≪手を動かさねばっ!≫

日常で手を使うことや思ったこと。染織やお菓子作りがメインでしたが、病を得て休んでいます。最近は音楽ネタが多し。

なだいなだ 『 TN君の伝記 』

2015-04-13 18:33:24 | 本 (ネタバレ嫌い)


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福音館文庫から出ているので、いちおう子供向けということなのだろう。


著者があえて伏字にしているTN君が何者なのか、ネタバレ嫌いのわたしがいきなり冒頭で明かすのは
何か変な気もするけれど、あえて明かす。
明かしても話を読む動機が減るとは思えないから。
中江兆民だ。
幕末から明治にかけて生きた人で、
フランスのジャン=ジャック・ルソーを日本へ紹介して自由民権運動の理論的指導者として活躍した人だそうだ。


元来わたしは伝記や大河ドラマが苦手である。
なぜかというと、どこまでが本当でどこまでがフィクションなのか、見分けがつきにくいからである。
そこら辺を考えながら読んで/鑑賞していると、今一つ話に入り込みにくいし、
話に入り込んだが最後うまくだまされてしまうような気がするからだ。
ストーリーを作るうえで加えられた嘘を見分けるのも難しければ、
むかしの資料の中に混じった誤りを見分けるのも難しい。
まあ、真実ばかりを求めても仕方がない、幅のある中で受けとるしかないのだろう。


と、多少引いて読む。

明治維新前から国会が開かれるに至る経緯、そして日清戦争。
時代の立役者たちが血の通った人物像で描かれて、読んでいて面白い。
そして全体を貫いているのは、
おかみ vs. 民衆   という対立軸だ。

「社会契約論」 という言葉を久々にきいた。
ああそうだったのか、
われわれは国家に己の権利を少し譲渡する代わりに国家がわれわれの僕となるのだったのか。
わすれていたかもしれない。

なにしろ最近よく思うことには、
安倍君は何を考えているのか? 何がしたいのか? 本当に戦争したいのか!?
ということばかり。
世の空気がどんどんきな臭くなってきている気がする昨今のタイミングで
自由民権の話を読むのは、心の痛むことだったのだ。

もしかして、TN君の時代からちっともよくなっていないのではないか?
と思わされてしまう。

しかしそれは誤りだとも思う。
なぜならこの本に書かれているTN君の思いはかなりのところ
太平洋戦争の時代を陸軍幼年学校で過ごしたなだ氏が書いたものだと思えるからだ。
若者のように、全か無か、と単純に切り捨てて考えるようなことは、最早しない。
無駄に絶望することはない。

インターネットで色々な情報を入手することができるようになったし、
自分からも発信することができるようにもなった。
もちろんそれらの対価はある。リスクもある。
それでも何かを発信するだけの価値がある、と思う。

勇気をもって声を上げなければいけないのだ。


と憂鬱に希望を持ちつつも、この本は終わりに向けてどんどん暗くなっていったのだ。
最近の世の空気になにがしかの変化や違和感を読み取る人は少なくないと思う。
このまま流されていっていいのだろうか? と。
そういう人にお勧めの本だ。




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