<山頂からの富士山>
酷暑の中,イヌ,ネコ,シカに出会った丹沢:塔ノ岳(今年25回目)
(単独山行)
2010年9月1日(水)
■時差ボケ,何とかしなければ・・
ロッキー山脈の旅を終えてから,2~3日過ぎた.帰国した翌日,昼食後,ほんの15分ほど昼寝をするつもりで横になった.ところが意に反して随分と長い時間眠ってしまった,目が覚めたら6時.辺りは少し薄暗くなっている.
「今,一体,朝? それとも夜?・・今,何日なのだろう?」
随分とよく寝たようだ.朝なのか夜なのかすぐには分からなかった.何時までも時差を引きずれない.時差解消のため塔ノ岳を往復する.
渋沢発大倉行の1番バスに乗車.乗客は,.韋駄天のTさん,カメラマンのMさんなど数名.
Tさんから,早速,
「・・ロッキーの旅はどうでしたか・・」
と質問を受ける.
7時少し前,大倉に到着.ご常連は,すぐに歩き出す.私は,少し遅れて7時03分に歩き出す.私は熱中症を警戒して,極,極,ゆっくりのペースで歩き始める.
■ヤマカガシ氏と白イヌ
今日の私が一番気を遣ったのは熱中症にならないように歩くことである.
特に,ここ2週間の間に,極暑の日本から冷涼なロッキーへ,そしてまた極暑の日本へ帰国したばかりである.私は慎重な上にも慎重に,自分の体調を見つめながら,決して急がないように注意する.ただ,2週間前の8月15日に塔ノ岳に登ったときに比較すると,若干湿度が低いように思える.
7時08分,登山口に到着する.大倉からここまで,何時もなら使用時間が4分の所を,5分も掛けて登っているので,我ながら今日は慎重だなと合点する.
登山口を過ぎるとこんもりとした杉木立のトンネルになる.私より2~3分早く出発したカメラマンのMさんの後ろ姿が見えている.そのすぐ後ろに小さな白いイヌを連れた登山者が続いている.暫くの間は,追い越そうかなと思いながらも,このお二人と1匹の少し後に付いて登り続ける.
7時18分,丹沢ベースを通過する.犬を連れた男性が,ふと後ろを振り返る.お互いに目があった瞬間,彼も私も「なあ~んだ・・!」という安堵の表情が顔に表れる.
犬を連れた男性は,丹沢で顔見知りのヤマカガシ氏である.
「やあ,こんにちは,今日はイヌがお伴ですか・・・山頂まで行かれる予定ですか」
お連れのイヌが,あまりに小さくて可愛いので,山頂まで大丈夫かなと心配になる.
「まあ,一応,山頂まで登るつもりです.尤も,つい2週間前,余りに暑いので,私の方が戸沢分岐の上の小草平(注:本当は萱場平という)でダウンして,下山しましたよ.こいつは途中で下山したので怪訝な顔をしていましたよ・・・イヌは,案外,強いですよ.何しろ四駆ですから・・」
「なるほど!!」
ヤマカガシ氏と雑談をしながら登っている内に,観音茶屋でラップタイムを計測するのを忘れる.
7時40分雑事場ノ平を通過.ヤマカガシ氏はイヌに給水.ここでお別れ.
その内に,カメラマンのMさんに追いつく.
「この頃,3時間から3時間半ぐらい.どうぞお先に・・」
と促される.
■ノンビリと登り続ける
やがて駒止茶屋手前の急坂に差し掛かる.腕時計に付いている温度計を見ると,24.2℃と高温である.私は息が乱れないように,極,極,慎重に,ゆっくり,ゆっくりと登り続ける.そして,8時15分に駒止茶屋を通過する.
大倉を歩き出してから,駒止茶屋まで1時間12分も掛かっている.涼しいときならば,ほぼ1時間で歩けるところだが,
「夏はこれでいいんだ・・!」
と自分で自分を納得させる.
晴れていれば富士山がとても良く見える所だが,今日は綿のように白い雲が富士山に巻き付いている.そうこうしている内に,ヤマカガシ氏が私に追いつく.そのとき,前方から「ド,ド,ド,ド」という足音が近付いてくる.ご常連のY沢さん.
■堀山の家
再び,ヤマカガシ氏と一緒に,2人プラス1匹で,後先になりながら歩き続ける.そして,8時31分,堀山の家に到着する.ヤマカガシ氏は,ここでイヌに給水するというので,再び,私だけ単独で先へ進む.
堀山の家の気温は24.3℃.いくらか涼しいようだが,背中から腰の辺りの汗が流れてズボンをべったりと湿らせている.まるで小便を漏らしてしまったようにベタついて気持ちが悪い.
■萱場平
8時53分,萱場平を通過する.辺りには誰も居ない.ジリジリと残暑の太陽が照りつけている.周辺には白い雲が湧き上がっている.
私の前後には全く人影がない.小鳥の囀りや虫の声もなく,ギラギラと静まりかえっている.
引き続き花立山荘を目指して,マイペースで登り続ける.身体も山登りになれてくる.実に気分良く登れる.萱場平の気温は24.7℃.照り返しが強い.
■花立山荘
9時08分,「あと7分坂」着.背後から太陽がガンガン.首筋と背中がジリジリ.これは堪らない.リュックから手拭いを取り出して頬被り.心の中で,
「イヤだな・・でも,ほんの7分ほどの辛抱・・」
リズムをとって登る.私のすぐ前を,それこそ止まりそうな足取りで男性が登っている.追い越すのも忍びない.歩く速度を落とす.そして,この男性とほぼ同時に花立山荘に到着.9時17分.大倉を歩き出してから2時間09分.陽気が良ければ2時間を少し切るぐらいの時間の筈,今日は10分ほど遅い.
私の前の男性は,山荘のベンチにへたり込む.花立山荘の気温は25.6℃.高い.
■フラワーヒルさんですか?
今日の体調は,案外良いようだ.ユックリ歩き続けたので体力は十分に残っている.このまま歩き続ければ,2時間30分台後半で塔ノ岳山頂にゴールインできそう.
ガレ場に入る.この辺りからの富士山の眺望は素晴らしいが,今日は残念.それでも私は未練タラタラ,雲ばかりの写真を何枚か撮る.
花立場近くでモタモタしていると,上から降りてきた見知らぬ男性に,いきなり,
「フラワーヒルさんですか・・?」
と話しかけられる.
「エッ,はい.・・フラワーヒルですが・・・どうしてお分かりになったんですか・・」
「実は,バスの中でお見かけしたときに,リュックに○○(注:私の名字)と書いてあったんで,多分,フラワーヒルさんだろうと思ったんです」
「そうでしたか・・・それにしても随分とお速いですね」
「今日は2時間10分ぐらいでしたか・・」
「私,フラワーヒルさんのブログを良く見ているんです.私,実はブログに出てくるローギヤーの弟なんです・・・ブログの記事を読んでいると,ローギヤーがどうも私の兄に違いないと思うんです・・」
「ローギヤー氏は,背が高くて登り坂が滅法強い方です・・」
「そんなんです.彼,何時も2番バスで来るんですよ.なかなか強いんです.ただ,彼は登山中水を飲まないんで,心配しているんですよ・・ブログで兄がカラバタールのことを話していますね.それでローギヤーが兄だと確信したんですよ」
「私,ブログでは他人様の悪口は書かないようにしているんですが,大丈夫かな・・何時も塔ノ岳に来られているんですか」
「週に1~2回来ていますよ・・・ただ冬は来ません・・」
こんな楽しい立ち話を4~5分続ける.そして,9時30分花立山を通過する.
■ご常連と立ち話
金冷シの少し手前で,下山してくる韋駄天のTさんとすれ違う.こんなに暑い日なのに,もう下山してくるとは.韋駄天のTさんやローギヤー氏の弟さんは正に超人である.
9時35分,金冷シを通過する.気温は23.7℃.幾分涼しくなる.
今のところ,疲労感は全くない.体調は申し分なさそうである.結構,調子よく登り続ける.そして,山頂直下の急坂で,下ってくる本郷台のご常連,韋駄天のSさんとバッタリ.
「やあ,お帰りなさい.ロッキー山脈はどんなでしたか・・?」
「お陰様で,予定通り標高4000メートル級の山4座を登頂してきましたよ・・」
「へえ・・大したもんですね・・大変だったでしょう」
「いえ,その内1座は山頂まで乗り物,残りも,実際に登る標高差は,大倉尾根より少し長い程度でしたよ.ただ,4000メートルを越える高いところなので,空気が薄くて苦労しますが・・・」
ここでも5~6分立ち話をする.
そうこうしている内に,これまで後ろを振り返っても姿が見えなかったヤマカガシ氏とイヌが私に追いつく.
■塔ノ岳山頂
9時55分,私,ヤマカガシ氏,イヌの2人と1匹が塔ノ岳山頂に到着する.山頂の気温は22.8℃.塔ノ岳山頂にしてはかなり高温だが,涼しくて気持ちがよい.
山麓のあちこちから白い雲が湧き上がっている.雲間に富士山が少しだけ顔を出している.これ幸いとばかりに写真を撮る.
ヤマカガシ氏は犬を連れているので,尊仏山荘には入れないというので,私一人だけ尊仏山荘に向かう.
■尊仏山荘
尊仏山荘に入る.今日の小屋番はオーナーのHさん.先客はご常連1人.
早速,Hさんから,
「ロッキー山脈はどうでしたか・・?」
と質問を受ける.
「登山道自体は,大倉尾根よりずっと歩きやすいし,標高差も似たり寄ったりですが,ただ4000メートルを越える高所だったんで,それなりに大変でしたよ・・」
「何人ぐらい集まったんですか・・」
「10数人でした.」
「へえ~・・・良くそんなに集まりましたね・・」
それから,暫くの間,四方山話.私がアルパインツアー社主催のロッキー登山で最高年齢記録を塗り替えたと話すと,
「そうでしょうね」
と妙な相づちを打つ.私ごときが最高年齢になるとは・・嬉しくもあるが,逆にもうそうなるのかという悲哀も感じる.まあ,野球に例えるならば,私の寿命は9回裏,2アウト,2ストライク程度の土壇場にいることは十分に自覚しているが・・
「・・実は,Hさんを良く知っている方と一緒でしたよ・・・何でもN大のワンゲル部に居たという方です・・」
私はロッキー山脈にご一緒した元N大ワンゲル部,Sさんの名前を同忘れしているので,HさんにSさんのことを正確に伝えられない.すると,Hさんは,
「へえ~・・・誰だろう?」
暫く考えた末に,
「あっ・・・一寸小太りで,足の遅い人でしょう・・Sさんでしょう」
「そうそう,Sさんでした」
「彼,時々,(大倉尾根を)登ってきますよ.この間も,やけに遅い人が居たので,ひょっと顔を見るとSさんでしたよ・・」
「そうでしたか,私も,ひょっとしたらSさんとロッキーの仲間と連れたって,近々登ってくるかもしれませんよ」
次いで,私の山仲間の話になる.
「そういえば,トドさん,ご無沙汰ですね.元気ですか.そろそろ登ってきても良いんじゃないですか.ノシイカさんは,たまに顔を出していますよ・・」
「今日はバスが空き空きでしたよ」
「そうでしょう・・月曜日からバッタリです」
「トドさんには,そろそろ登ってくるように,今日にでもメール出しておきますよ」
ふと,外を見ると,別棟(私がネコ御殿と呼んでいるところ)の窓際で,ミー君が気持ち良さそうに日向ぼっこをしている.
「あいつ,一日中,寝ているんですよ」とHさんが苦笑する.
■ローギヤー氏にバッタリ
大倉発12時52分のバスに間に合うように下山しようと思う.
30分ほど,尊仏山荘で油を売っている間に,山頂で休憩を取っている人も大分増えている.10時24分に尊仏山荘を出発する.ヤマカガシ氏は,まだ,イヌに水を飲ませているので,失礼して先に下山することにする.
ふと傍らを見ると,珍しくローギヤー氏がベンチに座って休憩を取っている.何時もなら,山頂の尊仏像に合掌して,すぐに下山されているのに,休憩を取るなんて珍しい.私は,
「ローギヤーさん,こんにちは.先ほど弟さんに会いましたよ・・」
と挨拶する.
「エッ・・弟にですか?・・・良く分かりましたね.どうして分かったの?」
私は返答に窮する.というのも,ブログで「ローギヤー氏」などというあだ名を付けていることを,当のローギヤー氏は知らないからである.私はウニャウニャゴジョゴジョと訳の分からない説明をして,
「では,一足先に失礼します・・」
でお別れする.
丁度そのとき,同じバスに乗り合わせたカメラマンのMさんが,山頂にご到着.
「やれ,やれ,やっとご到着ですよ・・」
と言いながら,入れ違いに尊仏山荘に入っていく.
■シカが通せんぼ
山頂直下の急坂を下山し始める.前方に大きなシカが道を塞いでいる.盛んに草を食(は)んでいる.実に見事な雄ジカである.私が近付いても一向に平気である.でも,シカに移動して貰わないと先へ進めないので,ユルリユルリとシカに近付く.シカは面倒臭そうに,ほんの50センチほど移動して,道を空ける.
「ありがとよ・・」
私はシカに挨拶して,下山を開始する.
■かなり高速で下山する
今日はユックリと登ったので,スタミナが余っている.そこで,少々下山速度を上げてみる.快調.
花立山荘前の階段でチャンピョンとすれ違う.
安全には十分気をつけながらスタスタと下山し続ける.その内に,一寸急げば,12時22分のバスにも間に合いそうになる.調子を上げて,12時18分大倉到着.気温33.7℃.蒸し暑い.予定より30分早い12時22分発のバスにユックリ間に合う.山頂から大倉までの所要時間は1時間54分.
バスの乗客は終始私1人.
久々の塔ノ岳.スッキリした.
<ラップタイム>
7:03 大倉歩きだし
(記録失念) 観音茶屋
7:42 見晴茶屋
8:15 駒止茶屋
8:31 堀山の家
9:17 花立山荘(ロスタイム約5分)
9:35 金冷シ(ロスタイム約10分)
9:55 塔ノ岳山頂着(気温+22.8℃)
================================================
10:24 塔ノ岳山頂発
10:34 金冷シ
10:46 花立山荘
11:14 堀山の家
11:28 駒止茶屋
11:50 見晴山荘
12:02 観音茶屋
12:18 大倉
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(休憩時間・雑談時間込み)
大倉 発 7:03
塔ノ岳 着 9:55
(所要時間) 2時間52 分(2.87h)
登攀速度 1269m/2.87h=442.2m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 10:24
大倉 着 12:18
(所要時間) 1時間54分(1.90h)
下降速度 1269m/1.90h=667.9m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/290d27a28c7e49d60264b031978d91c6
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/c2dc14f158d17c1755871edd7f3fc5b8
酷暑の中,イヌ,ネコ,シカに出会った丹沢:塔ノ岳(今年25回目)
(単独山行)
2010年9月1日(水)
■時差ボケ,何とかしなければ・・
ロッキー山脈の旅を終えてから,2~3日過ぎた.帰国した翌日,昼食後,ほんの15分ほど昼寝をするつもりで横になった.ところが意に反して随分と長い時間眠ってしまった,目が覚めたら6時.辺りは少し薄暗くなっている.
「今,一体,朝? それとも夜?・・今,何日なのだろう?」
随分とよく寝たようだ.朝なのか夜なのかすぐには分からなかった.何時までも時差を引きずれない.時差解消のため塔ノ岳を往復する.
渋沢発大倉行の1番バスに乗車.乗客は,.韋駄天のTさん,カメラマンのMさんなど数名.
Tさんから,早速,
「・・ロッキーの旅はどうでしたか・・」
と質問を受ける.
7時少し前,大倉に到着.ご常連は,すぐに歩き出す.私は,少し遅れて7時03分に歩き出す.私は熱中症を警戒して,極,極,ゆっくりのペースで歩き始める.
■ヤマカガシ氏と白イヌ
今日の私が一番気を遣ったのは熱中症にならないように歩くことである.
特に,ここ2週間の間に,極暑の日本から冷涼なロッキーへ,そしてまた極暑の日本へ帰国したばかりである.私は慎重な上にも慎重に,自分の体調を見つめながら,決して急がないように注意する.ただ,2週間前の8月15日に塔ノ岳に登ったときに比較すると,若干湿度が低いように思える.
7時08分,登山口に到着する.大倉からここまで,何時もなら使用時間が4分の所を,5分も掛けて登っているので,我ながら今日は慎重だなと合点する.
登山口を過ぎるとこんもりとした杉木立のトンネルになる.私より2~3分早く出発したカメラマンのMさんの後ろ姿が見えている.そのすぐ後ろに小さな白いイヌを連れた登山者が続いている.暫くの間は,追い越そうかなと思いながらも,このお二人と1匹の少し後に付いて登り続ける.
7時18分,丹沢ベースを通過する.犬を連れた男性が,ふと後ろを振り返る.お互いに目があった瞬間,彼も私も「なあ~んだ・・!」という安堵の表情が顔に表れる.
犬を連れた男性は,丹沢で顔見知りのヤマカガシ氏である.
「やあ,こんにちは,今日はイヌがお伴ですか・・・山頂まで行かれる予定ですか」
お連れのイヌが,あまりに小さくて可愛いので,山頂まで大丈夫かなと心配になる.
「まあ,一応,山頂まで登るつもりです.尤も,つい2週間前,余りに暑いので,私の方が戸沢分岐の上の小草平(注:本当は萱場平という)でダウンして,下山しましたよ.こいつは途中で下山したので怪訝な顔をしていましたよ・・・イヌは,案外,強いですよ.何しろ四駆ですから・・」
「なるほど!!」
ヤマカガシ氏と雑談をしながら登っている内に,観音茶屋でラップタイムを計測するのを忘れる.
7時40分雑事場ノ平を通過.ヤマカガシ氏はイヌに給水.ここでお別れ.
その内に,カメラマンのMさんに追いつく.
「この頃,3時間から3時間半ぐらい.どうぞお先に・・」
と促される.
■ノンビリと登り続ける
やがて駒止茶屋手前の急坂に差し掛かる.腕時計に付いている温度計を見ると,24.2℃と高温である.私は息が乱れないように,極,極,慎重に,ゆっくり,ゆっくりと登り続ける.そして,8時15分に駒止茶屋を通過する.
大倉を歩き出してから,駒止茶屋まで1時間12分も掛かっている.涼しいときならば,ほぼ1時間で歩けるところだが,
「夏はこれでいいんだ・・!」
と自分で自分を納得させる.
晴れていれば富士山がとても良く見える所だが,今日は綿のように白い雲が富士山に巻き付いている.そうこうしている内に,ヤマカガシ氏が私に追いつく.そのとき,前方から「ド,ド,ド,ド」という足音が近付いてくる.ご常連のY沢さん.
■堀山の家
再び,ヤマカガシ氏と一緒に,2人プラス1匹で,後先になりながら歩き続ける.そして,8時31分,堀山の家に到着する.ヤマカガシ氏は,ここでイヌに給水するというので,再び,私だけ単独で先へ進む.
堀山の家の気温は24.3℃.いくらか涼しいようだが,背中から腰の辺りの汗が流れてズボンをべったりと湿らせている.まるで小便を漏らしてしまったようにベタついて気持ちが悪い.
■萱場平
8時53分,萱場平を通過する.辺りには誰も居ない.ジリジリと残暑の太陽が照りつけている.周辺には白い雲が湧き上がっている.
私の前後には全く人影がない.小鳥の囀りや虫の声もなく,ギラギラと静まりかえっている.
引き続き花立山荘を目指して,マイペースで登り続ける.身体も山登りになれてくる.実に気分良く登れる.萱場平の気温は24.7℃.照り返しが強い.
■花立山荘
9時08分,「あと7分坂」着.背後から太陽がガンガン.首筋と背中がジリジリ.これは堪らない.リュックから手拭いを取り出して頬被り.心の中で,
「イヤだな・・でも,ほんの7分ほどの辛抱・・」
リズムをとって登る.私のすぐ前を,それこそ止まりそうな足取りで男性が登っている.追い越すのも忍びない.歩く速度を落とす.そして,この男性とほぼ同時に花立山荘に到着.9時17分.大倉を歩き出してから2時間09分.陽気が良ければ2時間を少し切るぐらいの時間の筈,今日は10分ほど遅い.
私の前の男性は,山荘のベンチにへたり込む.花立山荘の気温は25.6℃.高い.
■フラワーヒルさんですか?
今日の体調は,案外良いようだ.ユックリ歩き続けたので体力は十分に残っている.このまま歩き続ければ,2時間30分台後半で塔ノ岳山頂にゴールインできそう.
ガレ場に入る.この辺りからの富士山の眺望は素晴らしいが,今日は残念.それでも私は未練タラタラ,雲ばかりの写真を何枚か撮る.
花立場近くでモタモタしていると,上から降りてきた見知らぬ男性に,いきなり,
「フラワーヒルさんですか・・?」
と話しかけられる.
「エッ,はい.・・フラワーヒルですが・・・どうしてお分かりになったんですか・・」
「実は,バスの中でお見かけしたときに,リュックに○○(注:私の名字)と書いてあったんで,多分,フラワーヒルさんだろうと思ったんです」
「そうでしたか・・・それにしても随分とお速いですね」
「今日は2時間10分ぐらいでしたか・・」
「私,フラワーヒルさんのブログを良く見ているんです.私,実はブログに出てくるローギヤーの弟なんです・・・ブログの記事を読んでいると,ローギヤーがどうも私の兄に違いないと思うんです・・」
「ローギヤー氏は,背が高くて登り坂が滅法強い方です・・」
「そんなんです.彼,何時も2番バスで来るんですよ.なかなか強いんです.ただ,彼は登山中水を飲まないんで,心配しているんですよ・・ブログで兄がカラバタールのことを話していますね.それでローギヤーが兄だと確信したんですよ」
「私,ブログでは他人様の悪口は書かないようにしているんですが,大丈夫かな・・何時も塔ノ岳に来られているんですか」
「週に1~2回来ていますよ・・・ただ冬は来ません・・」
こんな楽しい立ち話を4~5分続ける.そして,9時30分花立山を通過する.
■ご常連と立ち話
金冷シの少し手前で,下山してくる韋駄天のTさんとすれ違う.こんなに暑い日なのに,もう下山してくるとは.韋駄天のTさんやローギヤー氏の弟さんは正に超人である.
9時35分,金冷シを通過する.気温は23.7℃.幾分涼しくなる.
今のところ,疲労感は全くない.体調は申し分なさそうである.結構,調子よく登り続ける.そして,山頂直下の急坂で,下ってくる本郷台のご常連,韋駄天のSさんとバッタリ.
「やあ,お帰りなさい.ロッキー山脈はどんなでしたか・・?」
「お陰様で,予定通り標高4000メートル級の山4座を登頂してきましたよ・・」
「へえ・・大したもんですね・・大変だったでしょう」
「いえ,その内1座は山頂まで乗り物,残りも,実際に登る標高差は,大倉尾根より少し長い程度でしたよ.ただ,4000メートルを越える高いところなので,空気が薄くて苦労しますが・・・」
ここでも5~6分立ち話をする.
そうこうしている内に,これまで後ろを振り返っても姿が見えなかったヤマカガシ氏とイヌが私に追いつく.
■塔ノ岳山頂
9時55分,私,ヤマカガシ氏,イヌの2人と1匹が塔ノ岳山頂に到着する.山頂の気温は22.8℃.塔ノ岳山頂にしてはかなり高温だが,涼しくて気持ちがよい.
山麓のあちこちから白い雲が湧き上がっている.雲間に富士山が少しだけ顔を出している.これ幸いとばかりに写真を撮る.
ヤマカガシ氏は犬を連れているので,尊仏山荘には入れないというので,私一人だけ尊仏山荘に向かう.
■尊仏山荘
尊仏山荘に入る.今日の小屋番はオーナーのHさん.先客はご常連1人.
早速,Hさんから,
「ロッキー山脈はどうでしたか・・?」
と質問を受ける.
「登山道自体は,大倉尾根よりずっと歩きやすいし,標高差も似たり寄ったりですが,ただ4000メートルを越える高所だったんで,それなりに大変でしたよ・・」
「何人ぐらい集まったんですか・・」
「10数人でした.」
「へえ~・・・良くそんなに集まりましたね・・」
それから,暫くの間,四方山話.私がアルパインツアー社主催のロッキー登山で最高年齢記録を塗り替えたと話すと,
「そうでしょうね」
と妙な相づちを打つ.私ごときが最高年齢になるとは・・嬉しくもあるが,逆にもうそうなるのかという悲哀も感じる.まあ,野球に例えるならば,私の寿命は9回裏,2アウト,2ストライク程度の土壇場にいることは十分に自覚しているが・・
「・・実は,Hさんを良く知っている方と一緒でしたよ・・・何でもN大のワンゲル部に居たという方です・・」
私はロッキー山脈にご一緒した元N大ワンゲル部,Sさんの名前を同忘れしているので,HさんにSさんのことを正確に伝えられない.すると,Hさんは,
「へえ~・・・誰だろう?」
暫く考えた末に,
「あっ・・・一寸小太りで,足の遅い人でしょう・・Sさんでしょう」
「そうそう,Sさんでした」
「彼,時々,(大倉尾根を)登ってきますよ.この間も,やけに遅い人が居たので,ひょっと顔を見るとSさんでしたよ・・」
「そうでしたか,私も,ひょっとしたらSさんとロッキーの仲間と連れたって,近々登ってくるかもしれませんよ」
次いで,私の山仲間の話になる.
「そういえば,トドさん,ご無沙汰ですね.元気ですか.そろそろ登ってきても良いんじゃないですか.ノシイカさんは,たまに顔を出していますよ・・」
「今日はバスが空き空きでしたよ」
「そうでしょう・・月曜日からバッタリです」
「トドさんには,そろそろ登ってくるように,今日にでもメール出しておきますよ」
ふと,外を見ると,別棟(私がネコ御殿と呼んでいるところ)の窓際で,ミー君が気持ち良さそうに日向ぼっこをしている.
「あいつ,一日中,寝ているんですよ」とHさんが苦笑する.
■ローギヤー氏にバッタリ
大倉発12時52分のバスに間に合うように下山しようと思う.
30分ほど,尊仏山荘で油を売っている間に,山頂で休憩を取っている人も大分増えている.10時24分に尊仏山荘を出発する.ヤマカガシ氏は,まだ,イヌに水を飲ませているので,失礼して先に下山することにする.
ふと傍らを見ると,珍しくローギヤー氏がベンチに座って休憩を取っている.何時もなら,山頂の尊仏像に合掌して,すぐに下山されているのに,休憩を取るなんて珍しい.私は,
「ローギヤーさん,こんにちは.先ほど弟さんに会いましたよ・・」
と挨拶する.
「エッ・・弟にですか?・・・良く分かりましたね.どうして分かったの?」
私は返答に窮する.というのも,ブログで「ローギヤー氏」などというあだ名を付けていることを,当のローギヤー氏は知らないからである.私はウニャウニャゴジョゴジョと訳の分からない説明をして,
「では,一足先に失礼します・・」
でお別れする.
丁度そのとき,同じバスに乗り合わせたカメラマンのMさんが,山頂にご到着.
「やれ,やれ,やっとご到着ですよ・・」
と言いながら,入れ違いに尊仏山荘に入っていく.
■シカが通せんぼ
山頂直下の急坂を下山し始める.前方に大きなシカが道を塞いでいる.盛んに草を食(は)んでいる.実に見事な雄ジカである.私が近付いても一向に平気である.でも,シカに移動して貰わないと先へ進めないので,ユルリユルリとシカに近付く.シカは面倒臭そうに,ほんの50センチほど移動して,道を空ける.
「ありがとよ・・」
私はシカに挨拶して,下山を開始する.
■かなり高速で下山する
今日はユックリと登ったので,スタミナが余っている.そこで,少々下山速度を上げてみる.快調.
花立山荘前の階段でチャンピョンとすれ違う.
安全には十分気をつけながらスタスタと下山し続ける.その内に,一寸急げば,12時22分のバスにも間に合いそうになる.調子を上げて,12時18分大倉到着.気温33.7℃.蒸し暑い.予定より30分早い12時22分発のバスにユックリ間に合う.山頂から大倉までの所要時間は1時間54分.
バスの乗客は終始私1人.
久々の塔ノ岳.スッキリした.
<ラップタイム>
7:03 大倉歩きだし
(記録失念) 観音茶屋
7:42 見晴茶屋
8:15 駒止茶屋
8:31 堀山の家
9:17 花立山荘(ロスタイム約5分)
9:35 金冷シ(ロスタイム約10分)
9:55 塔ノ岳山頂着(気温+22.8℃)
================================================
10:24 塔ノ岳山頂発
10:34 金冷シ
10:46 花立山荘
11:14 堀山の家
11:28 駒止茶屋
11:50 見晴山荘
12:02 観音茶屋
12:18 大倉
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(休憩時間・雑談時間込み)
大倉 発 7:03
塔ノ岳 着 9:55
(所要時間) 2時間52 分(2.87h)
登攀速度 1269m/2.87h=442.2m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 10:24
大倉 着 12:18
(所要時間) 1時間54分(1.90h)
下降速度 1269m/1.90h=667.9m/h
(おわり)
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