<イェンデ湖の船>
ノルウェー紀行;第4日目(トレッキング第2日目)(3);イェンデブー
(アルパインツアー)
2013年8月19日(月)~8月30日(金)
第4日目;2013年8月21日(火) トレッキング第2日目(続き) 晴
<ルート地図>
<プロフィールマップ>
<イェンデ湖の断崖を下る>
■皆さん安全対策は万全ですか?
14時25分,私たちはイェンデ湖を見下ろす場所で休憩を終えて歩き出す.
ほどなく,稜線歩きの最終地点に到着する.ここから,標高差400メートルほどの断崖を,イェンデ湖畔まで一気に下る予定である.
一同,稜線歩きの最終地点で立ち止まる.ツアーリーダーから,これから急な下り坂になるので覚悟するように注意を受ける.
「…一寸注意したら防げた事故が大半です.事故の原因になりそうなものは,事前に極力排除しましょう…」
私は,
“なるほど,ツアーリーダーの言う通りだ…”
と感心する.
とにかく,岩角などに引っかかりそうなものは全部なくす.例えばポーチなどは厳禁.リュックに仕舞い込む.引っかかりそうな紐などもすべてなくす.ストックも仕舞い込むが,リュックにストックを取り付ける際に,ストックの先が岩に引っかからないように十分に注意する…等々.
ツアーリーダーが全員の服装,装備を目視でチェックする.不備がある人には,すぐに注意をしている.
いよいよ下山開始である.
<イェンデ湖を見下ろしながら下山体制を整える>
■トラバース道に入る
稜線に別れを告げて,下り坂に入る.
下り始めは,断崖沿いの緩やかなトラバース道である.
<断崖沿いのトラバース道が始まる>
■イェンデ湖を眼下に
暫くの間,左手にイェンデ湖を見下ろしながら,断崖の上のトラバース道を下る.前方には,今夜の宿泊地,イェンデブーが見えている.
ここから見ていると,イェンデ湖までそれほどの距離はなさそうに見えるが,実は,これからが大変である.
トラバース道を歩いていると,イェンデ湖の後方から小さな船がイェンデブー港へ向けて走っているのが見える.船の舳先で静かな湖面に綺麗な波紋を作っている.波紋が太陽の光を反射して幻想的な情景を醸し出している(冒頭の写真).
<イェンデ湖の断崖をトラバース>
■いよいよ断崖下りだ
15時10分頃から,緊張の断崖下りが始まる.
まずは,長いクサリ場だ.
“トレッキングだというのに…こんなにクサリ場があるとは…”
想定外の成り行きに,内心でブツブツ….でも,そんなこと言っていられない.順番に慎重にクサリ場を通過する.
驚いたことに,20人を超える参加者が居るのに,クサリ場でたじろぐ人が一人も居ない.私は,今回の参加者は意外なほどモサ揃いだなと感心する.
<いよいよクサリ場>
■またまたクサリ場
クサリ場が連続する.今度は進行方向右手が崖にになっているクサリ場である.左手遙か下方にはイェンデ湖が見えている.
結構な高度感あり.
<クサリ場を下る;ツアーリーダーから頂いた写真をトリミング>
■さらにクサリ場
さらにクサリ場が連続する.ちょっと,勾配が急である.ここは後ろ向きになって,一歩一歩慎重に下る.
ツアーリーダーKYさんが,先頭に立ってクサリ場を降りる.私と同室のKSさんは,クサリを頼らずに下っている.手慣れている.凄い!
<イヤになるほどクサリ場が連続する>
<イェンデ湖畔を船着場へ>
■やっとイェンデ湖畔に降りる
4ヶ所のクサリ場を無事に通過する.
でも,その後も,暫くの間,急な下り坂が続く.岩礫や浮き石がゴロゴロしていて滑りやすい下り坂である.こんなガレ場の方が,かえってクサリ場より危ないとも言える.
“湖面が見えているのに,なかなかそこまで降りられないな”
と焦れったい思いをしながら,ガレ坂を下り続ける.
14時20分,やっとの思いで,イェンデ湖の湖畔に到着する.
“やれやれ…やっと湖畔か”
とホッとする.
湖畔で10分ほど休憩を取る.
湖の先には滝と残雪の山脈が連なっている.
ツアーリーダーが,
「これから,イェンデブーまで,まだ1時間ほどかかります.湖沿いの道ですが,完全な山道です.充分注意して歩いて下さい.」
と注意を促す.
湖畔まで下って,少々気が抜けた私たちの気持ちを引き締めようとしている.
残念ながら,ここでの写真は撮り忘れた.手許に残っているのは15秒ほどで書き殴ったメモだけ.こんな乱暴なメモでも,多少なりとも雰囲気だけは分かるだろうと思うので掲載しておこう.
10分ほど休憩した後,14時30分に歩行開始.
ツアーリーダーが指摘したとおり,湖畔沿いの道は滑りやすい濡れた石と礫,それに泥濘の道である…というより,日本の山の感覚で言うと,ここは道ではない.自然のままの踏み跡さえ定かでないただの湖畔である.
“歩きにくいったら,ありゃしない…ブツブツ!”
と言葉には出さずに,ブツブツ言いながら,ひたすら前を歩く人の後を追う.
<湖の向こうに滝と残雪の尾根が見える;残念ながら写真はない>
■イェンデブーの船着場に到着
石がゴロゴロ転がる道(道とは言えないけど…)を歩くのは焦れったくて本当にイライラするが,我慢して歩いている内に,16時08分,漸く,イェンデブーの船着場(波止場)に到着する.
船着場付近の広場は綺麗に整備されているので,ゴロゴロ道からいきなり街中に飛び出したような安堵感と違和感を感じる.
船着場には船はおろか人の気配もない.小さな桟橋は空ッポ.私たちの荷物もない.
「あれ~っ!…荷物,ないですね…多分,どなたかが小屋まで運んでくれたんでしょう…」
とツアーリーダーが言う.
<イェンデブーの桟橋>
■桟橋近くで一休み
崖下りとゴロゴロ道歩行で疲労したのか,桟橋近くのベンチにヘタヘタと座り込む.ここで,数分,成り行き休憩になる.
…で,私?
正直なところ,崖下りで緊張はしたが,体力的にはまだまだ十分に余裕がある.ほとんど疲労感はない.今日のコースの疲労度は,まあ,大倉尾根経由で塔ノ岳を往復したのと同じ程度かと思う.
<船着場広場で一休み>
<あと少しで今日の終点だ>
■可愛いヤギにイヤされる
5分ほど成り行き休憩を取って,17時19分に,また歩き出す.
船着場から先の道は,草道ながら良く整備されているので,とても歩き易い.私たちは,ルンルン気分でイェンデブー小屋までの道を急ぐ.
途中,ヤギ飼育場の脇を通る.若いヤギが頻りに,
“メエ~…,メェ~…,”
と大声で啼いている.明らかに私たちを意識して啼いている.
可愛い.
ヤギの声に随分と癒される.
<子ヤギに癒される>
■もうすぐイェンデブー小屋だ
湖畔の砂利道を歩く.もう,目の前にイェンデブーの建物群が見えている.
“もうすぐ山小屋だ! 今日の歩きもこれで終わりだ!”
と思うと,歩きも勢いづく.先頭グループの足取りがだんだんと速くなり,置いて行かれそうである.
前方にはオーバーハングした崖の山が屹立しているのが見える.氷河で削られた段丘だろうと想像する.
<もうすぐイェンデブーだ>
■昔のイェンデブー小屋
16時21分,昔のイェンデブー小屋に到着する.
現地ガイドのオラさんが,
「ここが昔のイェンデブーです.家畜と一緒に,この小屋の中に入ったんです…」
と説明する.
小屋の中を覗いてみる.中は薄暗い.
ちなみに“ブー”は小屋という意味である.したがってイェンデブー小屋という言い方は,小屋が二重になるので正確な表現とは言えないかも.でも,まあ,イェンデブー小屋と言った方が収まりが良いので,このブログでは,厳密な詮索は止めてイェンデブー小屋としておこう.
<昔のイェンデブー小屋>
■やっとイェンデブー小屋に到着
17時38分,私たちは漸くイェンデブー小屋に到着する.
ツアーリーダーがチェックイン手続が終わるまで,その辺りで各自クールダウン体操をしながら待つ.
今日もKSさんと同室である.部屋は別棟の211室.
<イェンデブーに到着>
<イェンデブー小屋>
■木の香り豊かな4人部屋
船便で送った荷物は,無事,イェンデブー小屋まで運ばれていた.
各自自分の荷物を持って,指定された部屋へ向かう.部屋に向かう途中で,部屋の鍵を受け取っていないことに気がつく.ツアーリーダー経由で管理人に確かめると,
「過去に,ここでは,盗難事故など全く発生していないので鍵はない」
という返事だった.
広い.2段ベッドが2基備え付けられている.4人部屋である.4人部屋を2人で使うという贅沢さである.有り難い.
<木の香り豊かな4人部屋>
■窓外には残雪の山
部屋の窓から外を眺める.目の前にイェンデ湖,その向こうに残雪の山が聳えている.気温は8℃.少し寒い.
“ふむ,ふむ,…,良い部屋だ!”
<窓外はイェンデ湖と残雪の山>
■まずはシャワーと洗濯だ
部屋に入って一段落してから,シャワー室を訪れる.もちろん男女別々.シャワー使用料は1回,10クローネ.ただし,チェックアウトのときに自己申告で支払う方式である.
シャワー室は,一度に3人がシャワーを浴びられる方式になっている.ただ,お互いの間には間仕切りがないに等しいから,お互いのスッポンポンが丸見えである.
3基のシャワーが横に並んでいる.その手前で脱衣して,長い椅子を乗り越えて,シャワーの蛇口に向かう仕組みになっている.
シャワーからはタップリと熱いお湯が出るから,快適である.
シャワーから出たついでに,2日間,着たままだった下着を洗濯する.
乾燥室はとても広くて,干し場に苦労することもない.山小屋にしては,随分と至れり尽くせりだなと感心する.
■トイレ
トイレを使ってみる.
トイレはシャワー室の先にある.トイレに入ると,まず男女別の仕切られた部屋がある.男性の方の部屋に入ると,洗面台2台とトイレが3ヶ所ある.残念ながら女子用のトイレの構造は分からない.
どうやら,ここは水洗ではなく,ボットン方式である.しかし壺は真っ暗になっていて何も見えない.また臭気も全く感じない.勿論,落とし紙はそのまま棄てられる.まあ,清潔である.ただ,腰掛け方式なので,少々使い方に戸惑う.
<夕食と団欒>
■美味しいスープ
18時30分から夕食.
私たちは奥まった場所に纏まって座る.側道には大勢の宿泊,賑やかである.私たちの関野近くに中学生ぐらいかと思われる子供達が陣取っている.先生が何やら盛んに話している.子供達は神妙な顔をして先生の話を聞いている.第一印象では,躾が良くできている子供達だなと思う.
最初にスープ.これが結構美味しいので,おかわりをする.
<トマト味の美味しいスープ>
■メインディッシュ
続いてメインディッシュ.
味付けは日本人好み.ジャガイモが特に美味しい.もし,これにご飯があれば,完全に日本食と同じだなと思いながら美味しく頂く.
食事が美味しければ旅の印象はますます良くなる.気に入った.
<メインディッシュ>
■デザートとコーヒー
最後はデザートとコーヒーである.
デザートは,私にとっては少々甘すぎるが,イチゴなんか乗っかっていて,なかなかなものである.
<デザートとコーヒー>
<今日一日も無事に終わった>
■夕暮れのイェンデ湖
20時15分頃,夕食はお開きになる.
私たちはツアーリーダーから,敷布,枕カバー,掛け布団カバーを貰って,一旦,部屋へ戻る.
ここは高緯度の国である.今は,まだ8月下旬である.20時を過ぎたとはいえ,外はまだ十分に明るい.このまま寝てしまうのは何とも惜しいので,暫くの間,小屋の周辺を散策する.
湖の畔まで近付いて見る.湖の中には,小さな島が沢山ある.まるで小さな船が浮かんでいるように見える.
対岸の山には,まだ夕日が当たっている.それが反射して湖面を茜色に染めている.
“綺麗な風景だな.見事な風景だ”
私は独り言のようにつぶやきながら,美しい風景を堪能する.
<夕暮れのイェンデ湖>
■今日一日も無事で良かった
20時40分頃,自室へ戻る.
同室の男性は,どこかへ出掛けていて,部屋には居ない.多分,アルコールがお好きな方と,どこかで祝杯を挙げているのだろう.下戸の私には良く分からないが,アルコールの魅力は,好きな人にはたまらないんだろうなと想像する.
私は支給されたシーツや枕カバーを使って,実にアラっぽくベッドメーキングをする.そして,21時少し前に就寝.
今日も良かった! 良かった!
<第4日目の記録>
■ラップタイム
8:58 メムルブーから歩き出し
9:14 衣服調整(9;17まで)
10:10 休憩(10:10まで)
10:58 休憩(11:10まで)
12:05 昼食(13:40まで)
13:30 休憩(13:34まで)
14:32 峠で休憩(14:35まで)
16:20 イェンデ湖湖畔で休憩(16:29まで)
17:05 船着場(17:19まで休憩)
17:38 イェンデブー着
■水平歩行距離 10.0km
■累積登攀高度(概算) 550m
■累積下降高度(概算) 550m
■所要時間
メムルブー 発 8時08分
イェンデブー着 17時38分
(所要時間) 8時間40分(8.67h)
水平歩行速度 10.0km/8.67h=1.15km/h
(第4日目おわり)
(第5日目に続く)
前の記事
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