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化学を教わったのも遠い昔、子どもたちが高校で教わってきた話を聞くにつけ自分の知識が相当錆び付いてあやふやだということを痛感させられている。それでまた教科書読み返すかというとそうはならないのだけれど、この本を手に取った。
教科書はかたくて取っつきにくそうだが、だからといって雑学オンリーの散漫な感じもイヤなんである。ワガママである。
またいつもいっているけれど、ノンフィクションはライターの書いたものと研究者の書いたものとでずいぶん違う、という持論がある。研究者のものは愛にあふれているがともすると話について行けなかったり文章が今一つだったりすることがあり、その一方でライターのものは興味をかき立てられるような話題を選んでいるものの下世話になったりその分野のキモに触れないで終わったりすることがある。
わたしとしては、愛のある研究者が読者を置いてきぼりにせず、素敵な文章で、その研究をしょって立っている自負でもって実際に研究されていないと分からない生の本を書いていただきたいんである。ほんとワガママですみません。
長い前振りはいいから、で、この本はどっちなのよ!?
と問えば、ライター本ですねえ。
しかし生半可なライターではなかった。相当そおうとう勉強されている。しかも現在の化学の研究者では知らないかもしれない 科学史 が強い。
化学もいきなり今のような分野になったわけではなく積み重ねなんである。そのときどきの大発見の経緯、研究者の駆け引き、社会情勢というものを教えてくれる。なんだか急に血の通った感じがしてくるんである。研究者の人間臭いところを読ませつつも、それで終始せず全体の流れを読ませてくれ、さらに化学の知識も深まる、という欲張りな内容である。
これは大した本である。
というわけで、内容が濃いので1回読んだだけでは消化不良なんであった。
またそのうち読み返したい。
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