中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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ノルウェー紀行;第3日目(トレッキング第1日目)(1);ベッセゲン尾根

2013年09月05日 07時43分18秒 | ノルウェー;カルホビッケン登頂

                              <最初の岩場を通過する>

ノルウェー紀行;第3日目(トレッキング第1日目)(1);ベッセゲン尾根
           (アルパインツアー)

        2013年8月19日(月)~8月30日(金)

第3日目;2013年8月20日(月) トレッキング第1日目 晴

<ルート地図> 

■全体図
(イェンデスハイム→メムルブー)


■拡大図(1);
イェンデスハイム→鞍部


<プロフィールマップ>



<イェンデスハイムの朝>

■体調が良くない
 私は昔から時差に弱い.昨夜も,夜中に3回もトイレに立つ.平素は夜寝てから朝起きるまで1回もトイレに行かないのに…どうしたことだろう.
 5時40分頃,起床する.相変わらず,どうも血圧が高めである.後頭部から首の付け根辺りが凝っていて,首を回すとゴリゴリと音がする.
 また,トイレに立つ.幸いなことに通じは正常のようである.トイレの窓から外を眺める.もう,辺りはすっかり明るくなっている.もう明るくなっているとはいえ,まだ,朝は早いのに.イェンデ湖畔で釣をしている人が居る.
 一寸,外に出てみる.
 寒いが,晴れている.遠くの雲が朝日を浴びて,茜色に輝いている.俗に朝焼けは雨というが,今日の天気は大丈夫だろうか.

<早朝のイェンデス湖>

■荷物の仕分け
 持参した荷物を,5日間のトレッキングで使用するものと,それ以外のもに仕分ける.トレッキングでは使わないものは全部大型バッグに入れて,トレッキング最終日に宿泊するスピターストゥーレン小屋に直送して貰う.
 トレッキングに使用するものは,さらに2種類に小分けする.着替えなど,今日の行動中に使用しないものは小さな袋に入れて,船便で今日の宿泊地,メムルブー小屋に送って貰う.そして,今日の行動中に必要なものだけをリュックに入れて背負うという仕組みである.
 大型バッグは,宿泊した建物入口近くの広間にバゲージダウン.

■ロビーへ
 7時頃,そろそろ本館の食堂へ行こうと思う.昨夜,使い終えたシーツ,枕カバーなどを抱えて,本館に向かう.もう,ツアーリーダーが本館に来ていて,いろいろと私たちに応対してくれる.大忙しである.
 朝食が始まるまで,少し間があるので,ロビーに向かう.もう大半のメンバーが談話室に集まっている.ここが本棟に山小屋なのかと疑うほど立派な応接セットが置かれている.女性群が賑やかに雑談をしている.

<山小屋の談話室>

■朝食
 7時30分頃から朝食.バイキング方式である.ここで朝食だけでなく,昼食の分も取って,自分でランチボックスを作るという方式である.
 朝食はともかく,昼食の量をどの程度にするか,何を昼食にするかで,少々戸惑うが,まあ,適当に色々な食材を取り分ける.

<バイキング方式の朝食>

朝食はこんなところか
 とにかく,先に朝食を済ませる.
 昨日の夕食は少々カロリーオーバーなような気がしたので,朝食は,まあ,こんな所だろうと思って写真のようなメニューにする.
 オレンジジュースと林檎の丸かじりで,何となく気分がスッキリする.2枚のパンにソーセージやチーズを挟んで食べるが,パンがバサバサしていて食べにくい.パン2枚は少々多すぎたかもしれない.キュウリやトマトは新鮮でなかなか美味しい.

<朝食>

■自己流のランチボックス
 パン4枚を使って,そこらにある食材を適当に挟んでサンドイッチを作る.それにオレンジ,ゆで卵などをひとまとめにして,備え付けの防水紙で包む.さらに,昨日,ツアーリーダーから支給されたポリエチレンの袋に入れれば,即席のランチボックスができあがりである.
 “何だか勝手が良く分からないが,こんなところで十分だろう…”
と多寡をくくる.
 朝食を終えて,ランチボックスをリュックに詰め込む.
 リュックは随分と持参するものを厳選して少なくしたつもりだが.それでも,水を1.5リットルほど入れると,結構な重さになっている.でも,多分,7キログラム以内には収まっていると思う.

<自己流のランチボックス>

<トレッキング開始>

■男性群は何となく後ろだ
 8時30分,本館前に集合する.
 ツアーリーダーの音頭で,出発前のストレッチを行う.
 8時40分,いよいよトレッキング開始である.
 「足の弱い人は,前に来て下さい…」
とツアーリーダーが指図するが,まだ,お互いの脚力が分からないので,誰が強くて,誰が弱いのか分からない.
 こんなときは,どうしても女性優位,というよりは多勢に無勢で,何となく男性群が後ろになってしまう.何となくふてくされた感じで,男性群6人は最後になる.
 先頭は現地ガイドのオラさんである.そして中間に若手ツアーリーダーのKYさんが入る.そして一番後ろは,ツアーリーダーのIBさん.私は何となく男性群の先頭になる.
 そうそう…,夫婦で参加された旦那さんは,奥さんとピッタリで行動されるようなので,女性群の中に混じっている.だから,最後尾のグウタラ男性群は5人である.
 歩き始めると,後ろから悪魔の囁きが聞こえる.
 「長丁場だから,ユックリ歩きましょうよ…」

<女性群を先頭にトレッキング開始>

■出だしはユックリと…
 あまり体調が良くない私にとって,列の後ろからの悪魔の囁きは大変有り難い.自分の体調を注意深くチェックしながら,初めは,ごくユックリの速度で歩き始める.
 今日のコースは歩き始めから,かなり急勾配である.男性群の囁きもあってユックリ登れるのは大変有り難い.でも,ゆっくりとは言いながらも350メートル/時位の速度で歩いているので,決して遅いというわけでもないと自分では思っている.
 始めチョロチョロの歩き出しだったので,10~20分と歩く内に,平素の塔ノ岳登りと同じ様な感じになってくる.
 “これならば,今日1日は大丈夫だな…”
と確信する.
 その間,出だしの暫くの間は.私と私の前の方の間隔がどうしても,5メートル,10メートルと広がってしまう.渡しの心情としては,この程度の開きなら,その気になれば直ぐに詰められるので,大して気に留めていなかったが,列の真ん中にいるKYさんには,私がへばっていると思えたのかもしれない.
 9時03分,衣服調整のために5分ほど休憩を取る.

<見晴の良いところで衣服調整>

■FHさん,先頭に来て下さい…
 小休止を終えて,再び歩き出す.KYさんが私の所に来て,
 「どうぞ,先頭に来て下さい…」
という.
 「いえ…,別に…,疲れていませんので,後ろで良いですよ…」
 「でも,前に来て,自分の速度で歩いて下さい」
 「いえ,男連中で『初めはユックリ歩きましょう』と言うことだったんで…」
と私は懸命に言い訳をするが,
 「まあ,そう言わずに先頭へどうぞ…他の人のことは構わずに,ご自分の速度で歩いて下さい」
 多分,今回の参加者の中で私が最高年齢である.そんなことも気遣ってのご配慮である.有り難いことだが,本棟は私はガンガン歩けるということを示して,早くツアーリーダーに安心してもらうことも必要かと思う.
 「本当に自分の速度で歩いて良いですか…」
と私は念を押して,列の先頭に入る.
 私は生来天の邪鬼でへそ曲がりである.心の中で,“エヘヘ…”とほくそ笑みながら,何時も大倉尾根経由で塔ノ岳へ登るときの速度で歩き始める.すぐに,私の後ろの方との距離が開き始める.別に自慢する気はないが,週2回のペースで塔ノ岳に登っているので,怖いところは別として,普通の登山道なら,一般の方よりは.多少は速く登れる.もっとも塔ノ岳常連の中では,決して速い方ではないが…
 後ろの方から,
 「速すぎます…」
という声が上がる.
 私の天の邪鬼も,この辺で引っ込めなければならない.私は先頭を2番目を歩く女性に譲ってから,KYさんに,
 「私は十分に歩けますので,あまり心配しないで下さい…」
とお願いする.
 “それにしても,早く信頼を回復しなければ…”
 ついでに,暫くの間,KYさんと雑談しながら歩く.雑談で,KYさんが某難関大学ワンゲル部出身だと分かる.雑談しながら素晴らしい青年だなと思う.私のことを気遣ってくれたことに深く感謝する次第である.
 進行方向左手に,イエンデ湖が見下ろせる.素晴らしい眺望である.

<イェンデ湖を見下ろす>

■最初の分岐
 9時24分,ようやく最初の分岐に到着する.地図で確かめると,まだ,まだ,歩き出して序の口.標高は漸く1,260メートル付近である.まだ,まだ上り勾配の山道が続くし,先はまだ長い.
 この分岐辺りから進路が少し北西の向きに変わる.

<最初の分岐>

滝が見え始める
 私たちは次第に高度を上げていく.
 暫くの間は,太った尾根(ヤセ尾根の反対の意味)の南西側の斜面沿いのトラバース道を進む,緩やかな上り勾配の歩き易い道である.辺りには,もう樹木はない.岩礫が退席した高源が続く.草木のことはからっきし分からない私には,とても説明のしようがないが.苔のような草が僅かにへばり付くように生えている.
 9時50分頃,前方に横たわる断崖がだんだんと近付いてくる.目の前に,岩を削る滝が見え出す,小さいながらなかなか迫力のある滝である.私たちは滝の手前で右方向に進路を変えて,ほぼ真北の方向に歩き続ける.この辺りから幾分きつい上り勾配になる.

<前方に滝が見える>

<突然の岩登り>

いきなり岩場になる
 9時58分頃,いきなり岩場に突き当たる.
 特に難易度が高い岩場というわけではないが,これまでハイキング気分で歩いてきたので,
 “ありゃりゃ~っ…岩場だ!”
とビックリする.丹沢の大倉尾根や表尾根では,お目に掛かれない本格的な岩場である.
 私は高い所が大嫌いだが,この程度の岩場なら,高度感もない.返って変化があって面白いなと思う.
 勿論,全員,何の問題もなく通過する.

<予期しない岩場に出会ってビックリする>

岩稜を行く
 10時21分,岩場を通り抜けると,幅が広い(つまり太った)岩稜にでる.ここから暫くの間はなだらかな稜線歩行が続く.
 前方に見えている高い所を眺めながら,どなたかが,
 「あそこが,今日のコースの最高地点かな…」
という.すると,他の人が,
 「いや,いや,…まだまだ,最高地点は,もっとずっと先ですよ…」
と言っている.
 私も,まだ,まだ,ずっと先という意見に賛成である.

<広い岩稜尾根を行く>

■“ありゃ~っ…”また岩登りだ
 10時30分頃,またもや予期しない岩登りになる.
 私は事前に地形図を良く眺めていたが,地形図だけでは,どこに岩場があるかなかなか分からない.
 トレッキングと言えば一般のハイキングと大差ないと思い込んでいた私は,頻繁に現れる岩稜の登り下りの多さに驚かされる.
 とにかく,参加者全員が何の問題もなく,岩場を通過する.

<また岩場だ>

展望を楽しみながら休憩
 10時35分,岩場を登りきった所で,今日2回目の休憩を取る.
 手許の温度計では,気温は10℃.冷たい風が吹いている.少し立ち止まっていると,寒くなる.リーダーが,
 「何か羽織って,体温が失われるのを防いで下さい」
と注意している.
 前方には素晴らしい展望が開けている.実に良い眺めである.

<展望の良い所で休憩>

<絶景を楽しむ>

■高原歩き
 休憩を終えて,10時45分,再び歩き出す.
 やがて,広々とした高原の真っ直中を歩く.時間に余裕があれば,ノンビリと歩いてみたいなと思うほど,長閑な道である.
 遙か向こうにすそ野がなだらかな山が見えている.後ろの方から,
 「あそこが一番高いところかな…」
 「」いや,いや,未だ先だと思うよ」
と言っているのが聞こえてくる.

<なだらかな尾根道が続く>

素晴らしい眺望
 11時15分,進行方向左手前方に湖が見下ろせる場所に到着する,前方には残雪の山脈が見えている.素晴らしい展望を楽しみながらユックリと歩き続ける.
 今朝,歩き始めてから,すでに3時間ほど経過している.丹沢の大倉尾根に例えるならば,大倉を歩き出してから,もう十分に塔ノ岳に到着しているだけの時間を歩いていることになる.いくら時差で調子が出ない私でも,3時間程度歩いていれば,それなりの順応ができる.
 “これからも,今の歩行速度程度で歩くのなら,連日歩き続けても体力的には問題なさそうだな…”
と,何となく確信し始める.ただ,高度感のあるところや,岩場は苦手だが…



<絶景を堪能しながらノンビリ歩く>

■賽の河原のような平原を行く
 その後も,1ピッチ約50分,休憩10分のペースを正確に守りながら歩き続ける.
 11時46分,右手前方の尾根伝いに高い山が見え始める.山頂には雲が掛かっている.さらに残雪も見えている.周囲から,
 「ありゃ~っ!…まさか! あんな所を登るのかな.こりゃ大変だな」
と言っている声が聞こえる.
 地図で確かめると,右手に見えている山はBesshoeという山.私たちは,この山には登らずに,向かって左手の低いところにある尾根道を辿るようである.
 「いや…まさか! もっと左手の低いところを通るんでしょう」
 “良かった!!”

<賽の河原のような平原を行く>

最高地点を通過する
 11時46分,大きなケルンに到着する.ここが,多分,今日のコースの最高地点(標高1743メートル)だろうと勝手に想像する(間違っているかも知れない).
 手持ちの温度計によると,気温は摂氏10℃.冷たい風が吹かなければ,トレッキングに最適な気温である.

<最高地点を通過>

<いよいよ核心部;岩稜地帯>

■イェンデ湖を見下ろす
 12時20分,眼下にイェンデ湖を見下ろす地点に到着する.
 ここで,絶景を眺めながら,10分間休憩.その間にソソクサと昼食をつまみ食いする.気温はそれほど低くはないが,冷たい風が少し吹いているので,ジッとしているとすぐに寒くなる.
 ツアーリーダーが,
 「体温を奪われないように,何か羽織って下さい…」
と子どもを諭すように注意する.

<イェンデ湖を眺めながら休憩>

さあ…いよいよヤセ尾根岩稜大下りだ
 休憩を終えて,いよいよ本日のコースの核心部,ヤセ尾根の大下りに差し掛かる.
 ツアーリーダーが,皆に注意をする.
 「ストックは仕舞って下さい.紐など引っかかりそうなものは全部片付けて下さい.ポーチもリュックの中に入れてしまいましょう.事故の原因のかなりの部分は,ほんの一寸したことが多いです…」
 噛んで含めるようなツアーリーダーの注意に,私も,
 “なるほど! ツアーリーダーの言うと通りだ…!”
と共感する.

<いよいよヤセ尾根の大下り>

■高さの違う二つの湖
 ヤセ尾根の大下りの起点に立つと,眼下に二つの湖が見える.それぞれの標高にかなりの違いがあるのが面白い.
 左下に見えているのが,お馴染みのイェンデ湖(標高984メートル),右に見えるのがベス湖(標高約1,360メートル)である.二つの湖の標高差は約370メートルである.
 私たちは,これから,この二つの湖に挟まれたヤセ尾根を一気に下る.

<イェンデ湖とベス湖を見下ろす>

ヤセ尾根岩稜大下りを一気に降りる
 いよいよ急な下り坂の岩稜に差し掛かる.
 下り始めは,まだそれほど急傾斜ではないので,余裕のある内に写真を撮っておく.
 この写真中央の少し前の方に青いリュックを背負った人の後ろ姿が小さく写っているが,その先が大下りになっていて,写真には写らない.
 大下りは,丁度,中央アルプスの宝剣のような感じである.そう難しい岩場ではないが,高度感があるので結構緊張する.私も足許に注意をしながら無我夢中で下り続ける.
 私は心の中で,
 “トレッキングというから,ハイキングに毛が生えた程度と思っていたのに…これでは本格的な登山だな…”
とブツブツ.でも,こんなのイヤだと言っているわけではない.予想と違っていたというだけのことである.

<いよいよヤセ尾根の大下りが始まる>

大下りを振り返る
 大下りの核心部を過ぎると,勾配が幾分緩やかになる.
 13時24分,緩やかになったところでひと息入れる.大下りの核心部を振り返って見上げる.私たち以外にも沢山の登山者が登り降りしている.なかなか壮観な風景である.
 “なかなか壮観な眺めだな.”
 私は一人悦に入っている.

<核心部はヤセ尾根の岩稜下り>

■“ホッ”とひと息一休み
 14時03分,岩稜大下りを終えて,鞍部に到着する.
 ここで,10分ほど休憩を取る.気温は12℃.少し暖かくなっているが,冷たい風が吹いている.
 何はともあれ,緊張の岩稜大下りが無事終わったので,何となくホッとした気分である.下っている最中は緊張しっぱなしだったが,終わってみると,面白かったなと思えるようになるから不思議である.
 でも,油断は禁物.ここから先,岩稜の登り返しがある.さらに,今日のコースの終わりの方には,クサリ場の下りが何カ所かあると聞いている.
 トレッキングとは言いながら,結構,本格的な山登りだな”
というのが,私の偽りのない感想である.

<岩稜大下りを終えて一休み>
                                      (つづく)

前の記事
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後の記事
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目次と索引
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