先週の月曜日は「社員」の定義についてお話ししました。今日はもっと広い概念である「労働者」についてお話しさせていただきます。
労働基準法(労基法)上の「労働者」とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」のことです。雇用契約を結び、会社から直接賃金が支払われていれば、労働者になるのは明白です。
問題なのは、そうでない場合でも労働者とされることがあることです。
労基法の労働者にあたるかどうかを判断するにあたっては、まず、指揮監督のもとに働いているかどうかを考慮します。
仕事の依頼や業務内容の指示に対して諾否の自由度が少なければ少ないほど、労働者性は高くなります。業務遂行をする際に指揮監督下にあるかどうか、働く場所を拘束されているかどうかなども考慮されます。
得られている報酬が、労務の対償といえるかどうかも問われます。
そのほか、使っている道具などは会社と働いている人のどちらが負担しているのか、報酬の額がどの程度なのか、ほかの会社で業務に従事する時間がどの程度あるか、なども判断材料となります。
例えば、ある者に対して業務委託(民法上の準委任)契約を結び、ある作業を依頼したとします。委任ですから雇用関係にはない、つまり少なくとも形の上では依頼者の労働者ではありません。
しかし、その者に対して依頼者が指定する仕事の進め方に対して拒否権がなく、監督者に細かく指されし、働く場所も指定されると、労働者性は高くなります。最近では、フードデリバリー配達員が事業主なのか、それとも労働者なのかが話題になっています。
労働者性が問題になるのは、労働者でなければ守られないことが多くなるからです。
労働者であれば労基法が適用されますので、依頼者はその決まりに沿った対応をしなけなりません。また、労働者災害補償法も適用されますので、業務上のけがや病気に対して補償が給付されます。
労働者でなければ1日に何時間でも、また1日の休みもなく働かされる可能性があります。業務上のけがをしても補償はありません。国民健康保険に入っていたとしても、通院や入院代の3割は負担しなければなりませんし、休んだ日の報酬はどこからも補われません。
会社にとっても、働く者にとっても、労働者性は重要な問題なのです。
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