元外資系企業ITマネージャーの徒然なるままに

日々の所感を日記のつもりで記録

(SLS - 19) I left my heart in 高円寺 Ver 1.1

2014-09-15 12:45:41 | ショートショート
休みの日の朝、俺はのんびりと本を読みながらラジオを聴いていた。妻は買い物に行き、大学生の息子はまだ寝ている、高校生の娘は部活で学校に行く準備をしている。休みでも旅行に行くわけでもないし、特別な心躍る用事があるわけでもない、こんな退屈な何気無い瞬間にふと幸せを感じる事がある。ラジオから喜多篠忠作詞、吉田拓郎作曲で中村雅俊が歌う「いつか街で会ったなら」が流れてきた。「何気ない毎日が風のように過ぎて行く」と言う歌詞から始まるこの歌は、俺がまだ大学生の頃に流行った曲だ。その頃、俺は当時の地方から出てきた学生が誰でもそうであったように、四畳半の古ぼけた安アパートに住んでいた。ワンルームマンションがまだ無かった時代、もちろん部屋にお風呂はついていないし、トイレは共同、週に2、3回行く銭湯が楽しかった。アパートの場所は高円寺、そんな貧しい大学生活でも同じ大学に通う女子大生と恋をしていた。彼女は高円寺に不動産業を営む家族と住んでいた。朝、駅で待ち合わせをして彼女と大学に行き、大学でダラダラとみんなでおしゃべりして過ごし、夕方はバイトで、帰りはアパートの近くの屋台の焼き鳥屋で一杯200円の日本酒と1本50円の焼き鳥を6本食べて500円払って帰る。そんな何気ない毎日を過ごしていた。卒業が決まった彼女と留年が決まった俺。彼女は一流企業に就職した同級生を選んだ。俺はとても傷つき高円寺に住んでいられずに、逃げるように大学の近くの下宿屋に移り住んだ。
ふと高円寺に行ってみようと思った。

相変わらず人が多い高円寺、アパートやワンルームマンションが多いので、特に若者が多い。北口を出てすぐ左に曲がり線路沿いの商店街を阿佐ヶ谷方面に行く。大学の頃に通った道だ。彼女の父がやっていた小さな店舗の不動産屋はもうない。彼女は家族と店とは違う場所に住んでいた。もう少し歩くとその家に着く。木造の家はほとんどがコンクリートのビルか、マンションに変わっている。彼女の家は昔から鉄筋コンクリートなので、昔と変わらずに同じ場所にあった。表札に彼女の名前が書いてある。昔と名字も名前も変わっていない。同級生と結婚したとばかり思っていたが、まだ一人なのか?それとも離婚したのか?あの同級生が養子に入ったのか?でも彼の名前は表札にはない。いろいろな思いが交錯した。昔、高円寺を去る時に 「I left my heart in 高円寺」と口ずさんだのを覚えている。元歌は「霧のサンフランシスコ」とも「思い出のサンフランシスコ」とも言われている昔の歌。「ニューヨークやパリは華やかでも寂しい。僕の心は君の住むサンフランシスコに残して来た」と歌う歌と同じ気持ちだったからだ。中村雅俊が歌うように「別れた彼女といつか街で会ったなら、肩を叩いて微笑みあおう」と言う気持ちにはなれない。結婚が全てではないし、結婚したからと言って幸せになるとは限らないし、一人でも幸せな人はたくさんいる。でも、何故か?昔とても死ぬ程愛した彼女が、今も変わらない名前で住んでいるのは寂しい。今回も「 I left my heart in 高円寺」と口ずさみながら帰りの電車に乗った。

(SLS - 18) アイビーファッションの彼女

2014-09-14 17:25:57 | ショートショート
「どうしたのカナ、アイビーなんかで決めて?」服部えみりは、岡崎香奈の昭和っぽいが、どことなく最新っぽいファッションに驚きながら言った。
「たまにはいいでしょ?これお母さんに借りたの?ハマカジって言うの?昔流行ったみたいよ」確かに今時、紺ブレに白のオックスフォードのボタンダウンシャツを着ている女の子はいない。流石に下はジーンズをはいて来たが、こんなプレップスタイルはかえって新鮮に映るようだ。こんなところにも過去何回とアイビーがブレイクした理由があるに違いない。
「あなたのそのYシャツ見ていたら急に彼に会いたくなったわ」
「やめてよ、そのYシャツって表現、昭和っぽいじゃん、ボタンダウンとか、他に言い方ないの、それはそうと、えみりに彼氏いたっけ?」
「いないわよ、出来たら一番にカナに言うわ。青木圭介と言ってうちの大学の三年生でラグビーやってて、週末は茅ヶ崎のライブハウスでギターを弾いているの。結構、彼のファンっているのよね」
「へえー全然知らないわ」
「で、そのギターを弾く時の衣装がいつもジーンズに白のボタンダウンなんだけどロックに何故か似合うのよね。ねえ今晩行かない?」

「どう彼、結構いけてるでしょ?」えみりは茅ヶ崎の海に面した国道134号線沿いにある「エルビス」と言う店にカナを連れて来て言った。
「確かに人気があるのがわかるわ」
「あなたも彼のファンなの?」カウンターの中で店員の女の子が言った。
「えっどうしてですか?」カナはびっくりした様に聞いた。
「結構白のボタンダウンでうちの店に来る子がいるから、彼はアイビーに夢中だし。昔からアイビーの好きな男の子は何とか夢中って言われていたみたいよ。VAN夢中とか」
演奏が終わると青木圭介は、カナとえみりのいるカウンターに急いでやって来た。
「それ、ブルックスブラザーズの紺ブレでしょ」青木は目を輝かせて言った。
バイク夢中と別れた日にアイビー夢中に恋に落ちる私って?

(SLS - 17) アップルティーと彼女

2014-09-13 09:13:09 | ショートショート
俺はバイクが好きだ。まだ250CCのバイクだが、いつかはハーレーダビットソンに乗るつもりだ。この間ハーレーがデモしていた電気ハーレーダビットソンは素晴らしかった。電気で回るモーターの音はまるでジェット機である。ガソリンエンジンでハーレー特有のポタイトポテイトと言うダサい音ではない。ハーレー好きの人達にはこの音がたまらないらしいが、俺には時代遅れに聞こえる。
休みにはかならずツーリングで遠出する。今日は何故かツーリングの途中で俺は彼女に呼び出された。彼女の家の近くのガストで待っていると、アイビーファッションで身を包んだ彼女が現われた。俺はいやな予感がした。
「どうしたんだいアイビーなんかで?」
「お母さんに借りて来たの、昔流行ったハマカジらしいけど、私はアイビーなんかに全然興味がないのよ。あなたは好きだったはわね」
「好きだね、あの昔から変わらない定番。良い物っていつの時代も変わらないんだ」、俺はますます不安になって来た。多分、俺の嫌な予感は的中する。
「ガストにはアップルサイダーはないのね、代わりにアップルティーを持って来た」ドリンクバーだけオーダーした彼女は飲み物を取りに行った。
俺の嫌な予感はほぼ100%的中だ。
「ごめんなさい、もうわかっていると思うけど、私これ飲んだら帰るけど、あなたはもう、そのツーリングとやらに行ってもいいのよ」
やはり予感が当たった。片岡義男さんの「アップルサイダーと彼女」と言う短編小説集の中に、アイビーファッションに身を包んだ彼女が別れを告げる小説がある。オートバイ好きの俺は彼女にオートバイ小説の多い片岡義男さんの本をかなり貸した事を思い出した。いつかは彼女とタンデムと思っていたが、当分また一人のツーリングとやらが続きそうだ。

(SLS - 15) 初恋

2014-09-13 08:47:40 | ショートショート
「昔、親父の話だとここに伝説の「北京亭」があったそうだ。」茅ヶ崎駅前の線路添いの飲食店が並ぶ一角を見ながら青木光雄は言った。
「へえー、茅ヶ崎には随分昔から伝説のラーメン屋さんがあったのね?茅ヶ崎と言えばサザンしか知らないけど」、と長野から出て来て今春から横浜国立大に通う河合梓は言った。二人は横浜国立大に通う同級生、湘南サウンド好きの両親の影響で青木は生まれてからずっと茅ヶ崎で育った。
「親父の話だとその北京亭には行列の出来るタロー麺と言う伝説のラーメンがあったそうだが、今はそのタロー麺を出す店はもうない。でもその代わりここの店は神奈川県名物のサンマーメンが美味い」
「ええ、やだ私ラーメンにサンマ入ったやつ、あまり美味しそうじゃないけど」
「いや何故かは俺も知らないけれど、サンマは入っていない。普通の野菜のあんかけラーメンって感じなんだけど、これが美味い」
二人は店に入ってサンマーメンを注文した。
「あんがかかっているから、とても熱いわ」梓が言った。
「ここの店のあんは、普通の片栗粉じゃなくて、本物のカタクリを使っているんだ。普通の片栗粉はジャガイモだろ、ちょっと違うと思わない」
「そうぉ?私にはまだ熱くてあんの味までわからないわ」
「カタクリの花言葉知ってる?」
「知らないわよ、カタクリって花が咲くの?葉っぱと球根だけかと思った」
「そうだよ綺麗な花が咲くんだ」
青木はそう言ってサンマーメンを一心不乱に食べ始めた。
「ねぇ、その花言葉って何なの?途中で話しをやめないで知っていたら教えてよ」
「初恋って言うんだ」

フォーチュントップ500会社のトップの平均的一日の過ごし方

2014-09-07 08:28:35 | ショートショート
フォーチュントップ500会社のトップの平均的一日の過ごし方。エクササイズに45分、仕事を離れたソーシャル活動に週8時間、自己啓発に30分。自己啓発の時間があまりに少ない気がするが、このソーシャル活動での、いろいろな人的ネットワーク構築維持がきっと大事なんだろうな!

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