オリャオンを出て、ファロの大きなロータリーで右折。そこまでは簡単に行く。そのあと国道N125号線に入るのが少々ややこしい。以前はそのまま真っ直ぐに突っ切ってロウレの街中に入ってしまい、アルブフェイラ方面へ出るのに苦労をしたし、随分遠回りもした。何度もだ。
前回はうまくすり抜けることができたのだが、どう行ったのかがはっきりしない。 確かその前夜のニュースでアルマンシルという町で麻薬組織のアジトが摘発されたと言う事件があった。普段、観光客にアルマンシルなど用のない地名だ。そのアルマンシル方面へ右折するのだった。
標識はファロとアルマンシルとなっている。ファロは今、通過してきたばかりだから、それは違うと思って真っ直ぐに突っ切って、いつも間違っていたのだ。
ファロとアルマンシルの標識で曲がって、ファロに曲がる道はやり過ごしてアルマンシルに向うとアルブフェイラ方面のN125号線に出ることができる。 こんな簡単なことがなかなか判らなかったのだ。でもアルマンシルなどという標識ではなく、アルブフェイラかラゴスという標識にしてくれれば観光客にでも判るのにと思った。実に不親切な標識である。それにこのあたりはアルガルベの幹線で田舎道とは違う。混雑する上、他のクルマは猛スピードで走るので僕だけのんびりも走ってはいられない。
でも国道N125号線に入ってしまえばもうこっちのもの。アルブフェイラの看板を見落とさなければ間違うことはない。すぐにアルマンシル。それを通過して、やがてクワルテイラも通り過ぎ、ヴィラ・モウラを通り過ぎれば間もなくだ。
白いアイリスが沿道のところどころに咲いている。
アルブフェイラ左折の看板は今までも見落としたことはない。そこには小さくオーリョス・デ・アグアの看板も付いている。そのオーリョス・デ・アグア近くに今夜泊るホテルがある。
うまくアルブフェイラへの道も左折できてやがてオーリョス・デ・アグアへ左折するロータリーに差しかかった。今日は全く順調に道を間違えることはなかった。これからはもう大丈夫だ。
そう思って安心した途端、そのロータリーで警察の検問があった。僕のクルマが停止を命じられた。全てのクルマではなく抜き打ちで停めている様である。ポルトガルに住み始めて最初の頃、未だレンタカーで旅をしていた頃に1度検問に出あった。自分のクルマを持ってからは12年になるがこれが初めてである。何もやましいことはない筈だが、あまり気持ちの良いものでもない。
エンジンを止めろと言う。長引きそうだ。先ず、車検証。次にドキュメント。滞在許可証に問題はない。そして運転免許証。10年間有効の免許が昨2011年の12月に切れている。その半年前の7月にACP(ポルトガル自動車協会)を通じて更新手続きをしているが、発行は未だである。その証明書をACPが発行してくれているが、それも3回目。2回目のはこの1月10日までだったので、引き続き発行してもらったばかりだ。それが3月10日までの期限。ACPの事務員も「これがたぶん最後ね。いくらなんでも3月までにはできるでしょう」と苦笑いしていた程だが、とにかく時間がかかりすぎる。
ポルトガルは滞在許可証にしろ、運転免許証にしろデジタルに転換期でなかなかスムーズにはゆかない。
テレビもこの1月12日で地上デジタルに変わった。我が家ではアンテナやチューナーなど買い換えずにそのままなので今はテレビのない生活だ。その代りパソコンで古い映画などを観て、ベッドに入ってからもジャズを聴いて楽しんでいる。
アルガルベにはN125号線とほぼ平行してA22号という高速道路が走っている。昨年までは無料で、僕たちもそちらを走ることも多かった。
ポルトガルの財政難から、幾つかの無料の高速道路が昨年(2011年)暮から有料になった。A22号はその象徴的な高速である。聞くところによると料金はそれ程高くはない。と言うよりいたって安い。でも有人の料金所を設けずに無人で前もって料金を支払うシステムらしくて、それが判りにくい。途中のカメラでそれを検知するらしいのだが、それが不評だ。そんな機械を壊したりの妨害もある。当然、多くのクルマは高速(A22号)を走らずに一般道(N125号)に流れる。
高速の有料化では追いつかず、検問をして罰金を徴収、財政難を賄おうとしているのかも知れない。
検問の警察官に自動車協会の再々発行の日付を示して、説明。警官はパトカーに免許証を持っていってパソコンに入力したのだろう。やがて敬礼と共に笑顔で全ての書類、証明書を返してもらってOK。感じの良い警察官で良かった。多少は緊張したのだが、思いの外、簡単に済んで、少々物足りなかった。
後で考えたのだが、その前に僕はノンアルコールビールを飲んでいる。もしその時にアルコール検査をされれば、アルコールに弱い僕などはアルコール反応が出てしまったかも知れない。ノンアルコールビールと言えども少しはアルコールが入っていると聞いたことがある。でもアルコール検査はなくて助かった。
そのオーリョス・デ・アグア行きの道に入ったあたりから、道端のいたるところでネットに入れたオレンジをぶら下げて売っている。5キロで1,5ユーロなどと驚くほど安い値段。美味しいのだろうか?と思いながらも買ったことはない。
途中、インターマルシェに寄り、アルコール入りのビールとつまみを買って、やがてホテルに到着。チェックインを済ませ、ビーチへ。
セトゥーバルに比べるとやはり気温は高い。1月だというのに半袖のTシャツ1枚に短パンといういでたちで散歩している人が多い。我々の様に厚着をしているのが恥かしい程だ。
大きな夕陽が大西洋に落ちて行く様を眺め、完全に沈んでからホテルに引き返したが、未だビーチにはある程度の人たちが残っていた。シャンペンを抱えて乾杯している若い女性の2人連れも居た。波打ち際には手の甲程の大きなハマグリやもっと大きい帆立貝の貝殻がたくさん落ちている。
ビーチからホテルまでの上り坂は人通りもなく、数羽のチャボがけたたましく鳴く以外は鬱蒼として薄暗くなると少し気味が悪い。そんな途中で強盗の検問にでもあえば有り金残らず吐き出すはめになりそうだ。そんな心配もよそに途中は誰とも会わなかった。道端には白いナデシコが10輪ばかり楚々と咲いていた。
ホテルは空いているものとばかり思っていたが、ビュッフェ式朝食サロンはイギリスからのリゾート客で満員であった。殆どが老人だ。ロンドンあたりの自宅で暖房費を使うよりも余程安上がりに過すことができる筈だ。ホテルの中だけに居ても温水プールはあるし、卓球、ビリヤード、パターゴルフなど、更にサウナ、ジャグジー、自炊設備もあり、閑をもてあますこともなさそうだ。部屋のテレビは地デジの設備を整えたのだろう英語やドイツ語も映る。
朝食の後、急遽、サグレス岬まで往復することにした。これだけ暖かいと新たな野の花が咲いているかもしれない、と期待したが、スィート・アリッサムやローズマリーなど6種類程、知っている花ばかりで新たな花は残念ながらなかった。でもあちこちでアーモンドの花が今を盛りと咲き誇っていた。
昨年までならA22号の高速に乗るところだが、やはりN125号だ。
ホテルを出てラゴアあたりのロータリーで渋滞になった。前方を見ると大掛かりな検問だ。22年も住んで昨日、2度目の検問に引っかかったところなのに、2日たて続けだ。
でもそこでは証明書を見る様子はなかった。警察官が運転席を覗き見ているだけである。交通警官だけではなく、防弾チョッキを着けた警察官が何人もあちこち忙しくしていたところをみると、なにやら事件があったらしい。
このところ、ポルトガルは事件が多い。都会のリスボン、ポルトそれにセトゥーバルも多いが、アルガルベは特に多発している。麻薬、強盗殺人、ATMの破壊など日常的だ。以前、世界中でニュースになったイギリス人リゾート客の女の子が行方不明になっている「マディーちゃん事件」もアルガルベの事件で未解決のままだ。一時は母親が犯人扱いされたこともある。
その後も外国人が巻き込まれている事件も後をたたない。
そんなこともあってか、アルガルベのリゾートホテルはどこも客が少なくなっているのだろう。安売り競争が激しい。
結構な設備でシーズンオフには気の毒なほど安い。僕などもあまりの安さに釣られて羽を伸ばしに時々利用する。ホテル代は安いけれど往復のガソリン代の方が高く付くくらいだ。イギリスからならもっと安く感じるのだろう。おまけに天気はイギリスの春に匹敵する程も良い。飛行機もイギリスからならライアン・エアーやイージー・ジェットなどLCC(格安航空会社)がアルガルベのファロ空港まで運行している。
そしてその人たちを狙った犯罪が後をたたない。でもホテルから1歩も出ないで閉じ籠っている限り、犯罪に遭う確立もなくなる。
ホテルも気の毒だが、狙われる外国人リゾート客も気の毒だ。
もっと気の毒なのは排気ガスの中で検問をしなければならない末端の警察官なのかも知れない。VIT
(この文は2012年2月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに転載しました。)
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