福井7人の工芸サムライ

福井県にある国指定7つの伝統的工芸品の職人やモノづくりや産地、福井にまつわる事がらをご紹介します。

鯖江メガネの材料セルロースアセテートの作り方

2019-07-24 22:21:36 | メガネの材料

プラスチック枠の多くを占める材料って知っていますか?

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私たちが普段使っているアクリルとかポリエステルとか
どこにでもあるプラスチックなんじゃないの?
実は原材料は綿花で自然由来樹脂なんです。
その名はセルロースアセテート
今回はそのメガネ材料であるセルロースアセテートについて書きたいと思います。
アセテートはもともと植物繊維から作られています。
「樹脂」と言っても、アセテートは科学繊維ではありません。
実は綿花と高純度パルプから作られた植物繊維なのです。

 原材料は本当に綿花とパルプなんです。 

 インドやアメリカなど海外製の綿花が主流です。
過去にユニクロのフリースが大流行したのご存知ですか?
その時はフリースも原材料は綿花なので材料不足に陥ったこともありました。

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綿花のワタの部分を粉砕 

綿花の綿の部分だけ取り出し
白い綿の部分を粉砕して粉状のパウダーにします。
白いところだけ使います。

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 透明なモチ?

透明なモチのような状態にするために
粉状のパウダーに薬品(可塑材)を3割ほど混ぜ
練りこみます。

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そしてモチ状になったモノに
色粉(顔料)を混ぜ練り込み着色します。


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着色して板状にしたものをツブツブ状に粉砕します。
そしてツブツブをランダムにお風呂にある浴槽のようなものに敷き詰め
蒸気を加えながらプレスして押し固めます
固めた塊をカンナのようなもので薄く鋤いて
乾燥させたら完成です。

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言葉より動画を見てもらった方がわかりやすいです。

セルロースアセテート製造動画

youtu.be

 
セルロースアセテートまとめ

人体、環境にやさしい

植物性の自然素材から作られているので肌に優しくアレルギーも少なく
そのため、肌に直接付けても温かみがあります。
また、植物系素材なので環境にもやさしい材料です。

色柄の組み合わせは無限大

ちりばめたり、寄木のように立体的に組み立てて作られる製造工程なので
色の組み合わせ、形状の組み合わせにより無限大の表現が可能

透きとおるような透明度

透明度が非常に高いので、綺麗に色をつけることができます。
他の石油系の樹脂、ナイロンやポリエステル、ペットボトルの素材などは濁りがあり綺麗な色が出にくい。
それら石油系の樹脂に比べると非常に透明度が高いため、鮮やかな色を表現することができます。

さまざまな形に加工しやすい

植物性なので木のように切削が簡単です。
また熱に弱く、60°の熱で変形をし始めるので曲げたりねじったりも比較的簡単にできます。

柔らかく靭やか
樹脂の中でも比較的に柔らかく靭やかなため、曲げても割れにくいです。
ご自身の顔に合わせたフィッティングが容易に行うことができます。

艶出しが容易
石油系のプラスチックに比べ透明度があり表面が研磨しやすい。
濡れたような独特なツヤもこの材料の特徴です。

若干の吸湿性がある
植物性の自然素材から作られているので水分を微量に吸う性質があります。
梅雨の時期、乾燥した冬の時期に合わせて職人も微妙に加工方法を変えます。

熱に弱く、変形しやすい
自然由来の素材なので熱に弱く、耐久性も他のプラスチックに比べ劣り自然変形もしてしまいます。
そのデメリットを活かしてメガネはカーブを付けられています。
レンズは矯正するだけでなく変形を抑える役目もしています。
テンプルには強度をもたすため骨となる金属製の芯が埋め込まれています。

手作業で手間がかかる上、乾燥に時間を有する
製品として使える乾燥までに1mm=約1週間必要で納期がかかります。
メガネはフロント6.0mm,テンプル4.0mmが使われる場合が多く2ヶ月ほど納期がかかる場合もあります。

 セル枠のほとんどに使われるセルロースアセテート

鯖江メガネ業界用語でアセチと呼ばれることが多いです。
繰り返しになりますが原材料は綿花で添付の工程を経て完成となります。
特徴は植物由来なので肌に優しく、独特な濡れたようなツヤ、鮮やかな発色などがあります。
デメリット植物由来ゆえ熱に弱く、経年変化し、傷つきやすく、アクリルの3倍ほど高いです。
石油系の樹脂が世の中のほとんどを占めるなかなぜこの歴史が古い原始的な樹脂が生き残っているのか。
それは、他の樹脂の追随を許さない色柄メガネには最適なのです。
製造もイタリアの職人の手作りで詳しくは動画をご覧下さい。

【詳しい製造動画・別バージョン】


IVI PRESENTS THE PROCESS, PART 2: MAZZUCCHELLI 1849



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日本でセルロイドを扱う会社「ダイセル」

2019-07-22 23:12:21 | メガネの材料

眼鏡にも使われるセルロイドを扱う会社知ってますか?

前回、世界初のプラスチックセルロイドの話をしました。

www.yumakumamoto.work

 

 
実は日本セルロイドを扱う会社があるのです。
今では淘汰されて日本で唯一残存するセルロイドを製造する会社といってもいいのではないでしょうか。
他にセルロイドを製造会社がありましたら教えてください。

添付の写真はメガネ材料のアセチの梱包材ですが
ダイセルクラフト→ダイセルファインケムと名前を変えました。

ダイセル今と昔

上は今はなきダイセルクラフト時代の梱包材。
下はダイセルファインケムと名前が変わった後の梱包材です

ダイセルファインケムはプラスチックの祖先であるセルロイドも製造しています。
イタリアにあるマツケリーという老舗の工場と並ぶ日本の誇るセルロースアセテートの老舗の工場です。 

眼鏡にも使われるセルロイドの原材料は?

セルロイドも原材料は綿花でダイナマイトにも含まれる
ニトログリセン(可燃性)を混ぜて作られています。
硝酸セルロースを主原料とするセルロイドは、発火性が強く、取扱いには十分な注意が必要ですが、ほかの繊維素系プラスチックにくらべて変形が少ないという特徴があります。現在もその自然な風合いから、メガネフレーム、理美容用のクシ、ギターピック、楽器の部品などに利用されています。

セルロイドの発火性を改良されたプラスチックです。 

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メガネ業界とセルロイドの関係は?

メガネは今も一部作っておりますが昔はほとんどがセルロイドで作られており、工場がよく火事になったと聞きます。
セルロイドに可燃性を抑えるために改良されたのがセルロースアセテート
なんです。
セルロイドはセルロースアセテートより固いのが特徴です。
酢酸セルロースを主原料とするセルロース・アセテート・プラスチックは、一般的にはアセテート樹脂と呼ばれ、世界の多くのメガネフレームに使用されています。
今でもメガネ業界ではセル枠(プラスチック枠の事)と言われますが 語源は昔主流だったセルロイド枠からきております。

 

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【ダイセルの詳しい説明】

www.daicel.com

めがね以外には主に下記の用途に使われてます。

  • 液晶光学フィルム
  • たばこ用フィルター
  • アセテート繊維
  • 写真フィルム

 

最後に

時代と共に変化していくプラスチック。
昔は自然由来の材料を使い、石油を使った樹脂に徐々とって代わられていきます。
モノの起源を調べたり、歴史を調べたりするのも面白いかもしれませんね。