<花立場からの眺望>
丹沢:こたつネコとジャイアンに出会った塔ノ岳(今年48目)
(登り単独:下りジャイアンに同行)
2009年12月19日(水)
■今日こそ出掛けるぞ
天気予報を見ながら,昨夜の内から,今日こそ塔ノ岳に登ろうと決めていた.
そのつもりで,午前4時に起床する.放射冷却のためか,やけに寒い.何となく出掛けたくない気分になるが,意を決し,いつものように,5時10分に家を出る.勿論,真っ暗.月も出ていない.
列車が小田原に近づく頃,東の水平線が少しずつ明るくなってくる.
小田原で小田急電鉄に乗り換えて,渋沢駅で下車する.バス停近くの階段を下りていくと,ご常連,三角髭のTさん(以下Tさん)とバッタリ会う.
■バスで三角髭のTさんと雑談
1番バスは,土曜日にしては,空いている.バスにはK大Nさん,Tさんなど,ご常連の顔がチラホラと見える.私の席の隣にTさんが座る.バスに揺られながら,Tさんといろいろと雑談をする.
Tさんは毎日のように丹沢の山々に登っている.
「・・・今日は,三ノ塔ですか・・?」
とTさんに伺う.
「いえ・・今日は塔ノ岳を往復しようと思います.毎日,塔へ登っていると,下りで足が痛くなるので,塔は1週間に2回程度にして,後は三ノ塔に登ることにしていますよ・・」
と凄い返事が返ってくる.
塔ノ岳のご常連には,Tさんのような方が何人も居られるので,全く恐れ入ってしまう.
■山麓も冬景色だ
大倉でドヤドヤと沢山の登山客が下車する.例によって,私がモタモタしている内に,K大Nさん,Tさんはサッサと出発してしまう.私は,着ていた山用のジャケットを脱いで,長袖一枚になる.勿論,これでは寒いが,歩き出せば直ぐに暑くなると思ったので,思い切って薄着になる.
また,例によって,大半の人たちが出発してしまった後,ビリカスになった私も,7時11分に大倉を歩き出す.
つい先日,12月16日に塔ノ岳を訪れたときには,山麓の紅葉がとても綺麗だったが,たった数日の間に,すっかり落葉してしまい,辺りは真冬の風景に変わっている.
歩き出してみると,今日は随分と足が軽いような気がする.そうなると,歩くこと自体が楽しくなり,気分は段々とルンルンになる.
克董窯付近で,K大Nさんに追いつく.ほんの1~2分,雑談しながら歩いた後,
「お先に失礼・・・」
ということにして,先に行かせて貰う.
■駒止茶屋まで丁度1時間
今日は,体調が良くて,滑り出しから体が軽い.
駒止茶屋手前の急な階段に差し掛かる.ここを,ゆっくりだが,かなり気楽に登り続ける.私の後ろからもの凄い速度で登ってくる40才台の男性が気になる.そこで,駒止茶屋でこの男性に先に行って貰おうと思ったが,汗びっしょりになった男性は,駒止茶屋のベンチにへたり込んでしまう.その後,この男性は私に追いつくことはなかった.
体力に余裕を持ったまま駒止茶屋を通過する.今日の大倉から駒止茶屋までの所要時間は,丁度,1時間.1時間は切れなかったが,「まあ,まあ」のラップタイムである.私はとても気分が良くなる.
「おや,まあ・・・この調子だと2時間25分程度で登れるかも知れないぞ・・」
私はシメシメと心の中で,ほくそ笑む.
■素晴らしい富士山
堀山の尾根に出る.
今日の堀山の尾根からの富士山の眺望は素晴らしい.久々に快晴の下の富士山である.裾野まで雪で真っ白になった富士山は,何回見ても素敵である.
「そういえば,昨日,あの有名なKU氏のグループが遭難したのは,あの辺りかな・・・」
と想像する.
「やっぱり,山は怖いな・・・」
と改めて思う.同時に,冬山は自粛しよう.行くとしても,初級程度の冬山だけにしようと,心の中で固く決める.
また,メタボ知人から,
「山へ行くのを止めなさい」
と有り難くない忠告を受ける機会が多くなるだろう.
足が自分の思うように上がらず,自宅で畳の縁や廊下で躓いて転倒しているお方の忠告だけは受けたくない.
「お前さんこそ,自宅に住むのを止めなさい・・畳や廊下で躓いて危ないから」
と忠告してあげたい.
<堀山からの富士山>
<今日の萱場平>
■どうして無理をして登るの?
8時26分,堀山の家を通過する.今日は土曜日なので,ここも開店するはずだが,まだ早いためか閉めたままである.小草平のベンチでは,数名の中年登山者が休憩を取っている.私は軽く挨拶をして通過する.
急坂に差し掛かる.露岩帯はカラカラに乾いている.案外調子よく登り続けられる.ほんのり汗ばむ程度で登り続ける.8時45分,萱場平で定点観測用の写真を撮る.気温がかなり下がっているようである.日中融けたと思われる泥濘がカチンカチンに凍結している.辺りには誰も居ない.
そのまま,花立山荘を目指して登り続ける.山荘手前の長い登り階段の下に到着する.
「後,7分の辛抱.7分登れば花立山荘だぞ・・・」
と自分自身に言い聞かせながら,焦らずゆっくりと同じテンポで登り続ける.そのとき背後で,
「ザッ,ザッ,ザッ,・・」
と,かなり速いピッチの足音が聞こえてくる.かけっこの若者かなと思って振り返ると,赤いヤッケを着た50歳代の男性が,私より10メートルばかり下に居る.汗びっしょりのようである.
「私を追い抜こうとしているな・・・」
と思ったが,私はこれまでと同じリズムのまま登り続ける.何時でも追い抜いてくれという姿勢である.
今日の体調が良いためか,長い階段を6分ほどで登り切り,9時03分に花立山荘に到着する.山荘から富士山が綺麗に見えているので,ここでも富士山の写真を撮る.
写真を撮っている間に,私を追いかけていた男性が山荘に到着して,へたり込むようにベンチに座る.私は心の中で,
「あまり無理をしない方が良いですよ」
と声を掛けて,そのまま登り続ける.
<花立の富士山>
■意外に早く塔ノ岳山頂に到着
調子が悪いと,山荘から花立場のコルまで,10分掛かるが,今日は快調,7分で花立場に到着する.
ここからの眺望がまた素晴らしい.富士山,南アルプス,八ヶ岳の連山が雪を被って真っ白に連なっているのが見える.目の前には塔ノ岳の山頂が青空の下にクッキリと見えている.
9時15分に金冷シを通過する.調子がよい.
金冷シを過ぎて最初の長い階段を登り切る.途中でご常連と思われる長身の男性に道を譲られる.木道を過ぎて,2番目の階段に差し掛かったところで,下山してくるTさんとすれ違う.Tさんはさすがに速い.
9時27分,無事,塔ノ岳山頂に到着する.大倉からの所要時間は,2時間16分.私の現状を考えると,このタイムなら十分満足である.しかも全く疲労感がないのが嬉しい.
「やっと体力が回復したな・・・」
体力が復帰できた嬉しさが胸の中に込み上げてくる.
■尊仏山荘
今日の山頂からの眺望は素晴らしい.私は,富士山,南アルプス,丹沢の蛭ヶ岳方面,八ヶ岳,大山,相模湾とぐるり一回り写真を撮ってから,尊仏山荘に入る.今日の小屋番はOさん他1名.
早速,小屋の温度計を覗き込むと,9時30分現在の外気温はマイナス7.7℃.思っていたより低温である.Oさんの話によると,明け方の気温はマイナス10.4℃だったという.
例によって,300円也のお茶を所望する.私はOさんに,
「・・・実は,昨夜,遅くまでテレビでアニマルプラネット,ひょっとしてミー君が出るかと思って,ずっと見ていました.一寸睡眠不足ですよ」
と報告する.もっとも,睡眠不足とは言いながら,21時30分には就寝していたが・・でも,何時も21時前に寝てしまう私にとっては夜更かしである.Oさんが,
「ミーのテレビは25日,20時頃の筈ですよ・・・是非,見て下さい・・」
と言う.
私が,ミー君は居ないなと思いながら,キョロキョロ辺りを見回す.すると,Oさんが察して,帳場奥の部屋に入り,部屋のコタツに手を突っ込んで,ミー君を引っ張り出す.ミーは嫌々ながら外に引っ張り出される.
「ミャオや・・こっちへ来て,お客さんに挨拶しなさいよ・・・」
コタツの中で良い気持ちで寝ていたのに,いきなり引っ張り出されたミー君は不機嫌で憮然としている.
「ほら,こっちへ来て,水でも飲みなさいよ・・・」
ミー君は,畳の上にゴロンと寝ころんで尻尾をバタつかせる.Oさんが足でミー君をからかう.ミー君は,Oさんの足にじゃれついきながら,軽く噛んでいる.そして,Oさんに促されるようにして,客席に出てくる.
ミー君の一連の仕草が,何となくとぼけていて可愛い.
私がOさんに,
「ところで,Oさん.『山と渓谷』の1月号に,静岡の女性が書いたミー君のエッセイが掲載されていますよ」
と教える.すると,Oさんより先に,近くに座っていたご常連が,
「そうですか・・・じゃあ,早速,『山と渓谷』を買って読みましょう・・」
と反応する.
私は高校生の頃,『牡猫ムルの人生観』という奇妙な本を読んだことを思い出す.もう中身はすっかり忘れたが,確か,小説家の家に飼われているムルが,ご主人の書いた原稿を前後めちゃめちゃにし,さらにムル自身が,小説家の真似をして勝手に記事を書いて,ご主人の原稿の中に混ぜてしまう・・・それをそのまま出版してしまう・・・そんな本だったような気がする.ミーをからかっていると,あの本をもう一度読みたくなる.もし,ミー君が千客万来の塔ノ岳物語を書いたら,どんな内容の本になるのだろう.
番台の脇に置いてある落書帳をパラパラとめくって見る.山旅スクール仲間のお一人が,「鍋割山から廻ってきた・・」と書き込んでいる.ついでに,自称あだ名の「トド」と書き込んでいる.
「トドなんていうほど,太っていないでしょう・・・」
と小屋番のお一人が言う.
■花立山荘手前で知人に会う
大倉発12時15分のバスに十分間に合うように,9時55分,尊仏山荘を出発する.いつの間にか山頂には,登山客が増えている.
途中,写真を撮りながら,ゆっくりと下山し続ける.金冷シの手前で,同じバスに乗っていたK大Nさんとすれ違う.
10時14分,花立場のコルを通過する.沢山の登山客が列を作って登ってくる.登り客に道を譲りながら下る.10時18分,花立山荘の直ぐ手前で,登ってくる尊仏山荘小屋番のNさんとバッタリ会う.Nさんが,私に,
「・・貴方のお友達が,後ろから登ってきますよ・・・」
と言う.私の友達? ヒョッとしてミー君? 一体誰だろう?
すると5メートルほど後ろに,汗びっしょりのジャイアンさんが居る.ジャイアンさんは,鎌倉アルプスの建長寺寄りにある「十王岩」で知り合った山仲間.このブログでもときどき登頂する仙人とも共通の知人である.
私は,ジャイアンさんと一緒に,もう一度,塔ノ岳に登り返すことにする.
<花立場から秦野を見下ろす>
■再び尊仏山荘へ
ジャイアンさんと一緒に,きわめてゆっくりとしたペースで再び塔ノ岳山頂を目指す.途中,下山して来るご常連とすれ違う.
10時46分,再び塔ノ岳山頂に到着する.山頂でジャイアンさんの記念写真を撮ってから,もう一度尊仏山荘に立ち寄る.今度は,座席がほぼ満員になるほど沢山の客で賑わっている.ミー君はどこかへ消えている.
「・・・途中で知人に会ったので,また登ってきました・・」
私たちと入れ違いに,K大Nさんが,尊仏山荘から下山を開始する.
ジャイアンさんから,山荘のコーヒーをご馳走して貰う.
「ここのコーヒーは,鎌倉小町通××のコーヒーよりもずっと美味しいですよ・・」
とジャイアンさんご推奨である.私も同感.
※この場を借りて,「ジャイアンさん.ごちそうさまでした.」
■ジャイアンさんと一緒に下山
11時17分,再び尊仏山荘から下山を開始する.山荘を出るときに,Oさんが,
「また,お友達に出会ったら,登り返して下さいよ・・・今日は泊まりですね」
と冗談を言う.
次から次へと登ってくる登山客とすれ違いながら,ゆっくりと下り続ける.
花立場手前の狭いところで,でミロクの大グループとすれ違う.グループの中の1人に,
「FHさん,今日は・・」
と声を掛けられる.山旅スクールの後輩である.
11時43分,花立山荘を通過する.山荘前のベンチは登山客で満杯である.山荘からの長い階段を慎重に下りて,11時58分に萱場平を通過する.泥が融けてヌルヌルになっている.
戸沢分岐で,先に下山を開始したK大N氏に追いつく.一言二言お話しをしてから,先に行かせて貰う.
堀山の家に近づく頃,尊仏山荘のオーナーHさんとすれ違う.私は,
「今日は,途中から(山頂まで)登り返しましたよ・・」
と報告する.すると,
「そうですか・・でも,それで2回登ったとカウントしないでくださいよ」
という返事が返ってくる.
13時27分にバス停大倉に到着する.
ジャイアンさんに同行して,相模大野,藤沢経由で帰宅する.
<ジャイアンの後について下山>
[ラップタイム]
7:11 大倉歩き出し
7:29 観音茶屋
7:43 見晴茶屋
8:11 駒止茶屋
8:26 堀山の家
9:03 花立山荘
9:15 金冷シ
9:27 塔ノ岳山頂 着
=========================================
9:55 塔ノ岳山頂 発(-7.7℃)
10:05 金冷シ
10:14 花立場
10:19 ジャイアンと会う.一緒に登り返し
10:31 金冷シ
10:46 塔ノ岳山頂 着
==========================================
11:17 塔ノ岳山頂 発(-5.7 ℃)
11:31 金冷シ
11:43 花立山荘
12:13 堀山の家(12:16まで休憩)
12:31 駒止茶屋
12:52 見晴茶屋(12:55まで休憩)
13:06 観音茶屋
13:27 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km
■累積登攀下降高度 1250m
■登攀所要時間
大倉 発 7:11
塔ノ岳 着 9:27
(所要時間) 2時間16分(2.27h)
登攀速度 1250m/2.27h=550.7m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 11:17
大倉 着 13:27
(所要時間) 2時間10分(2.17h)
下降速度 1250m/2.17h=576.0m/h
(おわり)
[加除訂正]
2009/12/21 転換ミス訂正
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/88f84725bd7ede9a940409db3512dd9e
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/c6769690cb64b1720e2af40b6f04fb7f
丹沢:こたつネコとジャイアンに出会った塔ノ岳(今年48目)
(登り単独:下りジャイアンに同行)
2009年12月19日(水)
■今日こそ出掛けるぞ
天気予報を見ながら,昨夜の内から,今日こそ塔ノ岳に登ろうと決めていた.
そのつもりで,午前4時に起床する.放射冷却のためか,やけに寒い.何となく出掛けたくない気分になるが,意を決し,いつものように,5時10分に家を出る.勿論,真っ暗.月も出ていない.
列車が小田原に近づく頃,東の水平線が少しずつ明るくなってくる.
小田原で小田急電鉄に乗り換えて,渋沢駅で下車する.バス停近くの階段を下りていくと,ご常連,三角髭のTさん(以下Tさん)とバッタリ会う.
■バスで三角髭のTさんと雑談
1番バスは,土曜日にしては,空いている.バスにはK大Nさん,Tさんなど,ご常連の顔がチラホラと見える.私の席の隣にTさんが座る.バスに揺られながら,Tさんといろいろと雑談をする.
Tさんは毎日のように丹沢の山々に登っている.
「・・・今日は,三ノ塔ですか・・?」
とTさんに伺う.
「いえ・・今日は塔ノ岳を往復しようと思います.毎日,塔へ登っていると,下りで足が痛くなるので,塔は1週間に2回程度にして,後は三ノ塔に登ることにしていますよ・・」
と凄い返事が返ってくる.
塔ノ岳のご常連には,Tさんのような方が何人も居られるので,全く恐れ入ってしまう.
■山麓も冬景色だ
大倉でドヤドヤと沢山の登山客が下車する.例によって,私がモタモタしている内に,K大Nさん,Tさんはサッサと出発してしまう.私は,着ていた山用のジャケットを脱いで,長袖一枚になる.勿論,これでは寒いが,歩き出せば直ぐに暑くなると思ったので,思い切って薄着になる.
また,例によって,大半の人たちが出発してしまった後,ビリカスになった私も,7時11分に大倉を歩き出す.
つい先日,12月16日に塔ノ岳を訪れたときには,山麓の紅葉がとても綺麗だったが,たった数日の間に,すっかり落葉してしまい,辺りは真冬の風景に変わっている.
歩き出してみると,今日は随分と足が軽いような気がする.そうなると,歩くこと自体が楽しくなり,気分は段々とルンルンになる.
克董窯付近で,K大Nさんに追いつく.ほんの1~2分,雑談しながら歩いた後,
「お先に失礼・・・」
ということにして,先に行かせて貰う.
■駒止茶屋まで丁度1時間
今日は,体調が良くて,滑り出しから体が軽い.
駒止茶屋手前の急な階段に差し掛かる.ここを,ゆっくりだが,かなり気楽に登り続ける.私の後ろからもの凄い速度で登ってくる40才台の男性が気になる.そこで,駒止茶屋でこの男性に先に行って貰おうと思ったが,汗びっしょりになった男性は,駒止茶屋のベンチにへたり込んでしまう.その後,この男性は私に追いつくことはなかった.
体力に余裕を持ったまま駒止茶屋を通過する.今日の大倉から駒止茶屋までの所要時間は,丁度,1時間.1時間は切れなかったが,「まあ,まあ」のラップタイムである.私はとても気分が良くなる.
「おや,まあ・・・この調子だと2時間25分程度で登れるかも知れないぞ・・」
私はシメシメと心の中で,ほくそ笑む.
■素晴らしい富士山
堀山の尾根に出る.
今日の堀山の尾根からの富士山の眺望は素晴らしい.久々に快晴の下の富士山である.裾野まで雪で真っ白になった富士山は,何回見ても素敵である.
「そういえば,昨日,あの有名なKU氏のグループが遭難したのは,あの辺りかな・・・」
と想像する.
「やっぱり,山は怖いな・・・」
と改めて思う.同時に,冬山は自粛しよう.行くとしても,初級程度の冬山だけにしようと,心の中で固く決める.
また,メタボ知人から,
「山へ行くのを止めなさい」
と有り難くない忠告を受ける機会が多くなるだろう.
足が自分の思うように上がらず,自宅で畳の縁や廊下で躓いて転倒しているお方の忠告だけは受けたくない.
「お前さんこそ,自宅に住むのを止めなさい・・畳や廊下で躓いて危ないから」
と忠告してあげたい.
<堀山からの富士山>
<今日の萱場平>
■どうして無理をして登るの?
8時26分,堀山の家を通過する.今日は土曜日なので,ここも開店するはずだが,まだ早いためか閉めたままである.小草平のベンチでは,数名の中年登山者が休憩を取っている.私は軽く挨拶をして通過する.
急坂に差し掛かる.露岩帯はカラカラに乾いている.案外調子よく登り続けられる.ほんのり汗ばむ程度で登り続ける.8時45分,萱場平で定点観測用の写真を撮る.気温がかなり下がっているようである.日中融けたと思われる泥濘がカチンカチンに凍結している.辺りには誰も居ない.
そのまま,花立山荘を目指して登り続ける.山荘手前の長い登り階段の下に到着する.
「後,7分の辛抱.7分登れば花立山荘だぞ・・・」
と自分自身に言い聞かせながら,焦らずゆっくりと同じテンポで登り続ける.そのとき背後で,
「ザッ,ザッ,ザッ,・・」
と,かなり速いピッチの足音が聞こえてくる.かけっこの若者かなと思って振り返ると,赤いヤッケを着た50歳代の男性が,私より10メートルばかり下に居る.汗びっしょりのようである.
「私を追い抜こうとしているな・・・」
と思ったが,私はこれまでと同じリズムのまま登り続ける.何時でも追い抜いてくれという姿勢である.
今日の体調が良いためか,長い階段を6分ほどで登り切り,9時03分に花立山荘に到着する.山荘から富士山が綺麗に見えているので,ここでも富士山の写真を撮る.
写真を撮っている間に,私を追いかけていた男性が山荘に到着して,へたり込むようにベンチに座る.私は心の中で,
「あまり無理をしない方が良いですよ」
と声を掛けて,そのまま登り続ける.
<花立の富士山>
■意外に早く塔ノ岳山頂に到着
調子が悪いと,山荘から花立場のコルまで,10分掛かるが,今日は快調,7分で花立場に到着する.
ここからの眺望がまた素晴らしい.富士山,南アルプス,八ヶ岳の連山が雪を被って真っ白に連なっているのが見える.目の前には塔ノ岳の山頂が青空の下にクッキリと見えている.
9時15分に金冷シを通過する.調子がよい.
金冷シを過ぎて最初の長い階段を登り切る.途中でご常連と思われる長身の男性に道を譲られる.木道を過ぎて,2番目の階段に差し掛かったところで,下山してくるTさんとすれ違う.Tさんはさすがに速い.
9時27分,無事,塔ノ岳山頂に到着する.大倉からの所要時間は,2時間16分.私の現状を考えると,このタイムなら十分満足である.しかも全く疲労感がないのが嬉しい.
「やっと体力が回復したな・・・」
体力が復帰できた嬉しさが胸の中に込み上げてくる.
■尊仏山荘
今日の山頂からの眺望は素晴らしい.私は,富士山,南アルプス,丹沢の蛭ヶ岳方面,八ヶ岳,大山,相模湾とぐるり一回り写真を撮ってから,尊仏山荘に入る.今日の小屋番はOさん他1名.
早速,小屋の温度計を覗き込むと,9時30分現在の外気温はマイナス7.7℃.思っていたより低温である.Oさんの話によると,明け方の気温はマイナス10.4℃だったという.
例によって,300円也のお茶を所望する.私はOさんに,
「・・・実は,昨夜,遅くまでテレビでアニマルプラネット,ひょっとしてミー君が出るかと思って,ずっと見ていました.一寸睡眠不足ですよ」
と報告する.もっとも,睡眠不足とは言いながら,21時30分には就寝していたが・・でも,何時も21時前に寝てしまう私にとっては夜更かしである.Oさんが,
「ミーのテレビは25日,20時頃の筈ですよ・・・是非,見て下さい・・」
と言う.
私が,ミー君は居ないなと思いながら,キョロキョロ辺りを見回す.すると,Oさんが察して,帳場奥の部屋に入り,部屋のコタツに手を突っ込んで,ミー君を引っ張り出す.ミーは嫌々ながら外に引っ張り出される.
「ミャオや・・こっちへ来て,お客さんに挨拶しなさいよ・・・」
コタツの中で良い気持ちで寝ていたのに,いきなり引っ張り出されたミー君は不機嫌で憮然としている.
「ほら,こっちへ来て,水でも飲みなさいよ・・・」
ミー君は,畳の上にゴロンと寝ころんで尻尾をバタつかせる.Oさんが足でミー君をからかう.ミー君は,Oさんの足にじゃれついきながら,軽く噛んでいる.そして,Oさんに促されるようにして,客席に出てくる.
ミー君の一連の仕草が,何となくとぼけていて可愛い.
私がOさんに,
「ところで,Oさん.『山と渓谷』の1月号に,静岡の女性が書いたミー君のエッセイが掲載されていますよ」
と教える.すると,Oさんより先に,近くに座っていたご常連が,
「そうですか・・・じゃあ,早速,『山と渓谷』を買って読みましょう・・」
と反応する.
私は高校生の頃,『牡猫ムルの人生観』という奇妙な本を読んだことを思い出す.もう中身はすっかり忘れたが,確か,小説家の家に飼われているムルが,ご主人の書いた原稿を前後めちゃめちゃにし,さらにムル自身が,小説家の真似をして勝手に記事を書いて,ご主人の原稿の中に混ぜてしまう・・・それをそのまま出版してしまう・・・そんな本だったような気がする.ミーをからかっていると,あの本をもう一度読みたくなる.もし,ミー君が千客万来の塔ノ岳物語を書いたら,どんな内容の本になるのだろう.
番台の脇に置いてある落書帳をパラパラとめくって見る.山旅スクール仲間のお一人が,「鍋割山から廻ってきた・・」と書き込んでいる.ついでに,自称あだ名の「トド」と書き込んでいる.
「トドなんていうほど,太っていないでしょう・・・」
と小屋番のお一人が言う.
■花立山荘手前で知人に会う
大倉発12時15分のバスに十分間に合うように,9時55分,尊仏山荘を出発する.いつの間にか山頂には,登山客が増えている.
途中,写真を撮りながら,ゆっくりと下山し続ける.金冷シの手前で,同じバスに乗っていたK大Nさんとすれ違う.
10時14分,花立場のコルを通過する.沢山の登山客が列を作って登ってくる.登り客に道を譲りながら下る.10時18分,花立山荘の直ぐ手前で,登ってくる尊仏山荘小屋番のNさんとバッタリ会う.Nさんが,私に,
「・・貴方のお友達が,後ろから登ってきますよ・・・」
と言う.私の友達? ヒョッとしてミー君? 一体誰だろう?
すると5メートルほど後ろに,汗びっしょりのジャイアンさんが居る.ジャイアンさんは,鎌倉アルプスの建長寺寄りにある「十王岩」で知り合った山仲間.このブログでもときどき登頂する仙人とも共通の知人である.
私は,ジャイアンさんと一緒に,もう一度,塔ノ岳に登り返すことにする.
<花立場から秦野を見下ろす>
■再び尊仏山荘へ
ジャイアンさんと一緒に,きわめてゆっくりとしたペースで再び塔ノ岳山頂を目指す.途中,下山して来るご常連とすれ違う.
10時46分,再び塔ノ岳山頂に到着する.山頂でジャイアンさんの記念写真を撮ってから,もう一度尊仏山荘に立ち寄る.今度は,座席がほぼ満員になるほど沢山の客で賑わっている.ミー君はどこかへ消えている.
「・・・途中で知人に会ったので,また登ってきました・・」
私たちと入れ違いに,K大Nさんが,尊仏山荘から下山を開始する.
ジャイアンさんから,山荘のコーヒーをご馳走して貰う.
「ここのコーヒーは,鎌倉小町通××のコーヒーよりもずっと美味しいですよ・・」
とジャイアンさんご推奨である.私も同感.
※この場を借りて,「ジャイアンさん.ごちそうさまでした.」
■ジャイアンさんと一緒に下山
11時17分,再び尊仏山荘から下山を開始する.山荘を出るときに,Oさんが,
「また,お友達に出会ったら,登り返して下さいよ・・・今日は泊まりですね」
と冗談を言う.
次から次へと登ってくる登山客とすれ違いながら,ゆっくりと下り続ける.
花立場手前の狭いところで,でミロクの大グループとすれ違う.グループの中の1人に,
「FHさん,今日は・・」
と声を掛けられる.山旅スクールの後輩である.
11時43分,花立山荘を通過する.山荘前のベンチは登山客で満杯である.山荘からの長い階段を慎重に下りて,11時58分に萱場平を通過する.泥が融けてヌルヌルになっている.
戸沢分岐で,先に下山を開始したK大N氏に追いつく.一言二言お話しをしてから,先に行かせて貰う.
堀山の家に近づく頃,尊仏山荘のオーナーHさんとすれ違う.私は,
「今日は,途中から(山頂まで)登り返しましたよ・・」
と報告する.すると,
「そうですか・・でも,それで2回登ったとカウントしないでくださいよ」
という返事が返ってくる.
13時27分にバス停大倉に到着する.
ジャイアンさんに同行して,相模大野,藤沢経由で帰宅する.
<ジャイアンの後について下山>
[ラップタイム]
7:11 大倉歩き出し
7:29 観音茶屋
7:43 見晴茶屋
8:11 駒止茶屋
8:26 堀山の家
9:03 花立山荘
9:15 金冷シ
9:27 塔ノ岳山頂 着
=========================================
9:55 塔ノ岳山頂 発(-7.7℃)
10:05 金冷シ
10:14 花立場
10:19 ジャイアンと会う.一緒に登り返し
10:31 金冷シ
10:46 塔ノ岳山頂 着
==========================================
11:17 塔ノ岳山頂 発(-5.7 ℃)
11:31 金冷シ
11:43 花立山荘
12:13 堀山の家(12:16まで休憩)
12:31 駒止茶屋
12:52 見晴茶屋(12:55まで休憩)
13:06 観音茶屋
13:27 大倉 着
[山行記録]
■水平距離 7.0km
■累積登攀下降高度 1250m
■登攀所要時間
大倉 発 7:11
塔ノ岳 着 9:27
(所要時間) 2時間16分(2.27h)
登攀速度 1250m/2.27h=550.7m/h
■下降所要時間
塔ノ岳 発 11:17
大倉 着 13:27
(所要時間) 2時間10分(2.17h)
下降速度 1250m/2.17h=576.0m/h
(おわり)
[加除訂正]
2009/12/21 転換ミス訂正
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