野に還る

ペンタックスをザックに
野山に花や鳥、虫たちを追う。
身を土に返すまでのほんの一時
さあ野遊びの時間の始まりだ。

橅林の沢を登る

2017-07-29 20:47:59 | 散歩

 関東では梅雨明け宣言以降、皮肉にも曇りがちとなりおまけに雨も降ってくれた。

おかげで暑さもほんの少しだが和らぎ、何とか一息つくことが出来た。

 

私は自然が好きなので、その中で出会う動植物すべての名前をできるだけ知りたいと思う。

いっしょうけんめい図鑑を調べても素人なので、細かなところまでは同定できず「〇〇の仲間」と

言って終わりにしてしまうことも多い。それでも名前を知ることは、その生き物のことを

知っていくために必要なことだと思う。名前を知ることによって、初めてその生き物と自分との

付き合いが始まっていく。名前はその生き物と自分とをつなぐ絆であり、それを通じて私の中に

その生き物を取り入れ、私はその生き物の世界に入っていける。

名前はとても大事なものであり、疎かにしてはならない、そう私は思っている。。

 

  津久井やまゆり園の事件から一年が過ぎ、やがて裁判員制度のもとで裁判が開かれる。

裁判の際、被害者名は遺族の希望によって匿名のまま行われるのだという。

寡聞にして詳細を知らない私だが、匿名(名前を隠す事)によって事件の本質

は見えなくなってしまうように思える。事件によって奪われた19人の魂と生きざまが

匿名性の闇の中に消え去ってしまうのが残念でならない。名前を奪われた被害者たちが

血の通わない無機質な19という数字に堕ちてしまわないことを願う。

 

 雄国沼の水は雄子沢に沿って檜原湖に流れ落ちている。雄子沢を遡る一時間余りの

山歩きは人も少なく、ブナの混じる自然林を味わうにはもってこいの山道だった。

 

 ウリノキの花が咲いていた。

 

まだ若いブナの木

 

 道沿いにはヤマアジサイが並んで咲いて涼を添えてくれた。

 

 これはヤマブドウの花だろうか

 

点々と路に沿って咲いているのはミヤマカラマツの繊細な花

 

 ちょっと大石の上に腰かけて一休みしながら、上を見たらサルナシ(コクワ)の花が咲いていた。

以前奥只見の町を歩いていたとき、この実を買って帰りコクワ酒を作ったことがあった。

適度の酸味もあって、野で採れる果実酒の中では絶品の部類に入る味わいだった。

 

 

 大きな葉っぱの上で休んでいるのは渓流で見かけるサナエトンボの仲間。

サナエトンボの仲間だけでも日本には27種もいるそうで、

生憎私には細かな名前までは分からない。

 

苔むして茸のついたブナの老木

 

 トチバニンジンの蕾、もう少したつと花が開き、やがて真っ赤な実をつける。

 

 ツクバネソウは好きな花の一つだ。ユキザサや、ルイヨウボタンのような緑色の花は、それだけでもう

好きなのだが、更にツクバネソウは大きな葉と小さな花のアンバランスが良く、まだ名の由来となっている

黒い実(羽子板の羽根)がついた姿も恰好が良い。

 

 歩いているときは分からなかった花、帰ってから図鑑で何とかコナスビと

いう名に行き当たった。

 

 

 湿った山林の林床でよく見かけるギンリョウソウ。漢名は銀竜草。

葉緑素を持たない腐生植物で別名ユウレイタケともいう。

 

 

 時期が過ぎるとこんな風に枯れていく。

 

 イボタの木の花にはコチャバネセセリが夢中でとりついていた。

 

一時間の山道を倍の二時間かけて登った。

雄国沼を示す道標がやっと見えてきた。

 

 この辺で。


裏磐梯を歩く②ー雄国沼とクマ

2017-07-22 14:33:36 | 散歩

 旅先で何も考えず、ただぼーっとしている時間が好きだ。

寧ろそんな時間を求めて旅に出ているのかもしれない。

心を締め付けていた箍が取り外され、意識が自然の中にゆっくりと溶け込んで

いつの間にか周囲の世界と同化され、暫くしてはたと気がつくと

浦島太郎のように小半時が過ぎ去っている。

 

 心という言葉はもとは「凝る」からきているのだと、ものの本に書いてあった。

凝りから解き放たれ無辺境に漂い、時の流れの縛りからも自由になれる。

それを味わいたくて旅に出ているのかもしれない。

 

  翌朝、裏磐梯の雄子沢から入りブナ林を抜けて、雄国沼まで登ってきた。

 ニッコウキスゲで知られる雄国沼。残念ながら今年は当たり年とはいかなかったようだ。

 

 

 雄国沼は標高1100m。猫魔火山のカルデラにできた湖沼。

 

 

 湿原に咲いているのはキスゲだけではない。トキソウやサワランも木道の

下にひっそりと花をつけている。

トキソウ(朱鷺草、鴇草)は、花色が朱鷺の翼の色に似ていることから

 

 

 

 より一層朱色の濃いサワラン(沢蘭)。別名アサヒラン(朝日蘭)。

 

 

 沼の反対側を歩くと 一際派手な色彩を持つコウリンタンポポがさいていた。

これはヨーロッパ原産の帰化植物。最近山道でもよく見かけるようになった。

 

 沼の畔にはウツボグサ

 

枯れかけたイチヤクソウ

 

ウラジロヨウラクも咲いている。

 

 どうやら天気の心配もないようなので、雄国山へ向かう。

シラタマノキの花?ちょっと自信がない。あとで考えると花を少しかじってみるのだった。

シラタマノキならば特有のサリチル酸臭がするはずだ。

 

 ヨツバヒヨドリはたくさん見かけたが、まだ花は開いていなかった。

 

 ウツボグサで吸蜜しているのはコチャバネセセリ

 

 

途中雄国沼を見下ろす。白い道は湿原を一周している木道。

キスゲの黄色はほとんどわからない。

 

サンカヨウはとうに実をつけていた。

 

  30分ほどの登りですぐに頂上。

 

 頂上からは眼下に雄国沼の全景が広がる。

 

 雄国山からは雄国パノラマ探勝路を下った。この下りが結構長かった。

 マタタビの花

 

 とがった頭のテングチョウ

 

 白樺の幹には黒いカメムシ、名前は分からない

 

 ヤマホタルブクロ

 

 ナルコユリ

 

 アオヤギソウ

 

 ユキザサの実

 

 一時間半、暑い中のだらだらとした下りを何とか下りきって

やっとバス停のあるラビスパ裏磐梯へ着いた。バスが来るまでは

未だ一時間近くあるのでバス停近くの日陰で休んでいたら、何と

20mほど前方にクマを発見しびっくりした。

 体長は1m弱でまだ若熊といったところか。それにしてもこんな車の

ひっきりなしに通行しているところでクマに出会うとは……。

もっとも山の中で出会わなかっただけ、運が良かったというべきなのだろう。

 

 暫く辺りをうろうろしてようやく山の方に戻っていった。

 

  宿に戻ってクマの話を主人にしたら、「あぁよく見かけるんですよ」と

事も無げに返された。 この辺で。


裏磐梯を歩くー中瀬沼・檜原湖探勝路

2017-07-18 17:46:17 | 散歩

 2週間続いた暑さに静かな悲鳴を上げ、衝動的に高速バスに乗って

裏磐梯までやってきた。ところが暑さは日本中を覆いつくしているようで

標高800mの裏磐梯もさしてうちと変わらない暑さだ。

 

 早朝出て昼すぎに着いたその足で、レンゲ沼から歩き出した。天気は晴れてはいるが

雲が多く、歩く身にはそれがかえって嬉しい。

 遊歩道にたくさん咲いていたウメガサソウ(梅笠草)。「梅が誘う」ではない。

 

  レンゲ沼は裏磐梯サイトステーションの裏手にある

 

 睡蓮の葉の上で休んでいるのは、ヒョウモンチョウかな

 

イトトンボもいる

 

 葉っぱにつかまって休んでいるのはサナエトンボの仲間だろうか。

オニヤンマは両複眼がくっついているので違う。

 

 コムラサキもいる。

 

 遊歩道脇で目につくのは山桑の実。のどが渇いていたので、黒く熟したのを

幾つも選んで食べた。

 

 池の中にはやや終りかけのヒオウギアヤメ

 

中瀬沼の周囲にはたくさんの名もない池沼がある。

 

 

 スイレンの花も咲き残っていた。

 

 

これはオニヤンマに見える。でも自信はない。

 

 アジアイトトンボ?それともアオモンイトトンボ?

 

 トンボについては私のような素人には写真での同定はとても難しい。

 

 

 ちょっとした登りの先に中瀬沼展望台が見えてきた

 

 ここからの磐梯山の景色は素晴らしいのだが、生憎頂上はガスの中。

 

一周し終えたところで左折して檜原湖方面へ向かった。檜原湖探勝路の入口。

五色沼に比べてマイナーだが、人が少なく静かな雰囲気を楽しめるのが良い。

 

 涼しげなヤマアジサイ

 

 探勝路の周りにも大小さまざまな沼が点在している。

 

 

 沼に比べると檜原湖は海のように大きい。2年前の秋に来た時はこの離れ小島の

紅葉が素晴らしかった。

 

 

 コサナエ(多分)の番(つがい)

 

 ウツギの花もやっと咲き出した。

 

 東屋にも人はいない。

 

吊り橋が見えてきた。

 

 

 ヤグルマソウの花

 

 吊り橋を渡った先はキャンプ場になっている。そこの桟橋に立って

磐梯山がやっと顔を出した。

 

 この日は宿の夕食を頂いた後8時過ぎ、昼に出掛けたレンゲ沼まで再び足を伸ばした。

ホタルを見に行きたいと言ったら、宿の主人は今年は5月から6月にかけて寒かったので、

花も虫も遅れ気味だなぁ、ホタルの話はまだ聞いてないねぇと言っていた。

外灯の乏しい道を10分ほど歩いてレンゲ沼に着いた。闇が濃くなってきたが、

ホタルの灯りは見えない。諦めかけた時、葦の葉先でホタルの灯りが点滅した。

 7月中旬の時期だからゲンジボタルなのだろう。ゆらゆらと水面を飛んで

ついには4,5m位の高さの梢に止まった。梢の高みで点滅するホタルは

 やがては夏空を埋め尽くす幾万の星の煌めきの中に紛れ込んでしまった。

 

結局この日は小半時粘ってホタルを3匹まで見ることが出来た。久しぶりのホタルに出会え、

来てよかったとしみじみ思った。 この辺で。


詩四編

2017-07-12 14:40:28 | 散歩

 本格的な夏がやってきた。暑さが一週間も続き、最近は

すっかりだれてしまい遠出をしなくなった。

今日は趣向を変えて生きることについての詩を4編+おまけ1篇ほど紹介しよう。

ムラサキウマゴヤシの花言葉は 「人生」

 

先ずは吉野弘の詩集「消息」のなかの「 I was born 」 からの抜粋

「 父は無言で暫く歩いた後、思いがけない話をした。

 ― 蜉蝣という虫はね、生まれてから二,三日で死ぬんだそうだが

  それなら一体何の為に世の中へ出てくるのかと、そんな事がひどく

気になった頃があってねー 僕は父を見た。父は続けた。

 ― 友人にその話をしたら、或る日これが蜉蝣の雌だといって拡大鏡で見せてくれた。説明によると 

  口は全く退化して食物をとるのに適さない、胃の腑を開いても入っているのは

  空気ばかり。見るとその通りなんだ。ところが卵だけは腹の中にぎっしり充満していて

  ほっそりした胸の方にまで及んでいる。それはまるで目まぐるしく繰り返される生き死にの悲しみが

  咽喉元までこみあげているように見えるのだ。冷たい、光の粒だったね。

 私が友人の方を振り向いて、<卵>というと彼も肯いて答えた。<せつなげだね> 

 

 そんなことがあってから間もなくのことだったんだよ。

お母さんがお前を生み落してすぐに死なれたのは―

 

 コノテガシワの花言葉は「生涯変らぬ愛」

 

 金子みすずの「こころ」の詩は著作権が失効し、全文を紹介できるのが嬉しい。

 「お母様は   大人で大きいけれど 

 お母様の  おこころは小さい

 だって、お母さまはいいました。

 ちいさい私でいっぱいだって。

 

 私は子供で ちいさいけれど

 ちいさい私のこころは大きい。

 だって大きいお母様で

 まだいっぱいにならないで

 いろんな事をおもうから。 」

 

 

  マツモトセンノウ  花言葉は「二人の秘密」

 

草野心平の詩集「第百階級」のなかの 「秋の夜の会話」から抜粋

「さむいね    ああさむいね

虫がないてるね    ああ虫がないてるね

もうすぐ土の中だね   土の中はいやだね

 ……

どこがこんなに切ないんだろうね

腹だろうかね     腹とったら死ぬだろうね

死にたくはないね   ……      」

 

 ノカンゾウ(野萱草)には花言葉がたくさんあるが、その中に

「いつも一緒」というのがあった。

 

 吉田一穂(いっすい) の「母」というタイトルの詩

「 ああ麗しい距離(ディスタンス)

  常に遠のいていく風景……

 

  悲しみの彼方、母への

  捜(さぐ)リ打つ夜半の最弱音(ピアニッシモ) 」

 

この詩が収められた『 海の聖母 』という詩集は大正15年に刊行された。

 

 マムシグサの実。因みにマムシグサの花言葉は「壮大な美」なんだとか

 

 おまけは金子光晴の「洗面器」からの抜粋

「 洗面器の中の  さびしい音よ

 くれてゆく岬(タンジョン)の  雨の碇泊(とまり)

 ゆれて  傾いて

 疲れたこころに  いつまでもはなれぬひびきよ 」

 マレー半島を旅をしていた作者が、洗面器をカレー鍋の代わりに使うジャワ人たちや

同じ洗面器にまたがって「しゃぼりしゃぼり」と用を足す広東人の売春婦を見て作ったとあった。

 この辺で。

 


 見沼自然公園

2017-07-04 20:27:13 | 散歩

 

 今朝のニュースはテレビも新聞も都議選の自民党と藤井4段の

二つの敗戦でほぼ埋め尽くされていた。

 

 ところで先月30日、防衛大臣が記者会見で「誤解を招きかねない」と35回も

繰り返していたのをテレビで唖然としながら見ていた。 

 ネット辞書によると「誤解を招きかねない」の類語としては「誤解を与える」、

「必ずしも適切でない」、「誤った印象を持たれる」などがあるという。

日本語の曖昧さを利用し、己の意図を何とかぼかそうとしたのだろうが、

どう考えても誰が考えてもおかしい。

 

 発言は自民党都議会議員の応援演説の場でされたものであり、

「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」という言葉は

意図がはっきりとしており、誤解しようがないほど明快だ。

一体どうやったら誤解することができるというのだろうか。

 

 もともとこの大臣は右翼的傾向が強いようで、つい本音が出てしまったのだろう。その意味では

 「誤解を招きかねない」は、「正解を与えてしまった」と変換するのが正しいのだろう。

この防衛大臣が守ろうとしているのは一体何なのか、一般国民でないことだけは確かだ。

 

 見沼自然公園は見沼用水路に隣接し、周囲を自然豊かな田んぼに囲まれた公園だ。

梅雨の時期には池に紅白のスイレンが咲く。

 

この日も周囲をゆっくりと散策しながら、トンボ観察をした。

繊細なベニイトトンボ

 

 番も見つけた

 

 こちらはアオモンイトトンボ

 

 ここの池でも一番よく見かけるのはやはりシオカラトンボだ。

 

 ♀のムギワラトンボもいる

 

 ミヤマアカネ

 

 真っ赤な顔のトンボはショウジョウトンボだ

 

 

 トンボたちは紅白のスイレンの上を縄張り争いをしながら

 忙しなく飛び回っている。

 

コシアキトンボの♂

 

こちらは♀

 

 産卵をしているのだろうか

 

ハグロトンボもここではおなじみだ。

 

 

睡蓮の上で日向ぼっこをしているのはミシシッピアカミミガメ

  すっかりおなじみの風景だ。

 

 前回羽生水郷公園で見れなかったチョウトンボに会うのが、この日の一番の目的だった。

 

 チョウトンボとはいうもののチョウではなく立派なトンボの仲間。

チョウの字はひらひらと優雅に飛ぶ様子から名づけられたものだ。

 

 分布域は北海道を除き、本州から、奄美大島まで。平地のガマやマコモが生える

池や沼などで見られる。

 

 ものの本によると羽根の色の違いによって雌雄の判別ができるのだという。♀の羽色は

近緑色、♂の青紫色とはいうものの光線の具合もありなかなか私には難しい。

番を見つけた

 

一旦番になったのが離れたのだから、下にいたのが♀だったのだろうか。

 

 

 水面の上を強い風が吹くと、必死で葉っぱに縋り付いている。

 

 

 

 

 何とか飛んでいる姿を撮りたくて挑戦してみた。ゆっくり飛んでいたかと思うと

ある時はホバリングして、別の時はさっと飛び去ってしまう。

飛び方が一定ではないので、なかなか私には難しい。

 

何とか撮れたのがこの三枚。

 

 

 

 今日はこの辺で。