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内外行動日記です。blog復帰しました^ ^

生物学的幅径(Biologic Width)

2009-10-12 21:54:10 | 歯科臨床
以前、『矯正的挺出術』の部分で、生物学的幅径を回復させることが目的と述べましたが、ある患者さんより、「生物学的幅径」って何??って質問を頂きました。
よく考えてみると、歯医者さん向けでわかりづらかったですよね(^^;

生物学的幅径(Biologic Width)とは、ひと言でいうと、
「骨を基準に見た歯と歯ぐきの付着の一定の幅」
のことです。それらは常に決まった幅を持っています。

詳しくは以下に記載します。

写真は、歯と歯周組織(歯槽骨、歯根膜、歯肉)の断面です。
歯は歯槽骨という骨に埋まっており、それを覆うように歯肉(歯ぐき)が存在します。
sulcus (歯肉溝)で、0.69ミリの幅
epithelial attachment (上皮性付着) が0.97ミリの幅
connective tissue attachment (結合組織性付着)が1.07ミリの幅
上皮性付着はヘミデスモゾームにて結合されています。

つまり、生物学的幅径(Biologic Width)は、
0.97 + 1.07 = 2.04ミリ
の幅があることを示します。
ただ、臨床的にはどちらも1.0ミリで扱いますので、2.0ミリです。

なぜsulcus(歯肉溝)が含まれないかというと、頬舌側、近遠心側で幅が違うからです。頬舌的に幅は狭く、近遠心的に幅が広いため、0.69ミリなんて幅だけをを覚えても、全く意味が無いのです。
これは 補綴を行う際に、マージンがScallop形態をとる理由です。

この幅がどんな意味があるのか?

それは、生体は、この幅を保とうとするため、歯垢や歯石が原因で歯ぐきが腫れてくると、骨は幅を保つため、溶ける(吸収する)わけです。
だから歯周病になると
骨が無くなる → 歯ぐきが下がる → 歯が揺れる → 抜ける
といった一連の流れになるわけです。
よく、歯周病は、歯ぐきの病気だと思われやすいですが、歯周病は、生物学的幅径を確保するために、骨が無くなることなので、れっきとした『骨の病気』なのです。

写真は「入門・自家歯牙移植―理論と臨床―」『下地 勲 著』 より



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移植 vs インプラント

2009-10-05 22:37:51 | 歯科臨床

歯が欠損すると治療の幅が驚くほど複雑になります。

ブリッジ、義歯、インプラント、移植

それぞれの利点、欠点をふまえ、個々のニーズに合った最適な治療方針を選択していかなくてはいけません。

今回は移植について記載してみたいと思います。
移植の利点は何と言おうと、歯根膜が存在しているため、術式が成功すれば自分の歯のように咬むことができることです。
上手に出来れば素晴らしい治療方法と思います。
しかし、欠点として、術式が難しいことが挙げられます。

形が規格化されたインプラントと違い、移植するべきドナーの歯の条件と、欠損部位の条件の両方を揃えるのが難しいからです。

歯の形はそれぞれ異なります。
また、歯を抜く時も歯根膜を損傷しないよう注意が必要です。

歯を抜く前に、ドナー歯に矯正的な力を加えてあげると歯根膜がたわみ、より強固な癒着が得やすくなります。
なので、ドナー歯には以前より色々とストレスをかけてあげるといいのです。
いわゆる矯正移植です。

写真のドナー歯は、残念ながら移植に適したドナーとは言えませんでした。
しかし、抜歯した穴を丁寧に形成し、移植した後に要固定してあげることで治癒し、歯として機能させることができました。
歯根膜の持つ機能は本当に素晴らしいものがあります。

私の移植とインプラントの選択基準は、抜歯した直後かそうでないか。です。
抜歯した直後でドナー歯がある場合、移植が第一選択にしています。

そうでない欠損顎堤にはインプラントが適していると思います。
欠損顎堤への移植は、骨を大幅に削る可能性があるため術者としては気が向かないのです。

どちらの手技も外科ですので、外科処置を嫌う患者さんには迷わずブリッジか入れ歯をススめています。

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