吉田茂は天皇の選良(エリート)意識が強く、傲慢で、あまり好きではない。彼の署名は「臣 茂」であった。日本人の王として天皇があり、その下に臣民は平等と言うのだが、実は臣と民は位階が違う。臣は天皇の信任を受けた選ばれた人(選良)であり、選良が作り決めたことに、民は従順に従えばよい、とするのである。
しかし吉田は外交官として海外生活が長く、他の日本教(狂)信者とは異なり、彼らとは一線を画した西欧的な合理主義者でもあった。吉田はGHQから憲法草案を示されたとき、強く抵抗し異を唱えたが、その後は護憲を通した。
憲法9条は幣原喜重郎首相の提案であり、幣原やその内閣の吉田、芦田らの外務省出身の閣僚は、ともに若き外交官時代に、アメリカのウッドロー・ウィルソン大統領の理想が元になったパリ不戦条約、ヴェルサイユ条約、国際連盟などを目にしてきたからである。
以下はその吉田の言葉である。
国家正当防衛権による戦争は正当なりとせらるるようであるが、私は斯くの如きことを認むることが有害であると思うのであります。近年の戦争は多くは国家防衛権の名に於て行われたることは顕著なる事実であります。