金時山登山の後は仙石原にある箱根湿生花園に寄った。
ちょうど昼ごろで、比較的人出が途絶えたいい頃合いだった。
園からは仙石原のススキの原っぱが望める。やや見頃はこえてしまったのか。
この時期には、私の好きなアケボノソウが湿原に咲く。
アケボノソウはリンドウ科でセンブリの仲間
白い5弁の花弁には黄色い二つの蜜腺があり、多くの虫を呼ぶ。和名の曙草は
これを夜明けの星空に見立てたものだという。
きりりとした花弁に長い蕊が良く似合っている。花期は9-10月で、比較的湿った山地で見かける。
もう一つこの時期の湿原を彩る紫色の花がある。この花を初めて見たのは20年前、
岩手山を下山している折に寄った避難小屋だった。長い山行に疲れ果て小屋の畳に寝そべって
外を見た時、沼地に凛と咲くサワギキョウに一瞬で目を奪われてしまった。
サワギキョウはキキョウ科の花でミゾカクシの仲間。日本では北海道から九州まで
日当たりのよい山地の湿地に群生する。その後、尾瀬の湿原で何度も出会った。
同じ紫色の花が湿地に生えていた、エゾリンドウだ。
花名にエゾとは付くものの、北海道から近畿以北までの山地に広く分布している。
よく似たオヤマリンドウとは違って日が当たると花冠を開く。
10月初めの湿生花園では秋に咲く花をほとんど見ることができる。
ホトトギス
ピンク色のアザミはミヤコアザミ
キク科トウヒレン属の花で本州中部以南に分布する多年草。背丈は1m半にも達する。
本州の中部地方の浅間山付近に多いのでアサマフウロと名づけられた。
フウロソウの仲間の中では最も花色が濃い。
沼の畔に咲いていたヒヨドリバナ。よく似た花に秋の七草の一つフジバカマがある。
こちらは藤色で、現在では自生種を見かけることはほとんどできない。平安の昔からもてはやされた
フジバカマが野から姿を消したのに対して、より地味なヒヨドリバナは今でも山地でよく見かける。
この面白い形をした花はレイジンソウ。トリカブトの仲間で
明るい山地や草原でよく見かける。漢名は伶人草で花の形から名づけられた。
伶人とは舞楽の奏者が被る冠のことのようだ。私には
寄り集まったアヒルの仔の方がぴったりすると思うのだが……。
咲き始めたばかりのミカエリソウ。花の名の由来は人が見返るほど美しいからとか。
テンニンソウの仲間で、ソウ(草)の名はついているが木本に属する。
ここでしか見たことがない、タニジャコウソウ。図鑑では関東から九州にかけて
山地や谷間に自生するとあるが、野で出会えたことはない。対して
ただのジャコウソウは奥多摩の低山でも秋口に良く見かける。
葉の縁にある鋸歯からかおる芳香が名の由来。
イヌショウマは秋、奥多摩の山歩きではとてもよく見かける花。
キバナノアキギリは良く見かけるが、この花はアキギリ。花の形からも分かるが園芸種の
サルビアの仲間。
ウメバチソウ
やや終り加減のミヤマダイモンジソウ
キイジョウロウホトトギスは紀伊山地特産の花、私は自生種をいまだかってみたことがない。
花ではないものを三つ、ハンカイソウの花後。
ツリバナの実
サンショウバラの実
おまけは園内で見かけたキジ。人目を避けて ゆっくりと歩いていた。
気配を察したらもう動きをやめて、藪の中で暫くピクリともしなかった。
この辺で。