関連ブログ記事・・・2024/11/26付「大阪~釜山のフェリー航路に2025/4新造船就航、既存船は石垣~台湾航路の「やいま丸」として再起へ」
上記ブログ記事で書いたとおり、2024年時点で大阪~釜山間のフェリー航路に就航している「パンスタードリーム」(1997年建造、もとブルーハイウェイラインの「さんふらわあ くろしお」)は、新造船「パンスターミラクル」と交代して引退し、2025年半ばに新設予定の石垣島と台湾・基隆港を結ぶ貨客フェリー航路に「やいま丸」と改名して就航予定です。運航会社は石垣市が主導して設立され民間も出資する新法人「株式会社商船やいま」で、石垣市議会における市長の答弁によれば、
https://www.y-mainichi.co.jp/news/41132
この船の購入費は30億円<6年分割払い>となっており、国や石垣市の支払い分は内閣府の補助金約9億3千万円および石垣市のふるさと納税約1億9千万円を充当するとのこと。
さて、この航路は日本と台湾を結ぶため内航海運には該当せず、安全保障面などから世界の多くの国で適用されているカボタージュ規制(内航海運は自国船に限る)の対象から外れることになります。日本の船舶法第3条の規定では「法律若しくは条約に別段の定めがあるとき、外国籍船は海難若しくは捕獲を避けようとするとき又は国土交通大臣の特許を得たとき以外は、日本国内の港間における貨物又は旅客の沿岸輸送を行うことが出来ない(注1)」となっていますが、「やいま丸」は国際航路に就航するため、日本船籍<船員は原則日本人限定>である必然性はなく、外国人船員を乗船させることも可能となります(注2)。
当ブログで再三紹介している沖縄総合事務局の「沖縄地方交通審議会船員部会」ではこの点について何回か話題に上っており、2024/11/21に開催された第191回部会の議事録によれば、
https://www.ogb.go.jp/-/media/Files/OGB/Unyu/vessel/bukai/gijiroku-191.pdf
全日本海員組合側の委員が以下のように発言されています。
石垣台湾航路が開設されたら何に影響してくるかというと、やはりカボタージュ規制に抵触するおそれが出てきますので、そこは確実に遵守していただきたいと思っております。海運業界や我々海員 組合での共通認識としてカボタージュ規制というのは、世界的に各国が堅持しているものとされております。もし航路を開設する場合、安全保障の観点からもこのカボタージュ規制について遵守する ような形でのご指導をしていただければと思いますのでよろしくお願いします。
一方、沖縄総合事務局で海運関係の許認可を担当する委員からは、以下のコメントがあります。
先月と一緒で特段石垣市からは相談等は何もなく、報道で出ている情報しか我々も把握できていない状況です 。
10~11月にかけては商船やいまの関係者(石垣市も含めて)が船舶の購入手続きに全力投球しており、相談どころではなかったのかもしれませんが、今後の推移に注目です。そもそも「報道で出ている情報」の中にはやいま丸が日本・台湾どちらの船籍になるかに関する情報は見当たりません。
(注1)2010/3/26以降、沖縄本島の「特別自由貿易地域」及び「自由貿易地域」に立地する企業が扱う貨物については、両地域と本土間との外国籍船による輸送が特別に認められています。
https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/150417shiryou01-03.pdf
(注2)外国船籍のクルーズ客船を使用したクルーズ<当然船員もほぼ外国人>では、日本の港を発着点とし日本周辺を航行するだけであっても、必ず日本以外の港(基隆とか釜山とか)に寄港するようになっています。これは、カボタージュ規制を回避するための方策です。