米国防総省は4日、中国の偵察気球を大西洋の米領海上で撃墜したと明らかにした。
アメリカは、中国の気球がアメリカ各地の重要軍事施設を偵察していたとしている。
国防総省によると、米東岸のノースカロライナ、サウスカロライナ両州沿岸で空港3カ所を閉鎖し、周辺を航空禁止にした上で、戦闘機による撃墜作戦を実施した。
米メディアは、小規模の爆発後に気球が洋上に墜落する映像を伝えている。
国防総省によると、F22戦闘機が「AIM-9Xサイドワインダー」ミサイル1発を気球に発射し、米東部時間午後2時39分(日本時間5日午前4時39分)にミサイルは米海岸から6海里沖に墜落した。
気球の残骸は、サウスカロライナ州マートルビーチ沖の水深14メートルの場所に落下したという。
米軍の想定よりも水深が浅い地点での落下だったと、関係者は米メディアに話した。
残骸は11キロにわたる洋上に散らばっており、海軍艦2隻が現場海域に入っている。
1隻は、大きい残骸の回収用に大型クレーンを装備しているという。
米軍幹部は米CNNに対して、残骸の回収は「比較的簡単」で「さほど時間はかからない」はずだと話した。
「海軍の優秀なダイバー」たちも捜索に参加する可能性があるという。
国防総省が2日に気球を追跡していると発表して以来、バイデン大統領に対して、気球撃墜を求める声が高まっていた。
バイデン氏は1日の時点で撃墜を承認していたものの、米軍は、破片落下による地上への危険を回避するため、気球が洋上に移動するまで待機することにしたと説明していた。
沿岸で気球撃墜を目撃したというヘイリー・ウォルシュさんはBBCニュースに対して、ミサイル発射前に上空で戦闘機3機が旋回しているのを見たと話した。
続けて「大轟音(ごうおん)が聞こえて、家が揺れた」のだという。
撃墜作戦に先立ち米連邦航空局(FAA)は4日午後、サウスカロライナ州沿岸地域にある空港3カ所について、「国家安全保障対策」の一環として、民間航空機の航行を一時的に停止させた。
沿岸警備隊も、「相当の危険」を伴う軍事作戦が行われるとして、船舶に周辺海域を離れるよう通告していた。
国防総省はさらに4日、気球が最初にアメリカ領空に入ったのは1月28日だったと明らかにした。
その3日後にカナダ領空へと移動し、1月31日に再びアメリカ領空へ入ったという。
複数の核ミサイル施設があるモンタナ州上空でも確認されていた。
気球をめぐり米中間の緊張は悪化。国防総省は、偵察気球の派遣はアメリカの「主権を侵害する容認できない」行為だと非難した。
アントニー・ブリンケン米国務長官は3日、気球の発見を受けて、来週に予定していた中国訪問を中止。
「容認できない無責任な」行為だと中国を批判した。
米国務長官の中国訪問は実現していれば5年ぶりで、バイデン政権の閣僚としては初の訪中になるはずだった。
中国側は先に、米領空に侵入に迷い込んだ物体が中国のものだと認め、気象調査に使用する民間飛行船が悪天候のために針路を外れたと説明していた。
ブリンケン長官の訪問中止についても中国は4日、そもそも両国とも訪中を発表していなかったと述べ、影響は大きいものではないという姿勢を示した。
中国外交部は、「根拠のない憶測や誇張」を中国政府は受け入れないとして、「アメリカの一部の政治家やマスコミ」が「中国を攻撃し中傷する」ために今回の件を利用していると批判した。
米国防総省は3日、中国の別の偵察気球がアメリカから南の中米上空で発見されたと発表。
コスタリカやヴェネズエラの上空で確認されたという。
これについて中国政府は今のところ、公式にコメントしていない。
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