11月11日ケアマネジャー

ケアマネジャーを5年毎の更新制にすると厚生労働省が発表した。ケアマネジャーの質の向上を目指し、5年に一度の研修を義務付け、ケアマネジャーの力量の格差の是正をはかるというものだ。それでなくても超ハードワークとされるケアマネジャーを更に拘束する点についてはいただけないが、当然ケアマネジャーにも生涯教育は必要であり、日常の研修がほとんど不可能であることを思えば、5年毎の研修の義務付けは最低限必要なことなのかもしれない。

ケアマネジャーの仕事は、認定された要介護度に応じた利用額に基づき、あるいは利用者が別途更に自己負担するならば、その限度額の範囲を超えて、利用者に必要なケアプランを立てることだ。介護保険制度が介護が必要な人の自立支援を目的として創設されたということを勘案すれば、ケアマネジャーが立てるケアプランによって、利用者の要介護度が改善されなければ意味がない。ケアマネジャーの資質を議論する場合、実は、そこが最も重要で、注目すべき点ではないかと、私は思う。

5年毎の研修も良いが、利用者のケアプランとその結果である要介護度の変遷を見れば、ケアマネジャーの能力は判断できるし、むしろそのほうが利用者本位であるとも言える。ケアマネジャーには厳しいことかもしれないが、介護保険制度は、医療と同様にそれにより利用者の状態が改善しなければ、介護サービスという商品の押し売りにすぎなくなる恐れをはらんでいることを思うと、ゆるがせに出来ない重要な視点といえる。

厚生労働省は同時に、1人のケアマネジャーが担当する標準件数を、現在の50件から30件に減らすことも決めている。それは現場の悲願だった。早朝から深夜まで、ケアマネジャーの過酷な労働は、終わることを知らない。そんな現状を打破しない限り、ケアマネジャー不足は続き、結果としてサービスの質の向上は望めない。介護保険制度による介護サービスは、利用者更にはその家族の生活までをも左右する、他人のプライバシーに一歩も二歩も踏み込む、高い倫理観が要求される業務なのだ。従って、利用者1人1人に応じて、詳細なケアプランを作成するケアマネジャーの位置付けは、それ相当に見直しがなされてしかるべきだと私は思っている。

ケアマネジャーは、医療または介護の専門職に5年以上就いていなければ受験資格はない。ケアマネジャーの業務が極めてハードであることから、もともとの専門職との掛け持ちは困難だ。「看護師をやってるほうが、給料は良かった」という声はざらだ。主治医やサービス提供事業者とのカンファレンスに基づき、ケアプラン作成がケアマネジャーの裁量に委ねられている以上、ケアマネジャーが、遣り甲斐と誇りを持って業務に邁進できる環境整備が何より必要だ。山積する事務作業に追い立てられる日常を、打破することが肝心だ。

より質の高い介護サービスの提供を目指すのならば、5年毎の研修も結構、しかしまずは、ケアマネジャーを1人の人間として扱う施策を、厚生労働省は創りだす責任がある。ここでも現場の声が、中央には届いていない。業務に忙殺され、倒れそうな体を支えるために、自らも病院を受診しながら頑張るケアマネジャーが、私の身近にはいる。

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