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内外行動日記です。blog復帰しました^ ^

超弾性ファイルを用いた根管治療

2010-03-21 20:26:52 | 歯科臨床
歯内療法に、超弾性ファイルを用いる比率が格段に高くなりました。
写真で見ると「クネッ」と急激に彎曲しているのがわかります。
この、急激に曲がることができるのが超弾性ファイルの特徴です。
つまり、根管において、根管の本来の形態を壊すことなく、拡大形成が可能なのです。

歯内療法は、根管治療とも呼びますが、これは、大きく2つに分かれます。
1、抜髄
2、感染根管治療
この2つの処置は似ていますが、目的は全く異なります。

1の抜髄は、むし歯が、エナメル質(C1)→象牙質(C2)→歯髄(C3)と達し、歯髄に炎症が起きた状態に行う処置です。
目的は無髄の状態を作り、今後感染を起こさないように密封してあげることです。

2の感染根管治療は、図のようなファイルを用いて感染歯質(いわゆるむし歯)を徹底除去することが目的です。すると、根尖に起きた病巣も自然治癒力で治癒します。
そこに咬合が加わり、長期に渡りセメント質の肥厚を起こし、生理的な封鎖を目的とします。

感染歯質の除去方法ですが、
歯は、頭の部分の「歯冠」と根の部分の「歯根」に分かれます。
歯冠の部分のむし歯は直視が可能なため、機械的に除去することが多いです。
以前に「う窩処置」の部分で詳しく述べましたのでそちらを参考にすると良いでしょう。

しかし、歯の内部で感染が起こると、歯根の部分に、内面からむし歯ができます。
このむし歯は、直視が極めて困難です。勿論直視をすることも可能ですが、それは、マイクロスコープという顕微鏡を用いて治療を行います。これに関して述べると話がものすごく長くなりますので、マイクロスコープを用いた治療方法に関しては後日述べさせて頂きます。

つまり、通常では直視が困難なために、手指の感覚によるファイルを用いた感染歯質の除去が行われるわけです。
ファイルは以下の2つに分類されます。
1、ステンレスファイル
2、Ni-Tiファイル(超弾性ファイル)

リーマーを昔の先生はよく用いていましたが、リーマーの役割は、Kファイルの中に全て含まれるため、私はリーマーを用いることはありません。
昔の先生はリーマーとHファイルのコンビネーションが多かったイメージです。

私は、基本はKファイル(ジッペラー社、Kerr社、一部のみマニー、デンツプライ三金)
を用いています。
主力はジッペラー社のKファイルです。
ジッペラー社のKファイルは剛性に冨み、根管の走行や、根尖部1/2の形成に向いています。適度な彎曲を前もって付与(プレカーブの付与)することで、根尖部の微妙な彎曲に対応させます。このファイルは先端の切れ味が命なのです。

次にKerr社のファイルですが、そもそもKファイルの名前の由来はこのKerr社にあります。つまり、Kファイルの元祖がKerr社なのです。
Kerr社のファイルは私の個人的なお気に入りです。
今では用いている先生もめっきり少なくなりました。
なぜお気に入りなのか??というと、このファイル、折れないんです。
正確には、ねじれに極めて強いのです。
欠点としては、切れ味に難点があることですが(^^;
これが人気が無くなった理由でしょうか??

私はこれを、根管の探索に向いていますので、私は、♯06、♯08、♯10、♯15、♯20、♯25
♯30くらいまでを揃えています。
要は、根管長の測定に用いるのです。21ミリが最も多く用います。


マニー社のKファイルは♯20、♯25、♯30、♯35のみを用います。
マニー社のファイルはねじれに弱く、個人的には好んで用いないのですが、利点として、
とてもよく「しなる」のです。
つまり、形成された根管を「なぞる」のに適しています。

私の場合は、根管内に、次亜塩素酸Naを満たし、OSADA製エナックの根管治療ツールにマニー製のKファイルをとり付けています。
長さ、太さを調整してフレアー形成に用いるには良いファイルなのです。

と、各社のKファイルの特性について私の主観で勝手に述べさせて頂きました。
知らない人にはマニアックすぎて、ここまで読むことすら不可能でしょう。

これらの技法は、ものすごく熟練された手技です。
経験の浅い歯科医師が治療を行うと、時間がかかってしょうがないのでしょう。
私の場合は、歯医者になって一年目は、この根管治療の勉強に大半を費やしたほどです。
しかし、未だに極めていません。
これには理由があるのですが・・・。
これについては、マイクロスコープについて語る時に詳しく述べます。
とにかく、歯内療法は完璧にやろうと思うと、難しい治療です。
私の主観では、インプラントよりもはるかに難しいです。
特に大臼歯部の治療がはとても困難です。

そこで救世主となるのがNi-Ti ファイルです。
私は現在はプロテーパーと、プロテーパーリトリートメントを用いています。

クラウンダウン法で、根管を上部から安全に形成していきます。
従来のステップバック法や他の方法とは少し異なるのです。
目的は、
1、根管口のロート状拡大
2、根管上部1/2の形成
3、根管下部1/2の形成
です。
従来は、ゲーツのエンジンリーマーを用いて1、2の手技を行っていましたが、
プロテーパーではSxを用いるだけでこの1、と2、の動作が終了できます。
つまり、今までよりはるかに時間短縮され、かつ、制度が上がるのです。
これは、私が行おうと、経験の浅い先生が行おうとほぼ同じ時間と精度が得られます。

あとは、3を従来のKファイルを用いてステップバック法を行おうが、Ni-Tiファイルを用いてクラウンダウン法を行おうと自由です。

根管治療で最も時間がかかるのが上記の1と2なので、これが、1~5分でできるようになると、患者さん側も苦痛を大幅に軽減できるのです。
そして、従来では常識であったアピカルシートの形成は行いません。
こんな動作を行うから根尖から押し出して打診痛の原因を作るのです。

大切なのはファイルの形に根管を合わせることではなく、根管の形に沿ってファイルを合わせてあげることなのです。
そういう意味でNi-Ti ファイルは理に叶っています。

そして、アピカルシートを形成しない、適度なテーパーの付与された根管は、最終形成ファイルと全く同じ号数のメインポイントで根充を行う方法が現時点で最も速く正確であると思っています。
シングルポイント充填です。
根管充填も試行錯誤で色々と試しました。
・側方加圧
・垂直加圧
この垂直加圧が色々な方法が出ています。
オブチュレーション、オピアンキャリア法、JHキャリア、NTコンデンサ法、NTコンデンサ変法、サーマフィル法。
ここ最近はNi-Tiでの形成が増えたため、ちまちま積み立てる方法よりも、シンプルでかつ正確なシングルポイントによる根充が私の現時点での結論です。
そして、シーラーは用いたほうが良いでしょう。

ただただ、Ni-Tiファイルは、価格が高いのが難点なのです。
折れる危険を察知し、常に新しいものを用いるからです。
価格はステンレスファイルの5~8倍します。
新品に取り替える頻度はさらに5倍程度。
つまり、通常の20~40倍ものコストがかかってしまうのです。
保険の制度で行うと大赤字部門になってしまっているというのが悲しい現実なのです
(^^;






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欠損歯の治療を行う際に見る指標1 ~Eichnerの分類~

2010-03-20 07:35:25 | 歯科臨床
歯の治療を行う上で分類していることは以下の3つです。
1、一次医療(主に予防)
2、二次医療(補綴前処置)
3、三次医療(補綴)

基本は補綴前処置(むし歯、歯周病、その他)が終わると、欠損している部位に歯を入れる補綴治療に移行するわけです。

この補綴設計をする際に指標の一つとして多く用いられるのがこのEichnerの分類です。
ヒトは4つの咬合支持域を持っています。
(上下の大臼歯部、小臼歯部で2つ、左右あるので×2)
この支持域と欠損の状態から、
A1~A3
B1~B4
C1~C3 
と分類します。
A群:4つの咬合支持域に全て対合の接触があるものをA群
A1:上下の全歯が揃っているもの。理想的な状態。
A2:対顎に限局的な欠損があるもの。機能的にはほぼ問題なし。
A3:上下顎に欠損あり。 この場合はブリッジで行う場合が多い。無理にインプラントは必要無いか??

B群:対合の接触が1~3のもの。(支持域外の前歯部も含む)
B1:3つの支持域
B2:2つの支持域
B3:1つの支持域
B4:支持域外(前歯部)に支持域があるもの

C群:対合接触が全くないもの
C1:上下に残存歯あり
C2:片方は無歯顎、片方に残存歯あり
C3:上下無歯顎

当然のことながら、C→B→Aの順に重症なわけです。
CからB4あるいはB3へ、B3からB2へ、B2からB1へと持っていくのが欠損歯列の治療法です。理想はA群まで持って行きたいものですが(^^;
B1くらいがゴールになることも多々あります。
それは、このへんだと、入れ歯を装着すると、逆に不快になることが多いからです。
そんなに咬めないわけでもないので、義歯を作製しても、装着しない患者さんが多いのではないでしょうか??
ですが、ここから欠損が進行すると、急激に不便になるわけです。
臼歯部の支持はかみ合わせを決める最重要項目なのです。
ここに残存する歯の1本あたりの生命力を考慮し、補綴設計をします。
残存する歯をコントロールするのは歯周治療であり、むし歯の治療です。
ここでは、歯周病の項目で述べた。
1、Good
2、Guarded
3、Poor
4、Hopeless
の4つの項目から保存、抜歯の判定を行うわけです。

残存歯の処理(補綴前処置)が終わるといよいよ補綴設計に入ります。
補綴設計のツールは以下の4つです。
・インプラント
・ブリッジ
・義歯
・移植(時おり)

CからBへ、B4をB3へあるいはB2へと行う治療では現時点ではインプラントが最も効果が出やすいと言えます。
今度述べるKennedyの分類で言うⅠ級が難しいわけで、要するに、遊離端欠損の義歯はやはり安定度に欠けるといわざるを得ません。

これを中間欠損にするだけでも義歯の効果は大きく異なってきます。
最近はインプラントをそんなツールに用いています。
本数も少なく抑えることが出来るため、とても便利です。

建築と似ていると思うのは、基本設計をしっかりと行うことです。
建築と異なる点は、生物学であることです。
つまり、「柱」である歯や周囲の歯肉が炎症を起こしたりするため、設計の変更を余儀なくされることがあるのです。

「炎症のコントロール」

これが補綴前処置における最大のポイントと言えます。
そのために活躍するのは歯科医師よりも歯科衛生士の役割が大きくなることが多いのです。

歯科医師を術者とすると、患者さんと術者は目線が異なるものです。
そこの橋渡しをしてくれるのが歯科衛生士さんなのです。
術者側、患者側、両方の視線から両者をサポートします。
歯科衛生士は歯科治療におけるハイブリッドな役割を果たしてくれるのです。



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