福井7人の工芸サムライ

福井県にある国指定7つの伝統的工芸品の職人やモノづくりや産地、福井にまつわる事がらをご紹介します。

鯖江の金属メガネの作り方とは?

2019-07-30 21:59:54 | ブログ

鯖江の金属メガネについて書いてみました

9999.jpg
こちらメガネはは9999(フォーナインズ様)
特徴である逆Rヒンジを使ったメガネ。
ベータチタンのバネ性を利用しメガネへの衝撃を吸収し掛け心地を良くしている。

 
ベータチタンとはこちらを参照

www.yumakumamoto.work

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鯖江のチタンフレーム製造開発が一大産地の礎になった

部品を作る金型一つをとっても鯖江メガネ職人の手間、技術が必要です。
なぜなら部品を作る、加工する際もその時どきの材料の硬さ、粘度、湿度などで加工条件が微妙に変わるからです。

なぜチタン加工時に油をかける?

 チタンは粘りが強く、加工の際に刃物に削りカスが絡みます。
そして粘りが強いのが原因で加工熱を帯びやすいです。なので油をかけることで、削りカスを流し、加工熱を冷ましながら加工する必要があるのです。車でいうエンジンオイルのような意味合いでしょうか。

そして3mくらいあるチタンの長い棒 ある部品になります 

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材料の断面はこんな感じでして
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鯖江のメガネ業界用語でブロー智(蝶番)という部品になる前の異型線と言われる棒です。 
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ブロー智の工程
  • 金太郎アメみたいに棒を切断していきます
  • ネジ穴加工(鯖江メガネ業界用語でタップを切る)
  • バレル研磨
  • 検品(投射機で調べます)
  • 完成

鯖江のメガネは部品一個とってもも長い工程をかけて製品になります。
当社はこういう異型線も扱っています。
こんな異型線も製造可能ですよ。金型は高いですが・・
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鯖江で作られる針金のようなメタルメガネ

 


リム線

今はボリュームのあるメガネが流行っていますが鯖江に金属メガネが生まれた時代はシンプルな針金のような金属(以下リム線)を使ったメタルフレームが主流でした。

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写真にあるレンズのカタチをしたゲージと言われるものに隙間がないようにリム線を巻きつけます。その際にベンディングマシーンと言われる機械を使います。

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リム線は平面ではなくR(湾曲)をつけて曲げるので熟練した職人が巻かないと完成品になったときにレンズが、はまらなかったり、レンズに隙間ができたり、レンズカーブが合わなかったりします。
この針金のようなリム線(レンズをはめる溝付き針金)を作るのにも職人技が必要なのです。

鯖江のメガネ業界で使われるスエージングという加工技法

金属を叩いて伸ばす金属の密度を上げて強度を上げる製法です。

スエージング
棒材を金床の上で回転させながら工具を押し当てて,直径を縮めたり,勾配(こうばい)をつけたりもできます。

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鯖江のメガネでは部品加工に入る前に下処理みたいな位置づけで、
強度をもたしたり、線材のままプレスすると無駄な加工や無駄な材料が増えるのでコストを抑える方法です。

最近では 0.~mmと超微細な線材にも加工できるので
強度があり繊細な技術が必要な医療分野にも活用されています。

もちろん鯖江ミミカキの芯にもスエージングを使った部品を使い強度を上げてます。
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鯖江メガネの金属枠にメッキをつける工程

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「ん?メガネの枠になんか棒がささってますね??」
これは金属部品にメッキするときに使う補助棒です。目的はメッキを隙間なくつけるためです。
メッキはボチャンとドブメッキするんじゃなくて液体を化学反応させて専門的につけてるんです。メッキだけのために この棒を作って、棒受けも作って ロウ付けしてる。
すごい手間がかかってるね。。。でも 逆に言えば。。。
この行程を省けば大分コストダウンはできるよね!?

最後に。。

鯖江のメガネ産地では「あたりまえ」でも一般の方はそうじゃない時もあります。
少しでもメガネに興味を持って頂いた方に分かってもらえたらいいですね。


めがねのまち鯖江について調べてみた

2019-07-30 00:54:05 | ブログ

福井県にあるメガネのまち鯖江知ってますか?

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レッサーパンダもいる鯖江市民の憩いの場、西山公園

鯖江のデータ
  • 福井人口:769,300人 6年で-33,880人
  • 全国43位鯖江人口:2019年 69,332人 6年で+1,869人  
  • 福井県では第4位
  • めがね人:6人に1人がめがね産業に関わっているという
  • 特産物:眼鏡枠、漆器を含む製造業、染色団地があり繊維産業も盛ん

めがねのまちさばえ

 福井・鯖江のメガネは日本のメガネフレームの国内シェアは96%世界シェアでも約20%を鯖江市が占めていると言われています。その他の産業は意外だったのがマリンバの打楽器製造会社の拠点にもなっているそうです。

マリンバ

福井県は社長排出の割合が30年継続して1位なのです。


アパ社長
アパホテルの社長も福井出身です。
社長が多いと言われる福井県、先日私が書いたブログなぜ鯖江のメガネは分業制なのか?をたどっていくと納得です。

www.yumakumamoto.workメガネの製造シェア96%もある産地でしかも分業制なので必然と社長は多くなりますね。
約30年前の全盛期は生産が追いつかないくらい仕事があったと聞きます。そして初期設備投資が少なくて済むメガネ業界は他業種に比べて比較的楽に独立ができたと聞きます。そして、同業者のライバルが多いから、各企業は研究し切磋琢磨し、より良い物作りをして鯖江はメガネの製造工場として一大産地となったのです。


越前漆器

眼鏡以外には鯖江の名産である漆器も分業制です。
越前漆器の歴史は古く約1500年前が発祥と聞きます。

繊維

シェア約40%のポリエステル長繊維織物も分業制だと聞きます。
鯖江3大産業が全て分業なら社長も多いのは当然ですね。

ここからは鯖江のメガネ業界の豆知識

 鯖江のメガネ会社の会社名は 
~眼鏡、A眼鏡、B眼鏡、◯◯眼鏡  という会社様が多いです。
眼鏡は字画数が多いので~G、◯◯Gと略します。
ちょっとしたマメ知識でした。

鯖江のメガネも変換期?

従来の視力矯正のメガネの役割からPCメガネというカテゴリが生まれました。PCメガネの素晴らしい着眼点は目が良い人にも使えるメガネという分野に切り込んだことです。現代人がパソコン、スマホに触れる事が圧倒的に多くなったこと。
まさに優れたマーケティング上に成り立った商品だなと思います。

しかも時代は、、安ければ売れる時代も終わり、高くて良いものも売れない。
メガネも同様です。結局モノが飽和しており、物だけでは売れないのです。
【僕たちの活動や想い、協力して下さる方々の想い】それらに共感、または体験を商品に乗せメガネからカタチを変えて違う市場に羽ばたかせたい一心です。だからメガネも現場を知ってもらって、共感、体験をメガネに乗せれば盛り返せると信じています。


鯖江の眼鏡はなぜ分業制なのか

2019-07-28 18:28:47 | ブログ

1社で作ればいいのになぜ鯖江のメガネは分業制になっていったのか??

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 鯖江では当たり前の眼鏡の分業制
まず眼鏡を作るのに部品がたくさん必要です。
例えば写真を見るだけでも部品が多いですよね?
その上、部品1つ1つの行程が非常に多い。

ネジだけでも、切削、ネジ切り、ネジ山など。。

鯖江のメガネも車のように全自動ですればよいのではないか?

 鯖江のメガネ職人に話を聞いたところアセチ、チタン、メッキともその都度材料の強度、粘り、変形具合、表面が違うため人間の手で微調整が必要(職人技が必要)とのこと。

これらを検証すると
  • 1社で全ての工程を行うには多数の人間と設備が必要
  • 人材を育てるのに長年の月日が必要
  • それぞれの部品、工程で職人技が必要
  • 製造ラインを1本にすると1つの行程で問題が発生したら全体の納期が遅れる

イメージでいうとロボットなどのプラモデルを数人でパーツごとに組み立てて最後に合体させて完成という感じでしょうか。工程を分散させて鯖江のメガネはリスクヘッジしていたのですね。
逆にメガネは手のかかる行程が多いため人件費の安い海外品が安く作れる原因でもあります。アパレル業界と同じくメガネ業界も安価な海外製にシェアを奪われています。鯖江のメガネ業界も厳しい状況に立たされているのです。
鯖江の優っている点は職人技で海外では入社して数ヶ月の人間が作業していることが多いため品質の差がでてきます。ただし、その差も近年縮まりつつあります。 

めがねのまち鯖江市役所のHPより分業制についての記事を見つけました 

 メガネは「帳場(かや)」とよばれる各職人グループごとに眼鏡が作られていました。その帳場ごとに職人が競い、腕を磨くことで分業独立が進み現在のような一大産地が形成されたのです

なるほど。
この鯖江のメガネ業界に入った時の疑問を改めて検証しました。
福井県で生まれたメガネは1909年からと言われています。
100年前から理にかなった製造形態をとっていたのですね。
ちなみに鯖江のプラ眼鏡は100〜150位加工工程があると言われていますどれくらいの会社が関わっているか書いてみようと思います。

鯖江メガネのプラ枠に関わっている業者 

 

メガネのフロント・前枠
  1. 企画デザイン屋
  2. 材料屋
  3. 枠押さえ屋
  4. 枠スリ屋(枠削りの事)
  5. 丁番、ネジ屋
  6. 蝶製造屋(鼻盛り部分)
  7. レンズ屋
  8. 研磨屋(荒バフ)
  9. 型屋
  10. ここからはプラ枠メーカーがすることが多い
  11. ガラ入れ(バレル研磨)
  12. 最終手磨き
  13. メガネ組立
  14. 調子取り(歪み、ガタツキなどを直す)
  15. 検品 
  16. 袋詰め
メガネのテンプル・腕
  1. 材料屋
  2. テンプル製造屋
  3. 芯製造屋
  4. シルク版製造屋
  5. 型屋
  6. 押し棒製造屋
  7. ここからはプラ枠メーカーがすることが多い
  8. 最終手磨き
  9. メガネ組立
  10. シルク打ち
  11. 調子取り
  12. 検品

思いついただけでも結構ありました、抜けている会社が多数あると思います。。。
改めて書くとかなり鯖江のメガネの工程は多い。 
鯖江のメガネは各職人が切磋琢磨して世界で勝てる技術をつけてきたのですね。


【関連記事】
鯖江のメガネは板から作られています。

 

www.yumakumamoto.work

 そして鯖江のメガネ工具は手作りが多い

 

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メガネのまち鯖江で使われる資材について書いてみた

2019-07-28 13:31:50 | ブログ

鯖江のメガネ業界で使われる資材があります

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業界内で仕事をしやすいように、効率的にするために先人たちが日々改善してきました。
その中でメガネのパーツを運搬する時に使われる資材も改善されてきました。
今回は業界ならではの情報を書いてみます。
先に登場する鯖江の専門用語を書いておきます。

  • メガネのレンズが入る部分を前枠・フロント
  • メガネの耳にかかるパーツをテンプル・腕

と言います。

 

 

メガネのパーツを工場から工場へ運搬するのは基本車です。
社名が書かれたミニバンや軽バンが鯖江ではよく見られます。

メガネのテンプルを運ぶ箱

 まずはメガネの耳にかかるパーツ(テンプル・腕)を車などで運搬する際に
産地では必須の箱(発泡スチロール)があるのです。
プラスチックメガネのテンプルは天然素材由来の樹脂(プラスチック)なので
コスれるだけで傷がつくのです。非常にデリケートな素材なんです。


植物性プラスチックについて

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テンプル同士をビニール袋に詰めて運ぶだけでも擦り傷がついてしまうんです。
そこで登場するのがこの発泡スチロールの箱(業界用語でパレット)です。
これだとテンプル同士が接触せずに車の振動でも関係なく運搬できます。

DSC03899.jpg

この箱はズレずに積み重ねられるように工夫されていて、ご覧のように箱ズレしないように段差があります。

DSC03900.jpg

重ねるとこんな感じ

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1パレットで50本入ります。写真は鯖江ミミカキの新作です。

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鯖江ではこのパレットをバンの後ろに目いっぱい積んで走る車がたくさん見られます。

メガネのフロントを運ぶ箱


そしてメガネのレンズが入るパーツ(前枠・フロント)を運ぶケース。
鯖江では基本的にフロント、テンプルは別工程で進められます。そして最後にメガネ工場がフロントとテンプルをドッキング(組立)します。
理由は別工程で進めることで納期短縮を図ります。

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もう一度おさらい 

  • メガネのレンズが入る部分を〈前枠・フロント〉
  • メガネの耳にかかるパーツを〈テンプル・腕〉

このフロントを運ぶケースには傷つかないように、さらにクッション材も敷いてあります。

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テンプルケース同様に重ねてもズレない段差付き

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重ねるとこんな感じです。

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このように運搬する資材にも各所に工夫を施されています。
マメ情報ですがこのパレットの横にメガネ会社の名前が書いてあるのですが、いろんな名前が入り混ざっています。鯖江のメガネ会社さんは他社のパレットが混ざっても気にしないサ〜というおおらかな?気質です。

イタリアから鯖江にメガネ材料を送る箱


イタリアマツケリー社(植物由来のプラスチックを作っています)は箱もオシャレですね。

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ばばん!っと専用の箱にカッコいいロゴ
大きさは車の高さくらいあり意外に大きい!

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だいたい3点止めされてイタリアから送られます。

DSC03891.jpg

横から見るとこんな感じ

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最大50㎏くらいまでが発送される重量のMAXですね。50kgの材料を運ぶときは4点止めされて送られます。重い

中身は大判だったり

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細版がまとめて入っています。

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鯖江しか見れない情報を書いてみました。
鯖江に来たときは地元の人しか知らない情報も気にして見回してみると
お宝発見みたいで面白いかもですね。
ぜひメガネのまち鯖江へお越しください。


鯖江耳かきを一緒に開発していただいた社長が本を出版されました。

2019-07-27 22:48:57 | ブログ

デザイン会社側視点での鯖江耳かき開発事例

 

 

『小さな企業が生き残る』

会社の売り上げを5年で売り上げを12倍に増やした事例あり!これは私が所属していた会社の実例です。 

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 苦境に陥った中小企業を再生させてきた生き残ってきた人達の話。優れた技術を持ちながら、メーカーの海外移転や後継者不足などの影響で 危機に瀕している中小企業は少なくない。今、オリジナル商品と それを実現するデザインの力によって復活する中小企業が注目されている。 仕掛けているのは、デザイン会社を経営するセメントプロデュースデザイン代表、金谷勉。 金谷が手がけた成功事例を通して、中小企業が生き残るための方法を解説する。 

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■著者:金谷勉
■編集:花澤裕二(日経デザイン)
■構成:佐藤俊郎
■ブックデザイン:小口翔平(tobufune)
■発行:日経BP社
■価格:本体1,600円+税
■ 発刊:2017年12月15日
■ ISBN:978-4-8222-5757-6

この本はクリエイターの方のために書いた本ではありません。 

デザインを語った本でもありません。
ただ製造業と共にデザイン業はあったと思うのです。 
各地の製造側の方に他産地で苦境から乗り越えた方の熱意と行動力を知ってもらう事で、製造業界の盛り上がるきっかけになればなと思ってます。 
相談に来られた方を一人ずつ救っていくには時間が足りない。 
手術しなくても、薬を処方することで助かる方もいるかもしれない。 
そういう「薬」になればと思いできる限り事例と処方箋を書きました。
製造業が良くなればデザイン業界にもいい風が吹く
製造側とデザイン側のきちんとした関係作りはまだまだできると信じています。
そのために必要な新しい職種も生み出したい。そんな想いです。 
各地の奮闘の裏側も合わせて皆さんの質問と合わせてセッション出来ればと思ってます。 大阪の製造業の方々のご参加お待ちしてます!

金谷社長プロフィール


Kanaya_profile3_Photo金谷 勉 Tsutomu Kanaya
1971年大阪府生まれ。京都精華大学人文学部を卒業後、
企画制作会社、広告制作会社を経て、1999年にデザイン会社「セメントプロデュースデザイン」を大阪にて設立。
企業の広告デザインや商業施設のビジュアル、ユニクロ「企業コラボレーションTシャツ」コクヨの博覧会「コクヨハク」星野リゾートアメニティ開発などのディレクションなどに携わる傍ら、自社商品の開発・販売を行う。
2011年からは、全国各地の町工場や職人との協業プロジェクト「みんなの地域産業協業活動」を始め、500を超える工場や職人たちとの情報連携も進めている。
経営不振にあえぐ町工場や工房の立て直しに取り組む活動は、テレビ番組『ガイアの夜明け』(テレビ東京系列)や『NHK WORLD』(NHK)で取り上げられる。
各地の自治体からの勉強会や講演の依頼も多く、年間200日は地方を巡り、京都精華大学や金沢美術工芸大学でも講師を務める。
初めての著書「小さな企業が生き残る」日経BPより発売中。