遅い仕事なら 赤ん坊でも できる。仕事は魂入れんとな。
これが母の口癖である。
迫力十分だ。亭主や子供を守るんだったら 命も捨てる。
『あねさん大変だ 。家が囲まれた。』
祖母とお茶を飲んでいたところに、若い衆が 知らせに来た。
『あいては 友清どんな。』
「たけし 気やれ。」母は私の手を引いて帰宅した。
家の木戸口から 相手方の若い衆が 鉄鋼脚絆に竹やりもって集まっていた。
「何事な。人の家に押しかけて、そこあけんな。」
『こりや あねさん すまんことで』床屋の丸山ドンが大将格らしいる
部屋に入ってみると、村長、助役、に親父三人、先様は友清さん兄弟
3人が対峙してたけだけ強い声を張り上げていた。
控えの間は殺気だっていた。出刃包丁をもって飛び出そうとしていた安伯父
の手にすがり付いて
「ふんべつんなかモンじゃ。あとさきんこと考えんな。」警察が介入したのはそのあとであった。
女の子たちに一人も無母親の気風をつぐものは見当たらない。
母親の弟子たちのほうがむしろ母親の気風を継いでいたようだ。