中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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丹沢:雪の塔ノ岳へ長靴で登る

2008年01月29日 14時17分12秒 | 丹沢の山旅


                      <堀山の家付近の霜柱>

            丹沢:雪の塔ノ岳へ長靴で登る
               (単独山行)
             2008年1月28日(月)

■今日がチャンス

 毎度,丹沢の記事となると,天気予報への愚痴から始まってしまうが,予報では,今日一日は「晴」というご託宣であった。
 例により,朝4時にお天気の具合を眺める。起床した途端に,予報では猛烈に寒い筈だったが,暖房なしでも,寒さがあまり苦にならないほど暖かい。明日,1月29日の予報は雨または雪。それならば,今日が登山の絶好のチャンスに違いない。
 そこで,何時ものように,大船6時04分発静岡行の電車に乗って,塔ノ岳を目指す。

■長靴で登るぞ
 今回は,長靴で登ろうと思っている。
 これまで,尊仏山荘を管理している皆さん全員が,塔ノ岳を長靴で上り下りしているのを見て,何時かは自分も長靴で登ってみたいと思っていた。前回(1月25日),塔ノ岳に登ったときに,尊仏山荘のHさんに伺ったところ,釣り用の長靴で十分上り下りすることができるし,4本爪のアイゼンも使えるとのことであった。
 私は,昨年夏,パプアニューギニアのウイルヘルム山に登頂したときに,アルパインツアー社のガイドさんの助言を得て,渓流釣り用の長靴を使ったことがある。あのときも泥濘の道を標高差1,000メートル以上も,長靴で上り下りしたことを思い出した。ただ,あのとき購入した長靴は,3シーズン用なので,厳冬期の丹沢で,冷たくないかが,些か気になる。
 そういえば,私は寒冷地である信州小諸で幼少時代を過ごしていた。あの頃,零下10℃を下回る凍てついた坂道を,薄い足袋を履いたまま,ゴム長靴や下駄で歩いていたことを思い出した。あの頃の長靴は,裏地など全くなく,薄いゴムだけで作られていた。それでも寒いとか冷たいとか感じた記憶は殆どない。
 そこで,今回は意を決して,家からゴム長を履いて,出掛けることにした。途中で足が冷たかったり,上手く歩けないときは,そこから引き返す積もりである。

    <今回使った長靴と軽アイゼン>       <靴底の比較:左は軽登山靴ビブラム,右は長靴>

■長靴の履き心地
 今日の渋沢からの2番バスには,登山客はほんの3~4人しか乗っていない。天気予報が晴なのに,どうしてこんなに登山者が少ないのか良く分からない。
 大倉バス停で,型通りのストレッチをする。私から少し離れたところで,中年の女性が同じようにストレッチをしている。それとなく見ていると,この女性のストレッチの順序が,サンダーウエスト氏から教わった順序と全く同じである。この女性,ひょっとすると,山旅スクールの生徒かもしれないなと思った。でも,今日はなるべく1人だけで静かに登りたい。そう思って,この女性に声を掛けることはしなかった。
 7時39分に大倉を歩き出す。
 路面が乾いていて歩きやすい。軽登山靴に比較して,長靴は大分軽いので,足への負担は少ないかなと思う。反面,足の裏がグニャグニャしている感じがして,多少,心許ない印象を受ける。
 見晴茶屋付近までの登山道は,良く乾いていて,とても歩きやすい。天気予報では晴の筈だが,上空はどんよりとした雲で覆われている。日光は当たらないが,風はなく,それ程寒くはない。久々の1人旅なので,自分勝手な速度で登り続ける。その内に,今日の自分の体調は,まあまあのようだと判断する。

                <見晴茶屋から少し上のモミジ道>
         ※少し霜柱が見えるが,とても気持ちよく歩ける場所である。

■凍結した山道
 8時15分に見晴山荘を通過する。さすがに厳冬期だけあって,茶屋から先の急な登り階段を過ぎると,やがて凍り付いたまま,至る所に霜柱が立っている日陰の道に差し掛かる。今日は登山者が少ないために,私の前後には全く登山者の姿はない。私はマイペースで登り続ける。
 長靴で登っていると,靴底が柔らかいために,地面の感触が直接自分の足に伝わってくるのが新鮮に感じる。8時28分に一本松を通過する。その先の石を敷き詰めた登り坂は,滑りやすくて歩きにくいが,長靴で歩くと,靴底が石の形に曲がって接触面積が増えるためか,全く滑らずに歩ける。これには驚いてしまう。
 堀山辺りからは,完全に凍結した冬道になる。日の当たるところは,日中溶けた泥道が凍結している。また,日陰の部分は踏み固められた残雪が硬い氷に変わっていて,とても滑りやすい。長靴の方が地面の感触が良く分かるので,歩きやすいが,地面の変化が,絶えず足の裏に響いてくる。このような状態で,長時間歩いたときに,足の裏にどのような影響を与えるかが不安になる。長靴で,一体,何時間歩けるのだろうか。

                  <まだ雪が残る萱場平>

■尊仏山荘のオーナー
 8時58分に堀山の家を通過する。いよいよ急坂の核心部を登る。路面の状態は,先日(1月25日)に比較して,残雪は幾分少なくなったものの,依然として根雪が凍結したままである。私は登山の素人だが,平素頻繁に山歩きをしていない人に比較すれば,雪道も,かなり歩き込んでいる。従って,私自身は,今日程度の雪道なら,軽アイゼンなしでも,余り苦にならずに登れる。しかし,平素余り雪道を歩いていない人は,堀山の下り坂辺りから,軽アイゼンを装着した方が,無難のように思える。
 9時14分に戸沢分岐を通過する。その上の萱場平は,まだ,完全に雪で覆われている。とはいえ,1月25日に訪れたときに比較して,残雪の量は大分少なくなっている。その先の南向きの斜面は,雪のないところと,あるところが交互に現れる。ただ,9時過ぎの時間であれば,泥道が,まだ凍結したままなので,返って歩きやすいといえよう。
 私が足元ばかり見て,考え事をしながら,ノソノソと登っていると,
 「やあ・・今日は遂に長靴ですか。可愛い靴ですね・・・」
と私に話しかける人がいる。見上げると,尊仏山荘のオーナー,Hさんである。
 「やあ,今日は。これから山荘にお邪魔します・・・長靴,なかなか良いですね。ただ,今日以上に雪が深いときには,保温に問題がありそうですね・・」
と返事をする。
 渓流釣り用の長靴には,私が履いているような3シーズン用のものと,冬用のものがある。3シーズン用の長靴は,今日ぐらいの積雪の所なら問題ないが,もっと深い雪の時や,気温がもっと下がったときは,多分,足が冷たくなるのではないかと思う。この辺りのことは実際に,そのような場面に遭遇してみないと良く分からない。

            <花立山荘-金冷し間の尾根から富士山を望む>

■塔ノ岳山頂
 9時35分,花立山荘を通過する。ここから富士山が良く見えるはずだが,今日は雲に遮られて余りよく見えない。
 花立山荘からゆるやかな坂を登る。この辺りから完全な雪道になる。露岩帯に出る頃,富士山が見え出す。ただ富士山の上空には,モクモクとした雲が幾重にも重なっていて,日差しは殆どない。遠く南アルプスの山々も,見えているような,見えないような,雲か山か曖昧な風景である。
 9時51分に金冷しを通過する。この辺りから先はかなり深い残雪があって,どこが階段やら木道やらが良く分からない。歩く度に雪がギシギシと音を立てる。
 金冷しを過ぎてから気温が下がっているようである。マイペースで登っているためもあるが,歩いていても,汗をかかないだけでなく,手や肩の辺りが寒くなってくる。やがて,山頂直下の板造り長い階段になる。階段一面に霜がついていて,一段ずつ登るたびに,凍り付いた階段がギシギシと軋んだ音を立てる。
 10時04分,残雪で真っ白な塔ノ岳山頂に到着する。大倉から山頂までの所要時間は,2時間25分。2時間20分を切りたかったが,この道路状態では,まあ,こんな所かと,無理矢理,自分を納得させる。
 さすがに寒いためか,山頂で休憩を取っている人は誰も居ない。私も大急ぎで周辺の写真を撮ってから,尊仏山荘に飛び込む。

                    <雪の尊仏山荘>
        ※天気予報は「晴」。実際には,終日,どんよりとした曇り空だった。

■営業部長はお休み
 今日の尊仏山荘の小屋番は,Oさんである。先客はご常連と思われる中年女性1人。山荘の温度計を見ると,10時過ぎに山頂の気温は氷点下6℃。随分と寒い。
 私は例によってお茶を所望する。
 お茶を飲みながら,先客の女性とOさんの会話を,何となく聞いている。この女性は百名山登頂を目指しているらしい。どうやら後幾つかで全山登頂できるという。私はこの手の会話は苦手である。何故ならば,ガイドの後をただ付いて登っただけで,登山したといえるかが疑問である。自らが計画し,調査して,地形図とコンパスを使って登ったのでなければ,登山ではなく,連れて行ってもらったに過ぎないのではないか。こんな疑問が頭をもたげてくる。
 その内に,Oさんが,私に,
 「今日は,2番目のバスに何人乗っていましたか・・?」
と聞く。これが切っ掛けになって,話が色々と飛ぶ。私が,途中で,Hさんに会ったことを報告する。すると,
 「Hさん,今日は××まで行かなければならないので,愚痴言っていたでしょう・・」
 ややあって,
 「所で,今日,営業部長は欠勤ですか?」
と私がOさんに聞く。
 「コタツに入ったまま,でてきませんよ」
営業部長に会えないのは寂しいが,コタツで良い気分になっているのを呼び出すのも,気の毒なので,今日は会わずに下山しようと決める。
 そのとき,ドヤドヤと数名の登山者が山荘に入ってくる。どうやら和歌山からわざわざ丹沢に来た人達である。聞き慣れない関西弁で乗りまくっている。私はそろそろ引き揚げる潮時かなと思って,席から立つ。すると,このグループの一人が,
 「ご主人,ご主人・・・」
と誰かを呼んでいる。気にもとめずに居ると,どうやら私に話しかけているようである。
 気が付いた私が振り返ると,
 「その長靴。どこで買いなさったですか?」
と聞いてくる。
 「これですか? これ渓流釣り用の長靴です。釣り道具屋に行くと売ってますよ・・」
 「冷たくないですか?」
 「今,私が履いているのは3シーズン用です。内側に薄いフェルトのようなものが張ってあります。それに冬用の厚い靴下を履いているので,まあ,この程度の雪なら問題ないですが,もう少し深い雪だと,冷たく感じるかもしれませんね・・・」
 そんなやり取りをしていると,もう一人の小屋番,X氏が,自分の長靴を持ってくる。
 「こういう長靴ならば冷たくないですよ・・」
なるほど,Xさんの長靴は,内側に分厚い毛布のようなものが貼り付けてある。

■軽アイゼンの使い勝手
 10時36分に尊仏山荘にさよならして,下山を開始する。テストのために,長靴に4本爪の軽アイゼンを取り付けてみる。確かに4本爪のアイゼンを,長靴に取り付けることは可能だが,靴底が柔らかいので,足の裏がどうも落ち着かない。やっぱり,軽登山靴よりは,歩き勝手は,かなり悪い。
 ポツ,ポツと登ってくる登山者とすれ違いながら,下山し続けて,11時02分に花立山荘を通過する。もう軽アイゼンは要らないが,もう少し辛抱して,軽アイゼンを装着したまま,下山してみようと思う。日の当たるところは,場所によって,泥道になっているが,日陰はまだ凍結したままである。下るに連れて,軽アイゼンがあったほうが歩きやすい所と,歩きにくい所が,頻繁に入れ替わって現れる。
 11時35分,堀山の家に到着する。ここで軽アイゼンを取り外す。ところが,堀山の家を過ぎた直後のトラバース道が,日陰のために凍結していて,極めて滑りやすい。結果的には一番,軽アイゼンを使いたいところで,逆に外してしまったことになる。

■大倉バス停に戻る

 その後,12時52分のバスに乗車することを考えて,余り早く降りないように,また,乗り遅れないように注意しながら下山をし続ける。そして,12時47分にバス停大倉に到着する。
 バス停のトイレ前の水道で長靴に付いた泥を洗い流す。革製の軽登山靴に比較して,長靴の方が,簡単に泥をおとすことができるし,ズボンの裾を泥だらけにしないで済む。長靴って,案外,良いものだなと実感する。ただ,往復5時間程度で,しかも雪の量が少なく,峻険な岩場がない大倉尾根を歩いているときだけの感想なので,このことが全ての山道に通用するとは,毛頭,思っていない。
 ただ,もう少し,何回かは,塔ノ岳を長靴で登攀してみたいと思う。

[ラップタイム]

 7:39  大倉歩き出し(290m)
 7:44  登山口(325m)
 7:48  克童窯(350m)
 8:54  丹沢ベース(390m)
 8:00  観音茶屋(465m)
 8:03  高原の家分岐(500m)
 8:12  雑事場ノ平(595m)
 8:15  見晴茶屋(605m)
 8:28  一本松(745m)
 8:42  駒止茶屋(855m)
 8:52  堀山(910m)
 8:58  堀山の家(925m)
 9:14  戸沢分岐(1075m)
  9:16  萱場平(1090m)
  9:35  花立山荘(1260m)
  9:51  金冷し(1330m)
10:04  塔ノ岳山頂 着(1465m)
=================================
10:36  塔ノ岳山頂発(-6.0℃)
10:49  金冷し(1350m)
11:02  花立山荘(1285m)
11:19  萱場平(1115m)
11:21  戸沢分岐(1090m)
11:35  堀山の家(950m)
11:44  堀山(920m)
11:53  駒止茶屋(880m)
12:05  一本松(780m)
12:18  見晴茶屋(625m)
12:20  雑事場ノ平(610m)
12:27  高原の家分岐(535m)
12:31  観音茶屋(500m)
12:37  丹沢ベース(440m)
12:40  克董窯(395m)
12:43  登山口(360m)
12:47  大倉 着(310m)

■登攀・下降高度
 塔ノ岳山頂    1491(m)
 大倉        290
  (高度差    1201m)

■登攀所要時間
 大倉発      7:39
 塔ノ岳山頂着  10:04
  (所要時間2時間25分(2.42h)

■登攀速度

  1201(m)/2.42(h)=496.2(m/h)

■下降所要時間

 塔ノ岳山頂発  10:39
 大倉着     12:27
  (所要時間 2時間08分(2.13h))

■下降速度
  1201(m)/2.13(h)=563.8(m/h)
                              (おわり)



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2 コメント

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コメントありがとうございます (flower-hill_2005)
2008-01-30 07:59:35
mu-さん

たびたび私のブログにお運び頂きありがとうございます。

ご主人が,長靴で塔ノ岳へ登られると伺い,大変,心強く思っております。また,私は持っていませんが,お説の通り,ウインタースノーブーツもありかもしれませんね。

mu-さんと,金冷し辺りですれ違ったかどうか,覚えていませんが,あの日は登山者の数が,いつもより大分少ないなと思っていました。

今日(1/30)も絶好の登山日和ですが,所用があって行けず残念!
明日辺りに,もう一度,長靴でバカ尾根をトライしてみようかと思っています。

これからもよろしくお願い致します。
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長靴 (mu-)
2008-01-30 01:47:22
またこの日、お会いしてたんですネ☆
もしかして「金冷し」付近で すれ違ってましたか?

わたしの夫も 雨や雪になると長靴を履いています。
「4本爪のアイゼン」も付けられるし、歩きやすいそうです。
この日は、雪道に慣れている夫は、アイゼンなしで
平気で歩いていましたが、私は慣れてないので、下り
のときに 付けました(^^;) 日の当たらない箇所は 
けっこう凍結してましたネ。。

夫に 長靴にするようにススメられていますが、
それなら「ウィンターシューズ・スノーブーツ」
もありカナ?。。なんて 考えているところです♪
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