色皺の品よきジャコウアオイかな
礼文島

タチアオイ(立葵)はここ江東区でも見かけますが、礼文島でこの花(ジャコウアオイ・麝香葵)を見つけた時、花弁の皺に立葵とは異なる、おそらくこの薄紫の色と相まっているからか、品の良さを感じました。そして、齢を重ねるならかくありなん、とも思いました。
美しく齢を重ねる・・・
吉川英治さんの新・平家物語の最終巻「吉野雛の巻」の最終場面が目に浮かびます。講談社・吉川英治文庫「新・平家物語(16)」、376ページ、麻鳥・蓬夫婦を息子の麻丸が吉野山の千本桜のところで見つけた場面です。
「谷を前にした崖ぎわの草の良い所に、二つのまろい背中が見える。— 白髪の雛でも並べたようだ。満山の花に面を向けたまま、行儀よく、そして、いつまでも、ただ黙然と、すわっている。・・・」
377ページの挿絵がこれまた素晴らしい!
ところで、麝香(じゃこう)とは雄のジャコウジカの分泌物から作られる香料で、強心剤、気付け薬などの薬料にもなるとのことです。この麝香葵から麝香の香りがするとのことですが、見つけた時はこのことを知りませんでしたので、香りには全く気が付きませんでした。
花言葉は「温厚」、「柔和」とのこと。何となく納得です・・・