<十二所果樹園からの展望>
梅の鎌倉:荏柄天神から十二所果樹園を巡る(2)
北条首ヤグラから十二所果樹園へ
(山旅スクール5期「鎌倉トレッキング会」定例会)
2011年2月20日(日) 曇 (つつき)
<北条首ヤグラから番場ヶ谷へ>
■北条首ヤグラ
私達は,遭難事故があったという掲示を見ながら,瑞泉寺近くの登山口から瑞泉寺裏山ハイキングコースに入る.途端に観光客の姿がほとんど見当たらなくなる.ここ数日,鎌倉でも雪や雨が降ったが,路面はそれほど濡れてはいない.むしろ露岩帯では泥が洗い流されていて,歩きやすくなっている.この状態なら,多少の枝道に入っても大丈夫だと判断する.
今日は参加人数も少ないので,自然を極力荒らさないようにして,枝道を楽しませて貰おうと決める.とはいえ,このブログ記事は,当日の参加者以外の方々も見ることができるので,詳細な記述は省略する.
素人の私だが,種々の文献資料で調べた古道に沿って,そっと歩いてみることにする.まずは,かなりのヤブに覆われている古道(?)沿いに,ヤブ漕ぎをしながら進む.
そして,ハイキングコースを瑞泉側から歩くと右手に立っている江戸時代に作られた石の道標から枝道をほんの数分入る.胡桃山の南側にある谷の左岸沿いのトラバース道である.降り積もった落ち葉を踏みながら,この小径を進むと山の斜面沿いにあるヤグラ群に到着する.ここが北条首ヤグラである.
新田義貞の鎌倉攻めのときに,北条高時の首を持った家来が貝吹地蔵が吹く貝の音に導かれて,偏堺一覧亭付近を抜けて,ここ北条首ヤグラまで落ち延びたという地蔵信仰の物語がある(資料1,p56).そしてこの北条首ヤグラが,北条一門の墓だと伝えられている.
■番場ヶ谷
北条首ヤグラから谷間を辿って番場ヶ谷入口近くにある広場に降りる.残念ながら,北条首ヤグラから,この広場に至るルートを,ここで明示することはできないが,野趣溢れる楽しさと,多少スリル感のあるルートである.さすがに山道に馴れた仲間達である.何の問題もなく楽しみながら通り抜ける.
広場から右岸川沿いに下ると,間もなく十二所の住宅地に出る.
<番場ヶ谷から十二所神社へ>
■十二所神社
住宅地を下って,一旦,金沢街道に出る.これまでの閑静な道とは一変して,自動車の往来が激しい喧噪な道になる.この道をほんの数分だけ金沢八景方面に歩いて,左折,12時15分に,突き当たりの高台にある十二所神社に到着する.予定通りの時間である.
余談だが,資料2(p.72)によれば,ここはかつて十二郷と呼ばれていたようである.江戸時代初期には,梶原屋敷,明石ヶ谷,丈六,塩嘗,稲荷小路,牛蒡ヶ谷,和泉ヶ谷,峠坂,七曲,鑪(たたら)ヶ谷,積善など合わせて十二所村と言っていたそうである(資料2,p.72).
現在の十二所神社の解明されたのは,神仏分離令により天神(あまつかみ)七柱,地神(くにつかみ)五柱の十二社が祭神として祀られた(資料2,p.52).
■境内片隅で昼食
参拝後,境内の片隅を借りて昼食を摂る.
例によって,野菜漬物さんが,精魂込めて料理した珍味が並ぶ.毎度のことながら,野菜漬物さんの手料理は,どんな高級レストランでの食事よりも楽しくて,素朴な味がなんともいえないほど素晴らしい.
「こういうのを『お袋の味』って,言うんだろうな・・」
と勝手に断定する.
楽しい食事は,何時も予定時間をオーバーする.でも,私達のハイキングは,旅行社主催ではないので,何処まで行かなければダメと言うことはない.要するに16時から16時30分くらいの間に鎌倉駅前に戻れば良い.その点がとても気楽である.気が済むまで昼食を楽しむ.
<朝夷奈切通入口から十二所果樹園へ>
■梶原大刀洗水
12時57分,昼食を終えた私達は,十二所神社を出発する.金沢八景に向かうバス通りを横断して,大刀洗川左岸を遡って,朝夷奈切通入口へ向かう.暫く進むと舗装道路は途絶えて砂利道になる.
途中,大刀洗川の対岸にある梶原大刀洗水を通過する.ここは,梶原景時が上総介広常を討って,その太刀を洗ったところという伝説がある(資料1,p.67).ここは,金流水(建長寺付近;現存せず),不老水(建長寺境内;現存せず),銭洗水(銭洗弁天),日蓮乞水とともに,鎌倉の五名水の一つである(資料1,p.37).
■三郎滝
13時09分,朝夷奈切通入口との分岐に到着する.左に進むと国指定史跡で鎌倉七切通の一つである朝夷奈切通になる.1240年(元治元年),執権北条泰時が工事を監督して突貫工事で作ったと言われる(資料2;p.73).
私達は,切通入口に流下する三郎滝を眺めてから,進路を右に取る.
■展望台広場で長話
荒れた砂利道を登る.かなり急な登り坂である.進行方向左手には植木屋か土木工事関係事業者の敷地が続く.さらに先へ進むと,突然目の前に大きな扉が見え出す.この扉の先が十二所果樹園である.例年7月1日から8月20日まで,および,10月21日から翌年の5月10日までの2期間,一般公開されている(要チェック).
扉を潜って,園内に入る.まずは,右回りに外周路を廻る.そして,梅を眺めながら,園内中央付近にある展望台広場に到着する.晴れていれば,ここから東京湾の先に千葉の海岸が良く見える.そして反対側を望むと相模湾が見える筈である.ここは鎌倉でも屈指の展望の良い場所だが,あいにく今日は,霞んでいて,東京湾も相模湾も見えない.
少し寒いが,一同,備え付けのベンチに腰を下ろす.そして,随分と長い間,四方山話で花を咲かせる.正に「花よりオシャベリ」である.話題の大半は,山旅スクール5期の方々の消息である.同じ仲間だった方が,今は東北の某市で語り部になって活躍している.その方が,テレビに出演したこともあって,山旅スクール5期の同窓会を,この某市で開かないかという話もあるようだ.
もし,実現するならば,私もスケジュール最優先で参加したいなと思う.
野菜漬物さんが,最近,塔ノ岳へ登ったとのことである.野菜漬物さんは私より三つ四つ若いが,ウン十代をとっくに越えている長老である.リュックを背負って山へ出掛けると,近所の方から「化け物だ」と揶揄されるという.私も同様に,知人から「化け物」扱いされている.お互いに”心外だ”と共感する.世の中には,私たちの年代で山を楽しんでいる人がいくらでも居るのに・・
ついでながら,私が一番頭に来ているのは,メタボ気味の知人や友人から,
「・・自分の身体を過信して,山へ登るな・・」
と忠告されることである.酒ばかり飲んでいて,運動もせず,自分の不摂生が原因で,コレステロールがどうした,アレヒロウロールがこうだ,中性脂肪だへったくりが高い,尿酸値がスベッた・・と愚痴を言いながら,平素から健康に注意して節制している私に,”山へ登るな“などとおこがましいことを言う.
大体,山がすべて危険だと頭から決めつけている.こちとらは随分と慎重に山登りをしている・・・冗談じゃないっ!,そこらでグデングデンになるまで酒を飲んだくれたり,他人が嫌がるタバコを年中吹かしているトンチキの方が,よっぽど危険だよ!
「でも,まあ,いいか! 心配してくれるだけでも有り難い・・」
私は,自分の焦れったい気持ちを,こう言い含めて,機嫌を直すのである.だから,野菜漬物さんの愚痴には大いに賛同できる.
<光触寺・明王院を経由して鎌倉駅へ>
■ヤブ道を下って光触寺へ
長い時間のオシャベリをやっと終えて,14時30分,展望台から歩き出す.こんな寒空で1時間以上をだべっていたことになる.
池子弾薬庫跡沿いの尾根道を暫く歩く.そして,飛んでもないところにある鉄製の門の脇を通り過ぎて,正面に送電鉄塔が見え出すところで,右折してヤブ道に入る.ここには何の標識もないので,注意して歩かないと,ついつい見落としてしまう.
踏み跡より一寸マシな細い道が続く.両側から丈余の笹が覆い被さる.途中,旧日本海軍の道標が転がっている.これも重要な史跡だから大切にしなければいけないなと思う.尾根沿いの道を下り続けると,最後は落ち葉が厚く覆い被さって,滑りやすい急坂になる.ここを慎重に下ると,飯場のような場所に降り立つ.
谷沿いの道を数分下ると光触寺に到着する.時宗の寺である.藤沢の遊行寺の末寺.
境内の片隅で休憩を取っている10名ほどのグループと会う.大半が年配の女性のようである.挨拶をするようなしないような状態で,何となく接近する.
この寺には,塩嘗地蔵,一遍上人像,頬焼阿弥陀など,注目すべき見所が沢山あるが,お寺より団子の一行は,オシャベリが過ぎたのか,一向に関心がなさそうである.説明するのをヤメタ!
■五大堂明王院
一行の関心は,もう鎌倉駅周辺でお茶をすることに集中している.トイレ休憩の後,光触寺を出発する.先ほど休憩を取っていたグループと混じりながら,十二所バス停方面に向かう.あちらのグループは,バスに乗車して鎌倉駅に向かうようである.私達のグループはまだまだ元気.そのまま歩いて,鎌倉駅へ向かう.
イエズス会鎌倉修道院前から裏道に入る.大慈寺跡を経由して,15時04分,五大堂明王院に到着する.私達が到着すると同時に,反対側から数十人の大集団が明王院に到着する.この集団は老人男性が圧倒的に多い.こりゃたまらん・・私達は明王院の梅をチラリと眺めただけで,金沢街道に出る.
■鎌倉駅へ一直線
早く鎌倉駅に戻りたかったので,金沢街道を砥橋から浄明寺まで歩く.ここは自動車の往来が激しくてイヤな道である.たまりかねて,バス停浄明寺から左折,報国寺前から田楽辻子を経由して御堂橋に出る.さらに宝戒寺を過ぎたところから大佛次郎邸,宇津宮辻子幕府跡を経由する住宅地内の路地を通って若宮大路(段葛)に出る.ここから沢山の観光客の間を縫うようにして,15時55分に小町通り「モア」に到着する.
「モア」でお茶.女性群は一斉に甘いものを注文する.私はホットコーヒーだけ.
最近のテレビで,「女性は甘いものを好む」という話は本当だなと,妙に納得する.まあ,せいぜい,隠れ糖尿病に注意して下さい.ここでも1時間近くオシャベリが続く.
私は鎌倉市役所前16時50分発の鎌倉中央公園行のバスに乗りたい,そこで,16時40分,先に帰ると言う.すると,他の方々も,一緒に帰ると言い出す.一同,鎌倉駅で解散.
次回散策は3月20日(日)に決定.
<ラップタイム>
9:35 鎌倉駅歩き出し
9:50 青梅歓喜天
10:00 鶴岡八幡宮(10:08まで参拝見学)
10:24 荏柄天神(10:26まで参拝見学)
10:40 鎌倉宮
11:29 北条首ヤグラ
12:15 十二所神社(12:57まで昼食)
13:22 十二所果樹園(14:30まで休憩・見学)
14:49 光触寺(14:54まで参拝見学)
15:04 明王院
15:20 報国寺
15:48 宇津宮辻子幕府跡
15:55 小町通り「もあ」
[散策記録]
■水平歩行距離 11.9km
■累積登攀高度 329m
■累積下降高度 329m
■歩行時間(休憩時間込み)
鎌倉駅 発 9:35
小町通り「モア」着 15:55
(所要時間) 6時間20分(6.33h)
歩行速度 11.9km/6.33h=1.88km/h
(おわり)
[参考資料]
資料1;鎌倉市教育センター(編),2009,『かまくら子ども風土記』鎌倉市教育委員会
資料2;小林伸男,1994,『神奈川ぶらりいウオーキング』神奈川図書
「鎌倉あれこれ」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/12c1d660e59771c3c21e77baa97f4a8b
「鎌倉あれこれ」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/1e6be6cf1f1fa6d001903ef18e6d5d80
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