1.「ブルータス 2015年5月15日号」を選び、以下どうのような視点で特集及び記事がつくられているのか分析します。
2. 構造
特集は「居住空間学2015」でサブタイトルは「手がかかる部屋」。特集に関する記事がほとんど約90%を占める。その他はベストベッツでお勧め商品の紹介。全体的に写真を多用し記事のタイトルと写真だけで十分楽しめ、また伝えたい内容がイメージしやすいので理解できる。記事の本文はフォントは小さく、最初は読む気がしない。しかし一度読むと自分がイメージした内容とは違っていたり、新たな発見があったりと記事も楽しめる。
3.どのような視点なのか
3.1 新しいライフスタイルの提案
「僕たちは編集しながら生きている」の著書の中で後藤繁雄さんは、「商業誌というのは、「マーケットの中で生きている生物」」と言い、「70年代に入ると、「カタログ誌」「情報誌」「ライフスタイル誌」などが次々に現れてきます。」、そして「生活の編集へ、新しいライフスタイルを提案している」と言っています。私は普段こういった商業誌を読まないので、この号のブルータスがカタログ誌なのか、情報誌なのか、ライフスタイル誌なのかわからない。ただマーケットの中で生きている商業誌と言う言葉がぴったりである。特にこの「新しいライフスタイルの提案」と言う言葉がぴったりくる編集である。都市部を始め空き家対策は重要な行政課題である。サブタイトルの「手がかかる部屋」が表すようにこの本に登場する家は、どれも築年数が古い家ばかりであり、相当手を入れないと住めそうにない。しかしその家を自分達の価値観やライフスタイルに合わせて改造して住む事例の紹介は、たくさんある古い空き家を利用すれば、こんなに素晴らしい生活が送れると言う「新しいライフスタイルの提案」が十分に伝わるメッセージである。
3.2 広告と記事のコラボレーション
「スターツの居住空間学2015」は、最初広告なのか記事なのか分からなかったが、実際の物件の詳細まで載せているのでおそらく広告であろう。特集記事に合わせて広告をうまく組み込み広告料収入が見込める編集は一石二鳥である。これはまさに後藤さんの言う雑誌が売れない時代に如何に生き残るか、すなわち「生き物」である事を痛感する。
3.3 広告に独自の新しい効果をあげる
この講座のテキスト「私たちのデザイン4 編集学」に書かれている「都市再生においても、その土地、その場、時代に即していかに再編集して新たな魅力ある都市に再生するかという観点でも編集力が問われてます。」と書かれてあり、この雑誌で紹介されているスターツの行う街づくりは、まさに都市再生と言う編集作業そのものである。また、都市の編集作業を広告とは意識させずに雑誌の記事にする編集術は、まさに外山滋比古著「エディターシップ」による「部分を新しいコンテクストの中に入れて独自の新しい効果をあげる点でもっとも目ざましいのが、雑誌の編集技術である。」、と言う概念そのものであると感じる。
4.さいごに
今まで雑誌は買うことも見ることもなかったが、今回編集を学び商業誌を見る目も変わった。このブルータス一冊の本の中には最先端の編集理論が詰まっていることがわかり、今後は編集者の観点からも雑誌を注意して読みたいと思った。