春と冬が同居している
丹沢:塔ノ岳
(単独山行)
2007年3月20日(火)
■急に思い立って出発
朝から天気が良さそうである。
例によって,4時頃起床。今日は少々寒いものの天気は良さそうである。急に思い立って,塔ノ岳バカ尾根往復をすることにした。
何時も最低の備品を放り込んであるリュックを背負って,大船発6時04分静岡行に乗車,小田原乗換で渋沢へ向かう。3月18日よりJR東日本のSUICAを使って,小田急に乗れるので,わざわざキップを買い求める手間が省けて,乗換が随分と楽になった。何時ものように,7時26分に大倉バス停に到着する。バスで乗り合わせた登山客はたった5名である。
■気儘に登ってみる
今日,塔ノ岳に登るテーマは,高度計は見ないで「自分の足の赴くまま,気儘に登ってみよう」である。
7時32分に大倉バス停から歩き出す。ピリリと寒いが快晴の青空で気分が高揚する。青空に後押しされて,かなり良い調子で登り続ける。見晴茶屋を通過して,急坂を登り切ると,両側にモミジが並ぶ尾根道になる。多少気温が低いとはいえ,明るい日差しがモミジの木に眩しく照りつけている。背中に太陽のぬくもりを感じながら登り続けるのは何とも気持ちがよい。バス停から他の人より少し遅れて歩き出したが,この辺りで,乗り合わせた登山客,全員を追い越す。
<林の中に射し込む春の明るい日差し>
春の日差しの中,登山道のすぐ側で,子鹿が一心不乱に草を食べている。私がすぐ側を歩いているのに,一向にたじろぐ様子もない。私がカメラを出して,撮影に身構えても平気である。10メートルほど離れたところから,母親の鹿が心配そうに子鹿と私に視線を向ける。
<可愛い子鹿>
■春と冬が同居している
快調に歩き続けて,8時32分に駒止茶屋を通過する。この辺りから登山道の日陰側にうっすらと白いものが見え始める。どうやら,夜中に降雪があったようである。ところどころにある木道の上には霜が粉を振りかけたように真っ白に降り積もっている。大変滑りやすいので,慎重に歩き続ける。
9時22分に花立山荘を通過する。花立小屋から少し登った辺りから,完全な冬景色になる。安全を優先してユックリと歩く。岩稜帯に出ると残雪で真っ白な富士山と南アルプスがクッキリと見渡せる。金冷しから上は,積雪が4~5センチほどになる。新雪なのでアイゼンは不要である。新雪には,すでに踏み跡があるが,歩く度にギシギシと音を立てる雪の感触がとても良い。
■突然の冬山
9時51分,塔ノ岳山頂に到着する。山頂には誰も居ない。富士山や南アルプスの眺望を撮影してから,尊仏山荘に入る。入口近くの日溜まりで,この山荘の愛猫,ミー君がうたた寝している。
<尊仏山荘の入口近くで日向ぼっこ:山荘の中から撮る>
<残雪の塔ノ岳山頂>
今日は花立さん自らが小屋番をしている。山頂の9時51分現在の気温はマイナス1.1℃である。花立さんの話だと,今朝,6時の気温はマイナス5.0℃だったという。
「途中から雪道になってビックリしました・・・」
と私が話しかける。すると小屋番の花立さんは,
「・・私も,本当にビックリしましたよ・・・朝起きたら辺りが真っ白になっていましたよ・・」
<花立山荘から少し登った稜線からの富士山と南アルプス>
■何だか変な会話
私が山頂直前に追い越した登山客が尊仏山荘に入ってくる。そして,私の前に座り,私に話しかける。
「今日は富士山が良く見えますね・・・明日辺り,富士山に登ろうかな・・」
と独り言のように話し出す。花立さんが,
「今日明日は,多分,富士山も風が弱いでしょう・・・案外,登りやすいかも知れませんよ。1人で登るんですか・・?」
「いえ・・・仲間と一緒にですよ・・」
私はこの会話を聞きながら,5月の残雪期に富士山に登ったときのつらさを思い出す。
「この人は凄いな・・私は厳冬期の富士山はとても無理だ」
と思いながら,この会話を聞きながら,ただ,ニコニコしている。彼は私の方を向いて,
「朝1番のバスですか・・・?」
と聞く。突然のご指名にドギマギしながら,私は,
「いえ,2番・・・かな? 渋沢7時16分のバスで来ました・・」
と答える。
「えぇ~・・・一体何時間で登ったんですか・・?」
「今日は,2時間19分でした」
「えぇ~っ・・・私,3時間で登れたので,自慢しようと思っていましたよ・・」
花立さんが,この話を受け取って,
「ここへ登ってくる常連さんには,足の丈夫な人が多いんですよ・・・中には40分ぐらいで走って登ってくる人もいますよ・・・」
他人からどのような評価を受けても,私自身は2時間5~10分台でコンスタントに登りたいと思っている。
■登る早さはさまざま
私は大倉発12時22分のバスに乗って帰りたいと思う。そこで,10時18分に尊仏山荘を出発する。雪道を下り続けるが,花立山荘付近から下は,雪が溶け始め,登山道は泥んこになっている。何時もの通りの調子で下り続ける。
堀山付近で見慣れた方を追い越す。山頂付近で下ってきた方とすれ違ったが,その方である。
「あれ・・・随分調子良く歩いていますね・・・私,足が痛くて参っていますよ・・・」
「先ほどは失礼しました・・・どうされたんですか?」
「久しぶりに塔ノ岳に登ったんですが・・・もう草臥れちゃって・・・」
数分の間,一緒に歩きながら四方山話を交わす。そして,「では,お先に・・」と挨拶して,先に下り続ける。そして,12時16分に大倉バス停に到着する。
■実はこんなことを記録している
実は,私の場合,このバカ尾根を利用して,どのように力を配分したら,一番楽に速く登れるかを試している。ここで詳細は記載していないが,大倉バス停から塔ノ岳山頂までの7キロメートル(水平距離は6.5km)の間に,いくつかのチェックポイントを設けて,それぞれのチェックポイント間のラップタイムを克明に記録している。チェックポイントは以下の通である。
大倉バス停(300m) 0.0km
登山口(345m) 0.7km
亮童窯(360m) 0.9km
丹沢ベース(395m) 1.0km
観音茶屋(470m) 1.2km
高原の家分岐(510m) 1.5km
雑事場ノ平(600m) 1.8km
見晴茶屋(615m) 2.0km
一本松(770m) 2.7km
駒止茶屋(890m) 3.3km
堀山(945m) 3.7km
堀山の家(960m) 4.2km
戸沢分岐(1125m) 4;7km
花立山荘(1305m) 5.3km
金冷し(1365m) 5.8km
塔ノ岳山頂(1491m) 6.5km
・・・・・・・・・・
これまでの経験から,次のような印象を受けている。
(1)急いでもユックリ登っても,所要時間の差はせいぜい15分程度しか違わない。
(2)駒止茶屋辺りまでの前半で,ユックリ歩いても,花立山荘手前の急坂を,より速く登ることはできない。
(3)花立山荘前および塔ノ岳山頂付近の急坂を急いで登っても,ユックリ登っても,疲労の残り具合には,あまり影響がない。
要するに,2時間10分程度が限界になっている理由は,急坂における瞬発力が足りないことがネックになっているようである。とはいえ,私は何も必要以上に速く登山をしようとは思っていない。ただ,最も効率良く登るには,どのようなペース配分にしたらよいかを極めたいと思っているだけである。
[ラップタイム]
7:32 大倉歩き出し
↓
7:50 観音茶屋
↓
8:05 見晴茶屋
↓
8:31 駒止茶屋
↓
8:46 堀山の家
↓
9:22 花立山荘
↓
9:51 塔ノ岳山頂着
10:18 〃 発
↓
12:16 大倉着
■登攀・下降高度 1201m
■登攀所要時間 2時間19分(2.32h)
登攀速度 1201m/2.32h=517.7m/h
■下降所要時間 1時間58分(1.97h)
下降速度 1202m/1.97h=609.6m/h
(おわり)
丹沢:塔ノ岳
(単独山行)
2007年3月20日(火)
■急に思い立って出発
朝から天気が良さそうである。
例によって,4時頃起床。今日は少々寒いものの天気は良さそうである。急に思い立って,塔ノ岳バカ尾根往復をすることにした。
何時も最低の備品を放り込んであるリュックを背負って,大船発6時04分静岡行に乗車,小田原乗換で渋沢へ向かう。3月18日よりJR東日本のSUICAを使って,小田急に乗れるので,わざわざキップを買い求める手間が省けて,乗換が随分と楽になった。何時ものように,7時26分に大倉バス停に到着する。バスで乗り合わせた登山客はたった5名である。
■気儘に登ってみる
今日,塔ノ岳に登るテーマは,高度計は見ないで「自分の足の赴くまま,気儘に登ってみよう」である。
7時32分に大倉バス停から歩き出す。ピリリと寒いが快晴の青空で気分が高揚する。青空に後押しされて,かなり良い調子で登り続ける。見晴茶屋を通過して,急坂を登り切ると,両側にモミジが並ぶ尾根道になる。多少気温が低いとはいえ,明るい日差しがモミジの木に眩しく照りつけている。背中に太陽のぬくもりを感じながら登り続けるのは何とも気持ちがよい。バス停から他の人より少し遅れて歩き出したが,この辺りで,乗り合わせた登山客,全員を追い越す。
<林の中に射し込む春の明るい日差し>
春の日差しの中,登山道のすぐ側で,子鹿が一心不乱に草を食べている。私がすぐ側を歩いているのに,一向にたじろぐ様子もない。私がカメラを出して,撮影に身構えても平気である。10メートルほど離れたところから,母親の鹿が心配そうに子鹿と私に視線を向ける。
<可愛い子鹿>
■春と冬が同居している
快調に歩き続けて,8時32分に駒止茶屋を通過する。この辺りから登山道の日陰側にうっすらと白いものが見え始める。どうやら,夜中に降雪があったようである。ところどころにある木道の上には霜が粉を振りかけたように真っ白に降り積もっている。大変滑りやすいので,慎重に歩き続ける。
9時22分に花立山荘を通過する。花立小屋から少し登った辺りから,完全な冬景色になる。安全を優先してユックリと歩く。岩稜帯に出ると残雪で真っ白な富士山と南アルプスがクッキリと見渡せる。金冷しから上は,積雪が4~5センチほどになる。新雪なのでアイゼンは不要である。新雪には,すでに踏み跡があるが,歩く度にギシギシと音を立てる雪の感触がとても良い。
■突然の冬山
9時51分,塔ノ岳山頂に到着する。山頂には誰も居ない。富士山や南アルプスの眺望を撮影してから,尊仏山荘に入る。入口近くの日溜まりで,この山荘の愛猫,ミー君がうたた寝している。
<尊仏山荘の入口近くで日向ぼっこ:山荘の中から撮る>
<残雪の塔ノ岳山頂>
今日は花立さん自らが小屋番をしている。山頂の9時51分現在の気温はマイナス1.1℃である。花立さんの話だと,今朝,6時の気温はマイナス5.0℃だったという。
「途中から雪道になってビックリしました・・・」
と私が話しかける。すると小屋番の花立さんは,
「・・私も,本当にビックリしましたよ・・・朝起きたら辺りが真っ白になっていましたよ・・」
<花立山荘から少し登った稜線からの富士山と南アルプス>
■何だか変な会話
私が山頂直前に追い越した登山客が尊仏山荘に入ってくる。そして,私の前に座り,私に話しかける。
「今日は富士山が良く見えますね・・・明日辺り,富士山に登ろうかな・・」
と独り言のように話し出す。花立さんが,
「今日明日は,多分,富士山も風が弱いでしょう・・・案外,登りやすいかも知れませんよ。1人で登るんですか・・?」
「いえ・・・仲間と一緒にですよ・・」
私はこの会話を聞きながら,5月の残雪期に富士山に登ったときのつらさを思い出す。
「この人は凄いな・・私は厳冬期の富士山はとても無理だ」
と思いながら,この会話を聞きながら,ただ,ニコニコしている。彼は私の方を向いて,
「朝1番のバスですか・・・?」
と聞く。突然のご指名にドギマギしながら,私は,
「いえ,2番・・・かな? 渋沢7時16分のバスで来ました・・」
と答える。
「えぇ~・・・一体何時間で登ったんですか・・?」
「今日は,2時間19分でした」
「えぇ~っ・・・私,3時間で登れたので,自慢しようと思っていましたよ・・」
花立さんが,この話を受け取って,
「ここへ登ってくる常連さんには,足の丈夫な人が多いんですよ・・・中には40分ぐらいで走って登ってくる人もいますよ・・・」
他人からどのような評価を受けても,私自身は2時間5~10分台でコンスタントに登りたいと思っている。
■登る早さはさまざま
私は大倉発12時22分のバスに乗って帰りたいと思う。そこで,10時18分に尊仏山荘を出発する。雪道を下り続けるが,花立山荘付近から下は,雪が溶け始め,登山道は泥んこになっている。何時もの通りの調子で下り続ける。
堀山付近で見慣れた方を追い越す。山頂付近で下ってきた方とすれ違ったが,その方である。
「あれ・・・随分調子良く歩いていますね・・・私,足が痛くて参っていますよ・・・」
「先ほどは失礼しました・・・どうされたんですか?」
「久しぶりに塔ノ岳に登ったんですが・・・もう草臥れちゃって・・・」
数分の間,一緒に歩きながら四方山話を交わす。そして,「では,お先に・・」と挨拶して,先に下り続ける。そして,12時16分に大倉バス停に到着する。
■実はこんなことを記録している
実は,私の場合,このバカ尾根を利用して,どのように力を配分したら,一番楽に速く登れるかを試している。ここで詳細は記載していないが,大倉バス停から塔ノ岳山頂までの7キロメートル(水平距離は6.5km)の間に,いくつかのチェックポイントを設けて,それぞれのチェックポイント間のラップタイムを克明に記録している。チェックポイントは以下の通である。
大倉バス停(300m) 0.0km
登山口(345m) 0.7km
亮童窯(360m) 0.9km
丹沢ベース(395m) 1.0km
観音茶屋(470m) 1.2km
高原の家分岐(510m) 1.5km
雑事場ノ平(600m) 1.8km
見晴茶屋(615m) 2.0km
一本松(770m) 2.7km
駒止茶屋(890m) 3.3km
堀山(945m) 3.7km
堀山の家(960m) 4.2km
戸沢分岐(1125m) 4;7km
花立山荘(1305m) 5.3km
金冷し(1365m) 5.8km
塔ノ岳山頂(1491m) 6.5km
・・・・・・・・・・
これまでの経験から,次のような印象を受けている。
(1)急いでもユックリ登っても,所要時間の差はせいぜい15分程度しか違わない。
(2)駒止茶屋辺りまでの前半で,ユックリ歩いても,花立山荘手前の急坂を,より速く登ることはできない。
(3)花立山荘前および塔ノ岳山頂付近の急坂を急いで登っても,ユックリ登っても,疲労の残り具合には,あまり影響がない。
要するに,2時間10分程度が限界になっている理由は,急坂における瞬発力が足りないことがネックになっているようである。とはいえ,私は何も必要以上に速く登山をしようとは思っていない。ただ,最も効率良く登るには,どのようなペース配分にしたらよいかを極めたいと思っているだけである。
[ラップタイム]
7:32 大倉歩き出し
↓
7:50 観音茶屋
↓
8:05 見晴茶屋
↓
8:31 駒止茶屋
↓
8:46 堀山の家
↓
9:22 花立山荘
↓
9:51 塔ノ岳山頂着
10:18 〃 発
↓
12:16 大倉着
■登攀・下降高度 1201m
■登攀所要時間 2時間19分(2.32h)
登攀速度 1201m/2.32h=517.7m/h
■下降所要時間 1時間58分(1.97h)
下降速度 1202m/1.97h=609.6m/h
(おわり)