≪手を動かさねばっ!≫

日常で手を使うことや思ったこと。染織やお菓子作りがメインでしたが、病を得て休んでいます。最近は音楽ネタが多し。

矢野創 『星のかけらを採りにいく』

2012-12-13 16:59:48 | 本 (ネタバレ嫌い)
小惑星イトカワのサンプルを採取したはやぶさの開発・運用メンバーである矢野氏が、
宇宙塵の話や探査について述べた本。

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岩波ジュニア新書から出ているが、それにしては難しい内容だと思った。
しかし矢野氏が訴えたいこの本の本当のターゲットはジュニアなのだから、背伸びしても読んでもらいたいのだろう。


宇宙からおもに宇宙塵としてたくさんの物質が日々供給されている話は、へぇ!という感じだし、
それよりも、地球生物の起源を地球ではないところに求める考え方がこんなに絵空事ではなくなってきた、
というのが面白かった。
また、宇宙探査の意義、その国際的な競争、についても興味深く読むことができた。

物事を分かり易くするために身近なものでいいかえる表現や、引き合いに出す色々なことが、
ちょっとした息抜き、とまではいかなくとも、楽しく読めたし、
それらが、矢野氏の教養の深さを表している。

しかし、各章末にある矢野氏の生い立ちから今に至るまでの道筋の方が、
宇宙の話よりも身近に感じられて、面白く読めたのも事実である。
子供の頃から只者ではなかった、ということがよく分かった。

宇宙塵や探査についての説明が主ではあるが、話が進むにつれて、
矢野氏が未来や生き方についてどう考えるか、ということに力点が移っていく。
説得力もあり、あまりにもごもっともな意見で、
普段のわたしなら、ちょっとハスに構えてしまいたいような内容なのではあるが、
なぜだか、こんなわたしでも膝を正してちゃんとききたい、と思わされるのである。

すべての人がリーダーである必要はない。
というようなことを矢野氏も最後のほうで述べているし、実際わたしもそんなリーダーの器の人間ではないけれど、
そういうわたしのニッチもこの社会で自分で切り拓くべきなのだ、と
宇宙とは一見全く関係ないような納得を、この本で得られた。


そう読み易い本とは言い難いが、
たとえば寒い冬の満天の夜空の星を眺めて、心が澄み通るような、
日々のあちこち煩わされる心の雑音を鎮めて、本当に大事なことは何かすっと心に浮かんでくるような、
そういう心境を思いもかけず取り戻すことができるかもしれない、
という風に、おすすめできる本。
いえ、むしろタイトル通り、宇宙塵と小惑星探査、について知ることができる本なんですけどね。



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