天沼春樹  文芸・実験室

文芸・美術的実験室です。

『カンパネルラ』作品解題

2011年03月12日 21時18分14秒 | 文芸

画家の七戸優(しちのへまさる)さんとは、1990年代の初め頃、表参道のHBギャラリーの個展ではじめてその画業を知った。氏は寡黙だったが、二言三言言葉をかわした。この世界好きですねえ、くらいは言ったろうか。氏によれば、いつかいっしょに仕事ができたらいいですね、といったらしい。めったなことではそんなことを言わないわたしである。強烈な魅力を感じたときにのみ、最大の賛辞として思わず口にでる。爾来ずいぶん年月が経過してしまった。というのも、いくら気に入った画家と組んでアート本をつくりたいといったって、そんなマニアックな企画はなかなか出版界でかなうものではない。しかし、自然とそのチャンスがやってくるときがきた。パロル舎の編集者から超世代本の相談を受け、ふたつ返事で、七戸優さんがいい!!と、断言した。今回の制作も、七戸さんから既存の作品のポジをお借りしてのテキスト書きとなった。しかし、それだけではつまらない。水野さんのときのように、こちらも画家を挑発して、いきたい。そこで、コンセプトをかためるために七戸さんに、たくさんのアイデアや詩やイメージレターを送りつけた。コンセプトは少年の魔法の角笛。これはドイツの詩人プレンターの詩ののアンソロジーだが、七戸優描く美少年たちの世界をもうひとつ魔法にかけるつもりだった。驚いたことに、七戸さんは、この間にわたしの趣味というか、熱血テーマのドイツ飛行船ツェッぺリンをモチーフにした作品まですでに描いてくれていたのだ。その絵は、のちに、時事通信社からだした『夢みる飛行船』の装丁画に使わせていただいた。しかし、決してなにか注文したりはしない。こういうふうなものを描いてなんてことは、口が裂けても言わない。もっとも口が裂けたらものは言えないのだけれど。制作が進行するうちに、七戸氏は、装丁画と「浮力」と題する飛行船と少年の絵までも描き上げてくれた。まずは、銀座の青木画廊での彼の個展で発表された。狂喜して、即座にその絵を買ってしまったほどだった。もちろん、超世代本にも使いたい。どんなに無理をしても使う。むりではないと思うけれども。かくて、『カンパネルラ』(機械仕掛けの少年の魔法の角笛)は完成した。今回もデザイナーの北村武志氏の腕をかりて、妖しい二人の少年の物語ができあがった。ボーイズラブなんて言葉はなかったけれど、わたし流のジョバンニとカンパネルラだ。賢治先生へのオマージュとして。

縦横無尽、好き勝手、唯我独尊、そんなかんじだ。表紙画も当初編集者氏が提案してきたものを、ダメだといって、ひっくりかえした。最終形の「グラムフォン」という作品を強引に装丁画にしろ!!とゆずらなかった。どーさね?完璧でしょう?そして、最後のキメのフレーズもきまった。と、自分では思っている。この超世代本3作は、生涯大事にしたい渾身の作だ。

七戸優氏 ↓

http://www.tis-home.com/masaru-shichinohe

http://www004.upp.so-net.ne.jp/maboroshi-cafe/campa_hiwa.htm

七戸さんのほうが記憶が正確でしたね。↑ へんなヒトと思われてなくてよかった。