政府は「認知症になっても、希望をもって自分らしく暮らし続けることができる」という「新しい認知症観」を盛り込んだ認知症施策の基本計画案をまとめた。
1月に施行された認知症基本法を受けて策定したもので、有識者らで構成する会議が了承した。
月内にも閣議決定する見通しだ。
自治体が対策を講じる上で今後5年間の指針となる。
会議には、認知症の当事者が初めて委員として参加した。
計画案は認知症の人を「支える対象」として捉えるのではなく、共に支え合って生きることの重要性を訴えている。
誰もが認知症になり得る時代である。妥当な認識といえよう。
政府は「痴呆」という用語を「認知症」に改めるなどの取り組みを進めてきたが、「認知症になったら何も分からなくなる」「できることがなくなる」といった誤解や偏見は解消されていない。
認知症の診断を受けても、社会から孤立させずに、生きがいを感じて過ごすことができる環境を整えなければならない。
高齢化の進展で、認知症とその予備群にあたる「軽度認知障害」の人は増加している。令和4年は約1000万人だったのが、22年には約1200万人に増え、高齢者の3・3人に1人になると推計されている。
計画案の重点目標には、新しい認知症観の浸透、本人の意思の尊重、地域で安心して暮らせる環境整備などを盛り込んだ。
その実現のための指標として、就労支援を含めた相談支援コーディネーターを配置する自治体数などの項目を挙げた。
政府は抽象的な考え方を示すだけでなく、自治体の具体的な好事例を示すことで、その取り組みが全国に広がっていくようにしてもらいたい。
例えば介護事業所の中には、利用者である認知症の当事者がボランティア活動をしたり、飲食店での配膳に携わってささやかな謝礼を受け取れるようにしたりするところもある。
当人に達成感が生まれ、協力する企業や周囲の人に理解が広がる。
発症や進行を遅らせる施策の充実も忘れてはならない。
軽い運動はそれに資する可能性がある。
自治体が行う体操教室や通いの場は、新型コロナウイルスの流行で低迷してしまった。
活性化することが欠かせない。