創価学会の池田大作名誉会長の死去に際し、岸田文雄首相がX(旧ツイッター)に投稿した追悼メッセージがSNS(交流サイト)で物議を醸している。
創価学会を名指しせず、友党の創設者に弔意を示しただけなので、憲法が定める政教分離原則には違反しないという意見がある一方、
政治と宗教の関わり方が問題となる渦中で、宗教団体の実力者に内閣総理大臣名でコメントしたことも波紋を広げている。
〇「内閣総理大臣 岸田文雄」名で
首相は池田氏の死去が公表された18日、Xに
「深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」と書き込み、「謹んで御冥福をお祈りするとともに、御遺族の方々および御関係の方々に対し衷心より哀悼の意を表します。
内閣総理大臣 岸田文雄」と投稿した。
首相の投稿に対し、SNSには「個人として弔意を持つのは問題ないが、
内閣総理大臣名で宗教法人の(実力者)の訃報にコメントを出すのは問題」「宗教団体の(実力者)の死去に何故こういうメッセージ寄せるのだろう?」などと疑問視するコメントが多く寄せられている。
「政教分離違反だ」との指摘も根強い。
とはいえ、首相はXの投稿で創価学会には言及しておらず、池田氏が昭和39年に公明党を結党したことを念頭に〝友党〟の創設者へのメッセージとの見方もできる。
実際、松野博一官房長官は20日の記者会見で、「公明党の創立者である池田氏に個人として哀悼の意を表するため、首相個人のSNSアカウントで弔意を示した」と説明し、政教分離違反との見方を否定した。
松野氏は過去に首相名義で宗教団体の幹部に弔意を示した例として、昨年12月に死去した前ローマ教皇、ベネディクト16世にメッセージを送ったことに言及した。
〇政教分離原則は「政治と宗教の関わり完全に否定しない」
政教分離を定めた憲法20条は「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、または政治上の権力を行使してはならない」などと定めている。
中央大法学部の中北浩爾教授は「政教分離の概念は、信教の自由を保障するために行われる国家と宗教の分離だ。
特定の宗教団体への政治介入や特権の付与は認められるものではないが、政治と宗教の関わりを完全に否定するものでもない。
首相はローマ教皇の死去にも弔意を示せなくなってしまう」と語り、今回の首相の投稿が政教分離原則に違反するものではないとの見方を示す。
20条の趣旨を巡る政府の国会答弁に関して、日本維新の会の音喜多駿政調会長も18日付のブログで、「国民の『信教の自由』を保障するため 、国が宗教に介入してはならない 、国が特定の宗教を優遇してはならないという内容を定めた」と指摘。
「政治と宗教はまったく関わってはならないということではなく、宗教団体が政治家・政党を応援することは自由だ。政治家が特定の宗教を個人として信仰することもまったく問題ない」と整理した
その上で、首相の投稿については、「ただちに政教分離原則に反したものとは思わない。ただ、旧統一協会(世界平和統一家庭連合)問題が課題となっており、特定宗教に対する発言は良い印象を持たれるものではない」と書き込んだ。
池田氏の死去を巡っては、立憲民主党の泉健太代表も18日、「長年にわたり創価学会において卓越した指導力を発揮され、日本の平和運動、福祉の推進、そして中国をはじめ世界各国との友好親善に力を尽くしてこられました」と創価学会に触れつつ、追悼コメントをXに投稿した。
維新の馬場伸幸代表も同日、「国内のみならず世界各国で平和の尊さを訴え、大きな功績を残されました。安らかにお眠りください」とのコメントを出した。(奥原慎平)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます