WBC「イチローに乾杯!!」 3月21日

終わってみれば、WBCは非常に面白かった。正直、当初はたいして関心を持っていなかった私だが、今日の決勝戦には、結構夢中になってしまった!!

なぜ今日の試合に関心を持ったのかと考えてみると、やはり、イチローのリーダーシップが、予想外に際立ち、いやらしいほどに目立っていたことがすべてだと思う。ライトのファールフライを、イチローが得意のフライングキャッチしようとした瞬間、韓国ファンが邪魔になって思うに任せなかった対韓国第2戦直後、「自身の野球人生最大の屈辱」と言い切ったイチローの強烈な口調に、傍観者でしかなかった私は、気が付けばイチローワールドに引き込まれてしまっていたのだ。これまで、はがゆいほどに冷静かつ個人主義で、言葉を選びに選び抜いてきたイチローが吐く言葉だろうかと、耳を疑う発言だったからだ。

しかし、終わってみれば、あのイチローの過激発言は、計算しつくされた、戦略の一部であったことがうかがい知れる。優勝決定後の記者会見でのイチローは、180度変貌し、いつものイチロー節に戻って、極めて冷静な分析発言をしていたからだ。韓国を挑発するかのようなイチローの過激な発言を、どうかなと思った瞬間は確かにあったが、イチローがあそこまでヒーローではなく「ヒール」に徹しなければ、王ジャパンの士気をピークパフォーマンスに持っていくことはできなかったのだ。すべては、イチローの計算ずくだった。アッパレ、イチロー!!

思いがけないイチローのリーダーシップと王監督の知的采配とが相まって、チームジャパンは、持てる力の最大限を発揮することができたのだ。松坂大輔のMVPも、イチローの迫力なくして有り得なかった。その証拠に、松坂大輔は、イチローに心腹しきりだった。

突然アメリカがWBCを企画した当初は、誰もがこんなに盛り上がるなどとは想像もしていなかった。ヤンキースの松井が参戦しないことを決断したことからも、WBCは単なるイベント、シーズンを目前に控え、必死に取り組むような代物ではないという印象が強かった。「どうせ、アメリカかドミニカの勝利でしょ」と、多くの人が思っていたに違いない。ところが、世界最強のアマチュア球団であるキューバが参戦したことによって、WBCの価値が一気に高まって、徐々に選手たちの空気も変わっていった。日本は、メキシコ・韓国だけではなく、キューバにも感謝しなければならない。

任天堂がオーナーであるマリナーズのイチローは、日本チームに合流しやすかったに違いないが、確かにヤンキーズの松井は、微妙な立場だったのだと思う。この晴れ舞台に、松井が居ないことは非常に残念だが、松井には松井の判断(結果的には正しい判断ではなかったかもしれないが)があったのだ。松井には、今シーズンの活躍を期待するしかない。

韓国に負けても負けても這い上がり食い下がって、粘りに粘って手にしたワールドチャンピオン。私たちが忘れかけていた、「ひたむきさ」を思い出させてくれた日本チーム。王監督とともにチームを引っ張るイチローの、「全力疾走」には脱帽だ。真のMVPは、間違いなくイチロー。過激な発言が、チームメイトの甘えを一掃していたのだ。

松坂大輔も良かったが、上原浩治あっての松坂の勝利だ。松坂大輔は、これからの3年間、日本野球界のまさに代表であることを胸に秘めて、一球入魂しなければならない。最後に韓国の監督が、「組織力ではナンバーワン」と日本野球を評価する発言をした重さをかみしめて、WBCを両国の友好にも役立てていかなければならないとしみじみ思う、なんとも言えない勝利の1日だった。
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議員年金廃止法のまやかし 3月20日

2月3日可決成立した国会議員の議員年金を廃止する法律は、それっきり議論にもならなくなってしまった。議員年金廃止法とは名ばかりで、制度の廃止によって10万3千円の掛け金の支払いがなくなった国会議員は、むしろその分の負担が軽減される。議員年金の掛け金自体、議員歳費に上乗せして支給されていたのに、制度が廃止されてもその分の歳費は削減されないのだから、まったく納得のいかない内容なのだ。掛け金を歳費に上乗せしてもらいながら、社会保険料として課税を免れてきたのが議員年金保険料だ。

名ばかりの「議員年金廃止法」は、4月から施行される。在職10年以上の議員は、15%減額して受給するか、掛け金総額の8割を返還してもらうかのいずれかの選択をする。既に年金を受給しているOB議員は、現行より4~10%削減されるが、死ぬまで受給することができる。議員にさしたる痛みはなく、国会議員が掛け金を支払わなくなったぶん国庫負担が増え、血税が投入されることになるので、そもそもの改革の出発点を見失った、何のための改革なのかさっぱりわからない法律になってしまっているのだ。

既に受給している議員OBの受給総額は、年間30億円にものぼる。そのうち約3割の9億円は現職が支払う掛け金で賄い、残り7割21億円を税金で賄ってきた。4月からは支給額が減額されるとはいえ、現職の掛け金がなくなり、約27~29億円の血税が議員OBに投入されることになるのだ。年金受給を選択した在職10年以上の議員にとっては、支給額が15%削減されるものの、掛け金を支払わなくても良いのだから、議員年金廃止法とはいうものの、中身は美味しい美味しいお手盛り法なのだ。開いた口がふさがらない。

在職10年未満の議員も、まったく損をしない。歳費に上乗せされていた掛け金分、4月以降はまるまる掌中にできるのだ。なんともおかしな話である。国会議員は、自分たちが痛みを伴うような法律を、決してつくらない。国民の年金制度の改革を断行する前に、自ら率先して痛みを伴おうとする国会議員は、殆ど皆無なのだ。年金制度の抜本改革の前に、まず議員年金改革からと、当初は言っていたはずなのに、それはどこに行ってしまったのだろうと、つくづく思う。

国会議員年金廃止法がお手盛りのまやかし法なら、地方議員の年金も常識を逸脱している。地方の借金の総額も200兆円を超え、生き残りをかけて市町村合併が加速する一方で、議員が特権を握りしめていたのでは、改革の足を引っ張っているとしか言いようがない。公費負担率が70%の国会議員年金もさることながら、地方議員年金の公費負担率も40%と、相当な額の税金が投入されている。

そもそも、議員は、特権階級であっては真面目に政策立案に取り組むことはできない。議員に特権があればあるほど、自らの保身のための政治になってしまうからだ。地域社会の身近な法律を考える地方議会こそ、本来ボランティアであるべきだ。議員は皆国民年金に加入している。一般国民と同等の年金制度では、老後の生活設計が成り立たないのなら、一旦、議員年金制度を完全に撤廃して、まずやるべきは国民のための年金制度の見直しではないか。政治家が特権階級であっては決してならないということを、議員自身が知ることから、すべては始まるのだ。
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