中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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書評:庵幸雄著『ガンと一緒に山登り:60代からの登山体験記』

2009年08月02日 11時06分55秒 | 閑話休題:日々雑感

    書評:庵幸雄著『ガンと一緒に山登り:60代からの登山体験記』
            2009年8月2日(日)

  

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 この度,山旅スクール5期卒業生庵さんが,標記の単行本を自費出版された.
 庵さんは,フラワーヒルと,山旅スクール5期の同期生である.山旅スクールの山行では,何回もご一緒させていただいた.また,鎌倉・横浜・三浦半島に住んでいる山旅スクール5期の同期生有志が,何となく集まって作った「湘南カラビナ隊」でも,随分と色々な山へ出かけたことがある.
 一連の山行を通じて,沢山の経験を積むことができたが,その中で中心的な活動をされたのが,著者の庵さんである.
 私は,この本を読み出して,内容の豊富さ,明快な筆致に惹かれて,半分徹夜しながら,一気に読んでしまった.そして,この本から,大きな感動を受けた.
 そこで,拙い解説になるかもしれないが,このブログを通じて,この感動を多くの方々に伝えたいと思う.
 翻って,昨今,話題となっている北海道トムラウシの事故や,昨年,ペルーでお世話になった登山家,三井氏の遭難など,痛ましい山の事故が続いている.
 ともすれば,これらの事故から,中高年の登山を罪悪視する風潮がないとは言えない世情である.確かに中高年の山の事故が増えていることは紛れもない事実である.だからといって,中高年は登山をすべきでないという風潮は誤っていると私は思う.
 この本が主張するように,登山によって,間違いなく健康増進が促進される.このことは庵さんだけでなく,私の実体験でも明らかである.
 問題は,いかにして安全な登山をするかである.安全に登山をすれば,正に,この本で主張されているように,『山は偉大なホスピタル』である.
 また,安全に登山を楽しむには,登山に関する必要最小限の基礎的な知識と技術が必要である.それには,いくら登山の経験があるにしても,常に山に対して,謙虚であり続けなければならないと痛感している.
 私は,本書が多くの登山愛好家に読んでいただけることを切望してやまない.
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[書誌事項]

■題名:『
ガンと一緒に山登り:60代からの登山体験記』(286ページ)
        (ISBN978-4-89475-134-7 C0075)

■発行年月日:2009年7月29日

■定価: 本体1500円+税

■著者:庵 幸雄
 著者略歴(当該書籍から引用)
 62歳のとき,胃ガンの全摘出手術を受け,翌年から毎年40回ほどの山登りを続け,69歳で日本百名山を完登.現在に至る.

■発行所:白山書房
 〒193-0844東京都八王子市高尾町1954-4
  電話     042(669)4720
    ファックス  042(669)4721

[内容]

第1章 山歩きとの出会い(pp.12-22)
 ガン告知,そして胃の全摘出手術,自宅療法,そして出会い

第2章 山日記から(pp.24-249)(※主要な山だけを抜粋)
 金時山,塔ノ岳,鍋割山,万次郎山,安達太良山,至仏山,白馬岳,甲武信ヶ岳,道志二十六夜山,八ヶ岳,槍ヶ岳,甲斐駒ヶ岳,宮之浦岳,七面山,谷川岳,燕岳,丁須の頭,木曽駒ヶ岳・空木岳,前穂・奥穂高岳,針ノ木・蓮華岳,剣岳,丹沢山,会津駒ヶ岳,鳳凰三山,トムラウシ,北アルプス浦銀座銃創,塩見岳・間ノ岳・北岳,富士山,光岳,・・・・

第3章 私にとって山歩きとは(pp.252-270)
 幸せな巡り会い,
 ハンディキャップを背負って,
 ガンがくれた山歩きの喜び,
 結果としての「日本百名山」完登,
 日々つのる不安と,これからの道

第4章 レートビギナーの体験から伝えたいこと(pp.272-281

 その1 山歩きの勧め
 その2 ツアー登山の勧め
 その3 登山教室への入学の勧め
 その4 単独山行の魅力と限界
 その5 山歩きを楽しくする工夫も大切

あとがき(pp.282-281)
 (付)「日本百名山」登頂記録
 用語解説

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[私の所感]

 私が特にお薦めしたいのは第4章.その中でも,「その3」を,一般の登山愛好家に強くお勧めしたい.
 私も,当然のことながら,登山に関しては全くの素人である.だから,口幅ったいことを言えた義理ではないが,登山学校で教えていただいた最小限度に知識から見ても,危なっかしい登山をしている方が沢山居られるので,いつもハラハラし通しである.
 特に,自己流を豪語して,他人の忠告を完全に無視してしまう自称ベテランの方が時々居られるのには閉口するとともに,どうか事故を起こさないようにと祈らざるを得ない.
 先日も,初対面の自称ベテランの方から,
 「山のガイドは,仕事だから死んでも仕方がない・・・」
と言われ,私は内心で言いようもないショックを受けてしまった.その方の歩き方を,後ろから見ていると,登山学校で真っ先に教えて貰う山の歩き方から,完全にかけ離れた歩き方をしている.
 「なぜ,自分の力量を過信してしまうのだろう・・」
他人のこととはいえ,私は,何とも言いようのない焦りを感じてしまう.

 この心ないと思われる意見を聞いたときに,私はこの度亡くなったペルー人のガイドのことを思い出して,とても悲しくなる.彼には,素敵な奥さんと,目がクリクリとした可愛い坊やが居る.この坊やは一生懸命,父親の仕事を手伝っていた.
 帰国間際に,私は余った未使用のボールペンを,この坊やにプレゼントした.坊やは目を輝かせて,
 「有り難う・・」
とお礼を言った.あのときの坊やの可愛いしぐさが,私の胸に焼き付いている.
 私は,優かったガイド,奥さん,お子さんのことを思い出して,涙せずには居られない.そして,
 「ガイドは商売だから死んでも良い・・」
という言葉が,私の胸に鋭く突き刺さったままになっている.

 庵さんも著書に中で言っている.私たちはガイドの支援によって,安全な山行をしている.肝心のガイドが居なくなっては,残された登山者はどうなるのか・・・
 ある意味では,ガイドこそ,参加者全員の安全のために,絶対に安全でいて欲しい.
 私は,ワスカランで,残念にも事故に遭われた三井さんや現地のガイドのことを思い出して,何とも言えない悲しい心境に陥っている.
 そんな複雑な心境の中で,本書を通読して,今更ながらに,安全な山行を祈念せずにはいられない.

 山に対して,自分の力量を絶対に過信しないで,他人の意見や指摘を率直に受け止められるだけの謙虚さを持つこと,そして,自分の見識や経験で,これらを正確に評価し,実践に移せることが,山を愛する人の必須の条件だと私は思う.
 本書は,いろいろな意味で,中高年の登山愛好家にとって必見の書だと確信する.
 是非,多くの方々に読んで頂きたいと願っている.
 このような啓蒙的な書物を著した著者に敬意を表する次第である.
                          (おわり)
  
 
「閑話休題」の次回の記事
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