連は居ない。7時30分にバス停大倉に到着する。
私は,儀式として,全身のストレッチを済ませる。例によって,その間に,同じバスに乗り合わせた登山客は,私より先に歩き出す。登山客の内,お一人は鍋割山方面に向かう。塔ノ岳を目指す登山客は,結局,4人だけということになる。
7時41分に,大倉から歩き出す。暖かい。この所,晴天が続いたせいか,道路は乾いている。登山口から登山道に入ってからも,登山道は概ね乾いていて,とても歩きやすい。今日も,適当に汗ばむ程度の速度を維持しながら登ろうと思う。絶対に,汗が流れるような速度では歩かないと決心する。
■雪が消えた登山道
温度計を持っていないので,正確な気温は分からないが,今日は今年になってからの登山で,一番気温が高いような気がする。でも,天気予報では晴れるといっていたのに,上空には厚い雲が垂れ込めている。そのためか,湿度もかなり高いように思える。歩く速度を少し上げると,直ぐに汗が出てくる。私は汗が出ないように自重しながら歩き続ける。そのためか,前回のラップタイムと比較すると,観音茶屋を通過する時点で,1分ほど余計に時間が掛かっているようである。それでも,観音茶屋辺りで,同じバスに乗り合わせた方々全員を追い抜く。
8時16分に見晴茶屋を通過する。出だしをユックリと歩いたこともあって,見晴茶屋からの急坂は,案外速い速度で登り続けて,8時30分に一本松を通過する。一本松の直ぐ上の日陰には,これまで凍り付いた雪がしつこく残っていたが,今日は跡形もなく溶けている。多少泥濘になっているが,靴がめり込んでしまうほどひどくはない。
8時44分に駒止茶屋を通過する。茶屋の手前に残っていたアイスバーンは完全に消失している。何時もなら見晴らしの良い尾根路も,今日は深い霧に覆われていて,眺望は全くない。ただ,登山道の状態が良いので,思い切り速く歩けるのが嬉しい。
8時58分に堀山の家を通過する。堀山の家手前のアイスバーンも完全に溶けている。堀山の家から花立山荘までの階段路にも,残雪は全くない。絶好の気温なので,とても楽に登り続けることができる。
途中で,数名の登山客を追い抜く。
<萱場平の雪は完全に消えた(定点観測)>
■花立山荘
9時36分,花立山荘を通過する。数名の登山客が,山荘前のベンチで休憩を取っている。
霧がますます深くなる。花立山荘を過ぎる頃から,登山道の両側に残雪が見え始める。上り階段過ぎて岩稜のコルを通過する。さすがにこの辺りまでくると,表面が泥で覆われた根雪が沢山残っている。
山頂から降りてきた人とすれ違う。私は,
「この先に雪は残っていますか?」
と聞いてみる。
「まあ,大分,残ってはいますよ・・・でも,アイゼンなしで十分歩けますよ・・」
と教えてくれる。
<金冷し付近の残雪>
■塔ノ岳山頂へ
金冷し手前の下り坂には,まだかなりの雪が残っているが,踏み跡やスプーンを拾って歩けば,特段の困難もなく通過することができる。
9時49分に金冷しを通過する。この辺りの階段路は,つい先日まで雪に覆われていたが,今日は雪が消えた代わりに,かなりの泥んこ道になっている。
さらに先へ進むと,所々に沢山の雪が残っている場所が連続して現れる。所によっては,まだ階段が深い雪に覆われている。
やがて山頂直下の急な階段道になる。前を歩いている男性に追いつく。男性は,
「随分早いですね・・・何時に歩き出されたんですか?」
と話しかけてくる。私はメモ帳を取りだして,7時41分に歩き出したと答える。
「いや~ぁ・・・後からドンドンと近付いてくる人が居るんで,驚いていましたよ。山頂までどのくらいの時間で上がるんですか?」
と私に聞く。
「道路の状態や,気温などの条件で随分と違いますが,大体,2時間20分前後です。でも雪が深くてアイゼンを使ったときは,2時間40分も掛かりましたよ・・・」
「ええ~っ・・・2時間20分で・・・凄いですね」
「飛んでもない! 尊仏山荘のご常連の中には2時間を切る人はザラ。私など鼻も引っかけられませんよ・・」(※これは事実)
この男性,私に道を譲ってくれないので,仕方なく,男性の後に付いて,雑談をしながら登る。話題は私の履いている長靴のことが中心となる。
10時01分に塔ノ岳山頂に到着する。今日の所要時間は2時間20分。男性とのお喋りがなければ,2時間18分程度で山頂に到着できたかもしれない。今回も,20分の壁が破れなかった。まあ,残念といえば残念である。
山頂の雪は大分少なくなったものの,まだ一面の銀世界である。
今日の山頂は視界が全くない。
<塔ノ岳山頂の残雪>
■尊仏山荘
一緒に登った男性は,すぐに下山するという。そこで,この男性とお別れして,私1人で尊仏山荘に顔を出す。今日の小屋番はOさん。私の顔を見ると,注文する前にお茶の準備を始める。先客が1人居る,若い方である。どうやらご常連のようである。
早速,小屋の寒暖計を覗く。今日,10時現在の山頂の外気温は+3.6℃。随分と暖かい。
私と殆ど入れ替わりに,このご常連は山荘を出ていく。
私は,Oさんに,
「・・今日の気温はプラスですね。随分と暖かいですね」
と話し掛ける。
「昨日はもっと暖かでしたよ。もう春ですね。内のネコも『ギャアオ,ギャアオ』って変な声で鳴き出しましたよ・・・」
「ああ・・・今日は彼女探しですか?・・・それで,姿が見えないんですね。営業部長が仕事ほったらかしで『ギャアオ,ギャアオ』ですか。困ったものですね」
「そうなんですよ・・・」
「スクールの連中と,『ネコのミー君に会う会』でも作ろうと思っていたのに・・・春は会えないですね」
「早く会を作らないと,ミーが死んじゃうよ・・・」
「でも,まだ若いですよね。確か8才?・・・」
「そう・・・8才と9ヶ月かな・・・」
「じゃあ・・・まだ,まだ,大丈夫」
私は300円也のお茶を飲みながら,雑談を続ける。
「ところで,今日,2番バスに,何人乗っていましたか?」
と定番の質問がくる。
「5人でしたよ・・・でも,途中で数人,追い抜きましたので,ボツボツ来ますよ」
「1番バスも少なかったようだし・・・」
とOさんは首を傾げる。
話題が変わる。Oさんが,
「・・お宅のテレビ,『テレビ神奈川』写るでしょう。3月21日,8時から8時55分まで,『再生,地球』っていう番組に,私,出るんです。是非,見て下さいよ・・・」
と私に言う。
「へぇ・・凄いですね」
「鍋割山荘の草野さんも出ますよ・・・私はほんの一寸! 写真を撮っているところが,チラッと出るだけですよ。大半は例の登山家野口さんの出番ですよ・・・」
山荘の階段脇に,このテレビ番組のチラシが貼り付けてある。
10時28分,そろそろ下山しようと思う。結局,その間の山荘の客は私1人だけだった。
■長靴談義
山荘を出る。相変わらす辺り一面に雲が立ち込めている。さすがに外は寒い。
残雪で滑落しないように注意しながら,ノーアイゼンで下り続ける。金冷し付近で,同じバスに乗り合わせていた方々と,次々にすれ違う。
10時51分に花立山荘に到着する。ベンチで2人の登山客が雑談をしている。その内の1人は,先ほど山頂付近で合った方である。私を見付けると,相手の人に,
「この方ですよ・・・2時間20分で登った方は・・」
と説明する。どうやら私のことが話題になっていたらしい。成り行きで,暫くの間,3人で雑談をする。その内に,1人は山頂を目指して歩き出す。その後,この男性から長靴の履き具合について,色々と質問を受ける。
バスの都合もあるので,11時06分,私は男性に挨拶をしてから,先に花立山荘を出発する。登りの登山客数名とすれ違いながら下り続けて,11時36分に百草平に到着する。ベンチで休んでいた男性が,長靴姿の私に話しかけてくる。話題は長靴のこと。長靴で足の爪先を痛めないかが話題の中心である。
私は正しい山の歩き方をすれば,長靴でも爪先を痛めることはないと説明する。これが切っ掛けになって,山には素人だが私から,山の歩き方を一くさり語る羽目になる。
「私が通っていた『山旅スクール』ってところが良いですよ・・基礎から丁寧に教えてくれるので・・・」
と,思いがけず,山旅スクールの宣伝をすることになる。私はノートを千切った紙に,山旅スクールの連絡先を書いて,この男性に渡す。
■バスに何とか間に合う
2回も道草を食ったので,12時52分のバスに間に合うかどうか怪しくなる。そこで,私は歩く速度を随分と速めて,歩き続ける。
12時02分に駒止茶屋,12時20分に見晴茶屋を通過する。そして,12時48分に大倉に到着する。
大急ぎで,長靴に付いた泥を,トイレ脇の水道で洗い流して,12時52分発渋沢行のバスに乗車する。バスの乗客は,たった2人。
小田原駅で,14時00分発特別快速高崎行に乗車。14時28分に,無事,大船駅に到着する。久々の塔ノ岳詣で,心身ともにスッキリした。
山はやっぱり良いな。
[ラップタイム]
7:41 大倉歩き出し
7:46 登山口
7:50 克董窯
7:55 丹沢ベース
8:02 観音茶屋
8:05 分岐
8:14 雑事場ノ平
8:16 見晴茶屋
8:30 一本松
8:44 駒止茶屋
8:51 堀山
8:58 堀山ノ家
9:14 戸沢分岐
9:16 萱場平
9:36 花立山荘
9:49 金冷シ
10:01 塔ノ岳山頂 着
==============================
10:28 塔ノ岳山頂 発(+3.6℃)
10:40 金冷シ
10:51 花立山荘(11:06まで雑談)
11:20 萱場平
11:21 戸沢分岐
11:36 堀山ノ家(11:50まで雑談)
11:55 堀山
12:02 駒止茶屋
12:11 一本松
12:20 見晴茶屋
12:22 雑事場ノ平
12:29 分岐
12:33 観音茶屋
12:37 丹沢ベース
12:40 克董窯
12:43 登山口
12:48 大倉 着
[山行記録]
■登攀・下降高度 1201m
■水平移動距離 6.5km
■登攀所要時間
大倉発 7:41
塔ノ岳山頂着 10:01
(所要時間) 2時間20分(2.33h)
登攀速度 1,201m/2.33h=515.5m/h
■下降所要時間(雑談時間を含む)
塔ノ岳山頂発 10:28
大倉発 12:48
(所要時間) 2時間20分(2.33h)
下降速度 1,201m/2.33h=515.5m/h
(おわり)
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毎度,当ブログにお運び頂き有り難うございます。
膝の銚子がどうも・・・ということ,大変ですね。
スクールの仲間にも,足の故障で苦労していた人が何人かいますが,今は全員完全に復帰しています。
必ず復帰できると思いますので,どうぞ焦らないようにお願いします。
また塔ノ岳にご一緒できるのを楽しみにしています。