昨年の7月14日付けの「リテラ」サイトに、美輪明宏さんの発言が紹介されていた。元の記事はスタジオジブリの小冊子「熱風」8月号で、戦後70年に当たって、青木理氏のインタビューを受けたときのものであるという。その美輪明宏さんの発言に瞠目した。やはりこの人は実に鋭い。
日本は世界最強のアメリカの手先になろうとしていると青木氏が言った。それに対して美輪さんは言った。
「そんなに甘く考えたら大間違い。…アメリカ国債を世界で一番持っているのは日本だったけれど、それが追い抜かれちゃって、中国が世界一になった。最近、中国がちょっと景気後退して日本がまた抜き返したけれど、それでも中国はアメリカの国債を大量に保有しています。アメリカ経済をガタガタにしようと思ったらできる。なのになんでアメリカが日本だけの味方をしてくれます? 甘いですよ」
続けて、安倍首相が安保法制で法制化させようとする(その時点で)自衛隊による後方支援について、「要するに兵站でしょう」「その兵站を叩くのは戦争の常識です。そこらへんのシビアさというのは、戦時中の人間でないとわかりません。戦争ってそのぐらい卑劣なものですから」
「もうひとつ、日本は(戦争を不可能にする)抑止力を自分で作っちゃったんです。原発です。日本の沿岸をなぞるように50数カ所も原発をつくっちゃった。今は特攻隊の時代じゃない。ミサイルや無人爆撃機の時代です。原発を狙われたら一巻の終わり」
実に鋭い。日本は「戦争をしない」と決意した国として、誠実な外交力で世界平和を訴え続け、その維持に努め続けるべきだろう。それしかないのではないか。
美輪さんは言う。安倍や石破や麻生にしても、言い出しっぺとして責任を取るべく、また自民党に票を入れた男たちも、年齢に関係なく一兵卒として鉄砲担いで鉄兜かぶって、どうぞ戦地に行ってください、その子や孫も…と。その怒りの発言のニュアンスは、やや投げやりな感じも受ける。本当はもう日本の政治やその先行きを諦めているのかとも思われる。もう80歳を超えたのだ。
美輪さんはその少年時代、長崎で原爆を体験し、その地獄のような悲惨を目撃してきた。三島由紀夫とは芸術家として互いに深く尊敬し合っていた。芝居や美、ロマンチシズムやスピリチュアルに関しては、二人は稀有な天才の同志だったのだ。しかし憲法に関しては全く相反する、異なる考えであったろう。あの三島由紀夫「豊饒の海」の「奔馬」に描かれたものこそ、日本の不合理で危険な原理主義そのものであった。