◎大洪水の物語 3 シュメル神話の世界より 2
★シュメル神話の洪水伝説
2 「ギルガメシュ叙事詩」第11書板の「大洪水の物語」
・以下、おもに「ギルガメシュ叙事詩」 矢島文夫 訳 ちくま学芸文庫
および、「ギルガメシュ叙事詩」 月本昭男 訳 岩波書店
によります
◎「ギルガメシュ叙事詩」の発見
・1854年、イギリス隊がニネヴェで、アッシリア王アッシュルバニパルが建てた図書館を掘り当て、2万枚以上の楔形文字で書かれた粘土板文書が出土し、そのほとんどが大英博物館に持ち込まれた
1872年に、大英博物館で遺物の修理員として働いていたイギリスの研究者のジョージ・スミスがその書板のなかに、創世記の洪水物語に似た作品を発見した
それが12の書板からなる「ギルガメシュ叙事詩」の第11書板である
その後、「ギルガメシュ叙事詩」の他の部分もアッシュルバニパル図書館出土文書のなかから次々に発見された(アッカド語(アッシリア語)で書かれていた)
・「ギルガメシュ叙事詩」の約半分しか残っていない
◎「ギルガメシュ叙事詩」標準版
・アッカド語は、古アッカド語、古・中期・新アッシリア語、古・中期・後期バビロニア語、周辺バビロニア語など様々な「方言」に区分されるが、前2000年紀末以降の宗教文書や文学作品などに広く用いられたアッカド語を標準バビロニア語と呼ぶ
アッシュルバニパル図書館出土の「ギルガメシュ叙事詩」のアッカド語(アッシリア語)は標準バビロニア語である
・古バビロニア版の発見によって、「ギルガメシュ叙事詩」は古バビロニア時代(前1950~1530年)にすでに成立していたことが判明した
「ギルガメシュ叙事詩」はシュメル語のギルガメシュ諸伝承をもとに、古バビロニア時代に成立し、中期バビロニア版の時代をへて、前12世紀ごろに標準版として成立したとされる
・標準版の作者ないし編者は、呪術祭司シン・レキ・ウンニンニである可能性が高い
◎「ギルガメシュ叙事詩」の主人公ギルガメシュ
・「ギルガメシュ叙事詩」とは後の学者がつけた書名で、第1の書板の冒頭の部分は
「すべてのものを見た人」あるいは「あらゆることを見た人」あるいは「深淵を覗き見た人」と訳され、「すべてを見たる人」「あらゆることを見た人」あるいは「深淵を覗き見た人」とはギルガメシュのことで、これが古代の書名でもあった(古代には作品の出だしの言葉をとって題名にする習慣があった)
★ギルガメシュは前2600年頃のシュメルの都市国家ウルクの王であったが、おそらく死後まもなくして神格化されていった
◎「ギルガメシュ叙事詩」の主人公ギルガメシュは3分の2は神、3分の1は人間の半神半人として描かれている
★「ギルガメシュ叙事詩」標準版(第12の書板が加えられる前の)の構成
1 ギルガメシュとエンキドゥとの出会い(第1~第2の書板)
2 「杉の森」への遠征(第3~第5の書板)
3 イシュタルと「天の牛」(第6の書板)
4 エンキドゥとの死別(第7~第8の書板)
5 「不死の生命」探求の旅(第9~第11の書板)
◎あらすじ
1 ギルガメシュとエンキドゥとの出会い(第1~第2の書板)
○第1の書板
・ギルガメシュは英雄であるとともにウルク市の暴君として登場
・アヌ神(イシュタル女神の父)はギルガメシュを懲らしめるために野人エンキドゥをつくった
・エンキドゥは神聖娼婦シャムハトと交わり人間となる
○第2の書板
・エンキドゥはシャムハトに連れられてウルクにやってくる
ギルガメシュとエンキドゥは格闘するが決着がつかず、互いの力を認め2人は友情で結ばれることになった
・ギルガメシュはエンキドゥに怪物フンババ(「杉の森」の番人)を倒すために「杉の森」への遠征を提案する
2 「杉の森」への遠征(第3~第5の書板)
○第3の書板
・ギルガメシュとエンキドゥは「杉の森」へ遠征することになり、ギルガメシュは母ニンスン女神に遠征に行くことを告げると、ニンスンは2人の加護を太陽神シャマシュに祈る
○第4の書板
・旅の途中で、ギルガメシュは夢を見た
その夢はエンキドゥによって、フンババ退治のお告げと解釈された
・フンババの叫び声にギルガメシュは恐怖をいだくが、エンキドゥに鼓舞されて2人は
「杉の森」に到着した
○第5の書板
・太陽神シャマシュの風の援軍の助力を得て、2人はフンババを制圧した
・フンババは命乞いをしたが、エンキドゥはフンババ殺害を主張し、フンババは殺害される
・2人は杉の木を伐採し、筏に組んでニップル市に運んだ
3 イシュタルと「天の牛」(第6の書板)
・姿を整えたギルガメシュに女神イシュタル(ウルク市の都市神、豊穣と愛の女神)が想いを寄せるが、ギルガメシュは求愛を拒絶する
イシュタルは父のアヌ神に嘆願して、ギルガメシュに対する懲らしめとして暴れ回る「天の牛」を作らせるがギルガメシュとエンキドゥはこの「天の牛」を殺してしまう
4 エンキドゥとの死別(第7~第8の書板)
○第7の書板
・フンババと「天の牛」を殺したエンキドゥの死が定められ、エンキドゥは死んでしまう
○第8の書板
・ギルガメシュはエンキドゥの死を悼み、手厚い葬儀を行なった
5 「不死の生命」探求の旅(第9~第11の書板)
○第9の書板
・エンキドゥの死を目の当たりにしたギルガメシュは、死への恐れから、不死を得た人ウトナピシュティムを訪ねる旅に出る
ウトナピシュティムに生と死の秘密を聞き出すためであった
旅の途中、マーシュの山のふもとで蠍(さそり)人間に会い、蠍人間からこの山を越える道を聞き出し、暗黒の道を通り抜けて、貴石や果樹に輝く海辺にたどりついた
○第10の書板
・海辺でギルガメシュは酌婦シドゥリと出会う
・シドゥリはウトナピシュティムのもとに行くためには「死の水」を渡らなければならないが、舟師ウルシャナビが案内してくれるだろうと言った
ギルガメシュは単独航海しようとして失敗し、ウルシャナビに案内を願い、共に「死の水」を渡ってウトナピシュティムのもとにたどり着いた
ウトナピシュティムは、人間は神々によって死ぬべき存在として定められている、死については、その日を知ることはできないと言った
○第11の書板
・ギルガメシュはウトナピシュティムに「不死」について尋ねると、ウトナピシュティムは「大洪水の物語」を語った
この後、ウトナピシュティムはギルガメシュに7日間眠らずにいる試練を課すが、ギルガメシュは眠気に負けてしまう
ウトナピシュティムは妻のとりなしによって、ギルガメシュに「若返りの草」のありかを教える
ギルガメシュはこの草を得たが、帰路水浴びをしている隙に、草を蛇に取られてしまう
・ギルガメシュは不死の生命の獲得に失敗し、ウルクに戻り城壁建築などをなしとげた
◎「大洪水の物語」は「ギルガメシュ叙事詩」の本筋には特に関係のないエピソードである
★「ギルガメシュ叙事詩」標準版は、元来、第11の書板で終わっていたらしい
◎新アッシリア時代(前1000~609年)になって、「ビルガメシュ神、エンキドゥと冥界」の物語の後半が、「ギルガメシュ叙事詩」の第12の書板として挿入された
★シュメル神話の洪水伝説
2 「ギルガメシュ叙事詩」第11書板の「大洪水の物語」
・以下、おもに「ギルガメシュ叙事詩」 矢島文夫 訳 ちくま学芸文庫
および、「ギルガメシュ叙事詩」 月本昭男 訳 岩波書店
によります
◎「ギルガメシュ叙事詩」の発見
・1854年、イギリス隊がニネヴェで、アッシリア王アッシュルバニパルが建てた図書館を掘り当て、2万枚以上の楔形文字で書かれた粘土板文書が出土し、そのほとんどが大英博物館に持ち込まれた
1872年に、大英博物館で遺物の修理員として働いていたイギリスの研究者のジョージ・スミスがその書板のなかに、創世記の洪水物語に似た作品を発見した
それが12の書板からなる「ギルガメシュ叙事詩」の第11書板である
その後、「ギルガメシュ叙事詩」の他の部分もアッシュルバニパル図書館出土文書のなかから次々に発見された(アッカド語(アッシリア語)で書かれていた)
・「ギルガメシュ叙事詩」の約半分しか残っていない
◎「ギルガメシュ叙事詩」標準版
・アッカド語は、古アッカド語、古・中期・新アッシリア語、古・中期・後期バビロニア語、周辺バビロニア語など様々な「方言」に区分されるが、前2000年紀末以降の宗教文書や文学作品などに広く用いられたアッカド語を標準バビロニア語と呼ぶ
アッシュルバニパル図書館出土の「ギルガメシュ叙事詩」のアッカド語(アッシリア語)は標準バビロニア語である
・古バビロニア版の発見によって、「ギルガメシュ叙事詩」は古バビロニア時代(前1950~1530年)にすでに成立していたことが判明した
「ギルガメシュ叙事詩」はシュメル語のギルガメシュ諸伝承をもとに、古バビロニア時代に成立し、中期バビロニア版の時代をへて、前12世紀ごろに標準版として成立したとされる
・標準版の作者ないし編者は、呪術祭司シン・レキ・ウンニンニである可能性が高い
◎「ギルガメシュ叙事詩」の主人公ギルガメシュ
・「ギルガメシュ叙事詩」とは後の学者がつけた書名で、第1の書板の冒頭の部分は
「すべてのものを見た人」あるいは「あらゆることを見た人」あるいは「深淵を覗き見た人」と訳され、「すべてを見たる人」「あらゆることを見た人」あるいは「深淵を覗き見た人」とはギルガメシュのことで、これが古代の書名でもあった(古代には作品の出だしの言葉をとって題名にする習慣があった)
★ギルガメシュは前2600年頃のシュメルの都市国家ウルクの王であったが、おそらく死後まもなくして神格化されていった
◎「ギルガメシュ叙事詩」の主人公ギルガメシュは3分の2は神、3分の1は人間の半神半人として描かれている
★「ギルガメシュ叙事詩」標準版(第12の書板が加えられる前の)の構成
1 ギルガメシュとエンキドゥとの出会い(第1~第2の書板)
2 「杉の森」への遠征(第3~第5の書板)
3 イシュタルと「天の牛」(第6の書板)
4 エンキドゥとの死別(第7~第8の書板)
5 「不死の生命」探求の旅(第9~第11の書板)
◎あらすじ
1 ギルガメシュとエンキドゥとの出会い(第1~第2の書板)
○第1の書板
・ギルガメシュは英雄であるとともにウルク市の暴君として登場
・アヌ神(イシュタル女神の父)はギルガメシュを懲らしめるために野人エンキドゥをつくった
・エンキドゥは神聖娼婦シャムハトと交わり人間となる
○第2の書板
・エンキドゥはシャムハトに連れられてウルクにやってくる
ギルガメシュとエンキドゥは格闘するが決着がつかず、互いの力を認め2人は友情で結ばれることになった
・ギルガメシュはエンキドゥに怪物フンババ(「杉の森」の番人)を倒すために「杉の森」への遠征を提案する
2 「杉の森」への遠征(第3~第5の書板)
○第3の書板
・ギルガメシュとエンキドゥは「杉の森」へ遠征することになり、ギルガメシュは母ニンスン女神に遠征に行くことを告げると、ニンスンは2人の加護を太陽神シャマシュに祈る
○第4の書板
・旅の途中で、ギルガメシュは夢を見た
その夢はエンキドゥによって、フンババ退治のお告げと解釈された
・フンババの叫び声にギルガメシュは恐怖をいだくが、エンキドゥに鼓舞されて2人は
「杉の森」に到着した
○第5の書板
・太陽神シャマシュの風の援軍の助力を得て、2人はフンババを制圧した
・フンババは命乞いをしたが、エンキドゥはフンババ殺害を主張し、フンババは殺害される
・2人は杉の木を伐採し、筏に組んでニップル市に運んだ
3 イシュタルと「天の牛」(第6の書板)
・姿を整えたギルガメシュに女神イシュタル(ウルク市の都市神、豊穣と愛の女神)が想いを寄せるが、ギルガメシュは求愛を拒絶する
イシュタルは父のアヌ神に嘆願して、ギルガメシュに対する懲らしめとして暴れ回る「天の牛」を作らせるがギルガメシュとエンキドゥはこの「天の牛」を殺してしまう
4 エンキドゥとの死別(第7~第8の書板)
○第7の書板
・フンババと「天の牛」を殺したエンキドゥの死が定められ、エンキドゥは死んでしまう
○第8の書板
・ギルガメシュはエンキドゥの死を悼み、手厚い葬儀を行なった
5 「不死の生命」探求の旅(第9~第11の書板)
○第9の書板
・エンキドゥの死を目の当たりにしたギルガメシュは、死への恐れから、不死を得た人ウトナピシュティムを訪ねる旅に出る
ウトナピシュティムに生と死の秘密を聞き出すためであった
旅の途中、マーシュの山のふもとで蠍(さそり)人間に会い、蠍人間からこの山を越える道を聞き出し、暗黒の道を通り抜けて、貴石や果樹に輝く海辺にたどりついた
○第10の書板
・海辺でギルガメシュは酌婦シドゥリと出会う
・シドゥリはウトナピシュティムのもとに行くためには「死の水」を渡らなければならないが、舟師ウルシャナビが案内してくれるだろうと言った
ギルガメシュは単独航海しようとして失敗し、ウルシャナビに案内を願い、共に「死の水」を渡ってウトナピシュティムのもとにたどり着いた
ウトナピシュティムは、人間は神々によって死ぬべき存在として定められている、死については、その日を知ることはできないと言った
○第11の書板
・ギルガメシュはウトナピシュティムに「不死」について尋ねると、ウトナピシュティムは「大洪水の物語」を語った
この後、ウトナピシュティムはギルガメシュに7日間眠らずにいる試練を課すが、ギルガメシュは眠気に負けてしまう
ウトナピシュティムは妻のとりなしによって、ギルガメシュに「若返りの草」のありかを教える
ギルガメシュはこの草を得たが、帰路水浴びをしている隙に、草を蛇に取られてしまう
・ギルガメシュは不死の生命の獲得に失敗し、ウルクに戻り城壁建築などをなしとげた
◎「大洪水の物語」は「ギルガメシュ叙事詩」の本筋には特に関係のないエピソードである
★「ギルガメシュ叙事詩」標準版は、元来、第11の書板で終わっていたらしい
◎新アッシリア時代(前1000~609年)になって、「ビルガメシュ神、エンキドゥと冥界」の物語の後半が、「ギルガメシュ叙事詩」の第12の書板として挿入された