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牧野 愛博 Official Columnist
朝日新聞外交専門記者。
広島大学客員教授。
1965年生まれ。
大阪商船三井船舶(現商船三井)を経て91年、朝日新聞入社。
瀬戸通信局長、政治部員、全米民主主義基金(NED)客員研究員、ソウル支局長、編集委員(朝鮮半島、米朝・日米関係担当)などを経て、21年4月から現職。
著書に『絶望の韓国』(文春新書)、『金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日』(講談社+α新書)、『ルポ金正恩とトランプ』(朝日新聞出版)、『ルポ「断絶」の日韓』(朝日新書)など。
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バイデン米政権で2人目の国賓として迎えられた尹錫悦・韓国大統領が米上下院合同会議で演説した4月27日、ワシントンのブルッキングス研究所で、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が講演した。
この講演は、中国との貿易が欠かせない日本や韓国の財界人の心胆を寒からしめるには十分な破壊力があった。
サリバン氏は過去の経済外交の概念を捨てるべきだと主張した。
サリバン氏は過去の経済外交の概念を捨てるべきだと主張した。
彼に言わせれば、過去は経済効率重視で、「一番コストがかからないサプライチェーン」を目指していた。
ところが、今や世界は地政学的リスクや気候変動、米国の労働者などを考慮に入れたサプライチェーンを作らなければいけないという。
要するに、「中国と手を切れ」と言っているのだ。
要するに、「中国と手を切れ」と言っているのだ。
サリバン氏は「同盟国と連携する」と言ったが、それは「同盟国にこの方針を強制する」と言っているに等しい。
同時に、中長期的には米国内に投資して、競争力をつけなければいけない、という考えも示した。
当然と言えば当然だが、「米国ファースト」を主張したわけだ。
ここですぐ脳裏に浮かんだのが、前日行われた米韓首脳会談だ。
韓国は今回、経済分野で是が非でも勝ち取らなければいけない対米要求がいくつかあった。
「韓国大丈夫か 米韓首脳会談・ワシントン宣言は韓国版プラザ合意か」で書いたように、「IRA(インフレ抑制法=Inflation Reduction Act)」、と「CHIPS(半導体関連法=CHIPS and Science Act)」の、韓国企業への例外扱いが焦点だった。
特に、CHIPSは、中国との最先端半導体競争に勝利するため米国産業の育成などを目指す。
最先端半導体メーカーとしてTSMC(台湾)と世界的競争を繰り広げている韓国のサムスン電子は中国に半導体工場を持つ。
共同声明ではサムスンなどへの例外扱いは盛り込まれず、逆に「次世代核心・新興技術対話」の設立によるハイテク技術協力の促進で合意した。
サムスンはこれ以上、中国工場に投資できなくなり、やがて中国市場から退場しなければいけなくなるだろう。
米韓の経済関係筋は「米国はIRAを使ってサムスンに補助金を支給する代わり、サムスンの企業情報や人材を吸い取って、(米半導体メーカー大手の)インテルを育てるつもりなのかもしれない」と語る。
サリバン氏は昨年9月の講演では「中国を、できる限り引き離す」と宣言した。バイデン政権は昨年10月に発表した国家安全保障戦略(NSS)で「決定的な今後10年間」という表現を使った。中国を振り落とすためには、何でもやるという強い覚悟が見える。韓国・尹錫悦政権の外交ブレーンは首脳会談前、「サムスンの例外扱いは難しくても、今後の韓中貿易に一定の理解を得られる機会にしたい」と語っていたが、とてもじゃないが、そんな甘い考えは通用しそうもない。
サリバン氏は4月27日の講演で、この政策は「デカップリング(切り離し)」ではなく「デリスキング(リスクの回避)」だと語った。
米国がサプライチェーンの強靭化を図ることをデリスキングと称した。
最先端の半導体など機微技術・製品だけを中国に渡さず、安全保障と関係ないものは、どんどん自由に貿易・投資してもらって構わないという。
この講演を視聴した米州住友商事会社の渡辺亮司ワシントン事務所調査部長は「そんなに簡単には物事は進まないでしょう」と語る。
バイデン政権は表現を「デカップリング」から「デリスキング」に変えたが、実質、機微技術を中心に中国とのデカップリングが進展する。
渡辺氏の目からも、米国は軍事分野以外でも、どんどん安全保障の鎧をまとい始めている。
例えば、数年前、米国の在外公館に建材を納入している海外子会社を中国企業に売却しようとした日本企業があった。
ところが、これが対米外国投資委員会(CFIUS)の審査に引っかかった。
「この企業は、米国の在外公館の構造などを把握していることが米国の安全保障上リスクとみられた可能性が高い」ということだった。
米国の輸出規制は半導体に限らず、バイオ技術やAI(人工知能)をはじめ他の分野にも今後拡大し、対中投資規制も近々、導入されることが予想されている。
また、日本企業には総合商社のように、農産物も扱えばハイテク製品を扱う企業もたくさんある。
渡辺氏は「例えば、機微技術を扱うハイテク分野や米政府職員の個人情報に関わるような対米投資を行う場合、企業のなかに、高い壁を作って、中国部門に情報が流れない仕組みが必要かもしれません。
そのような投資案件では企業はCFIUSの審査にひっかからないか、米政府に確認するなど、事前に根回しすることも重要になります。
投資後、米政府の審査で却下されれば、強制的に売却させられるなど事業計画が狂いかねません」と話す。
また、韓国の大学教授が昨年9月、ワシントンの専門機関に一時留学を申し入れた。
ところが、ビザがなかなか降りなかった。
調べてみると、ソウルの米国大使館の領事関係者が、本国の厳しい姿勢をみて緊張し、発給業務が滞っていたことがわかった。
結局、この教授は今年3月になって、ようやく米国への入国が実現したという。
今、日本や韓国の政府当局者は、ワシントンや東京、ソウルでバイデン政権の動きを追いかけるのに必死になっている。
今、日本や韓国の政府当局者は、ワシントンや東京、ソウルでバイデン政権の動きを追いかけるのに必死になっている。
その流れをつかむや、慌てて国内法や制度の整備に取り掛かっている。
日本や韓国の政治部・経済部記者が「特ダネ」として、その新しい日本の制度を報じるころには、バイデン政権は規制の実績を十分積み上げるところまで進んでいるという。
企業関係者はワシントンで直接、アンテナを立てないと生きていけない時代に突入している。
企業関係者はワシントンで直接、アンテナを立てないと生きていけない時代に突入している。
また、韓国の大学教授が昨年9月、ワシントンの専門機関に一時留学を申し入れた。ところが、ビザがなかなか降りなかった。調べてみると、ソウルの米国大使館の領事関係者が、本国の厳しい姿勢をみて緊張し、発給業務が滞っていたことがわかった。結局、この教授は今年3月になって、ようやく米国への入国が実現したという。
今、日本や韓国の政府当局者は、ワシントンや東京、ソウルでバイデン政権の動きを追いかけるのに必死になっている。その流れをつかむや、慌てて国内法や制度の整備に取り掛かっている。日本や韓国の政治部・経済部記者が「特ダネ」として、その新しい日本の制度を報じるころには、バイデン政権は規制の実績を十分積み上げるところまで進んでいるという。
企業関係者はワシントンで直接、アンテナを立てないと生きていけない時代に突入している。
今、日本や韓国の政府当局者は、ワシントンや東京、ソウルでバイデン政権の動きを追いかけるのに必死になっている。その流れをつかむや、慌てて国内法や制度の整備に取り掛かっている。日本や韓国の政治部・経済部記者が「特ダネ」として、その新しい日本の制度を報じるころには、バイデン政権は規制の実績を十分積み上げるところまで進んでいるという。
企業関係者はワシントンで直接、アンテナを立てないと生きていけない時代に突入している。
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