みなさん、こんばんは。hkです。
先日の報道で、会計検査院が国の2020年度決算の検査報告を岸田首相に提出したとありました。それによると、「アベノマスク」と呼ばれた布製マスクが今年3月末時点で約8272万枚(約115億相当)が配布されず、昨年8月から今年の3月までのそれらの保管費が約6億円に上ったことが判明したそうです。
配布することを発表したのが昨年の4月1日。確かに不識布マスクがなかなか手に入らない時期でした。側近が「全国民に布マスクを配布すれば、不安はパッと消えます」と進言したとの記事もありました。
ただ、サイズが不識布マスクより小さいうえに、配布されたマスクの中には異物が混入していたものがあったり、配布時期が予定よりかなり遅れたりということもあり、全体的には不評でした。
実際、私の家に届いたときには十分な量の不識布マスクが手に入っており、一度も利用したことはありません。結果的には資源の無駄遣いとなっています。
ただ、100%失政だったかというと、いまはそうは思ってはいません。アナウンスの仕方が足りなかったのではないか、という気もしています。それは昨年の7月に、「井上栄著『感染症 増補版』中公新書」という本を読んでからの思いです。初版の発行は2006年12月。新型コロナウイルスを受けて2020年4月に増補版が出ました。
以下、初版からあった「第5章 新型インフルエンザ」のなかの記述を長くなりますが引用します。
インフルエンザウイルスの伝播経路を考えてみれば、ウイルスが環境中に散布されるのは口からだけであり、それ以外の場所はない。その大元をおさえるのが、患者のマスク使用である。(中略)
マスクは3種類比較した。すなわち、70円の16層ガーゼのマスク、20円の不識布マスク(3層)、5円の紙マスク(2層)である。結果は、どのマスクでも風速は10分の1以下に減弱した。
咳風速が低下するということは、飛沫がとぶ速度も低下することであり、飛沫の飛散量が減り、同時に生ずる飛沫核の量も減るだろう。(中略)
そこで次の提案をしたい。新型インフルエンザ発生時には、政府が無料マスクを国民全員に配る。(中略)
伝染病対策として、患者隔離という古典的な対策がある。(中略)だが、たくさんの患者が発生したら隔離するスペースの不足が起こる。しかしインフルエンザの患者にマスクをしてもらうことは、隔離と同じ効果をもち、かつ、実行可能な方策なのだ。
著者は国立予防衛生研究所感染症疫学部長や国立感染症研究所感染症情報センター長などを務めた方です。専門家が常に正しいことを言うとは限りませんが、それなりの権威がある方には変わりないでしょう。そして、権威ある方が「マスクを全国民に配布する」ことを提案していたわけです。
アベノマスクを考えたスタッフがこの本を読んでいたかどうかは知りません。でも、なぜ布マスクを国民に配布するのかを、もっとていねいに、かつ科学的に説明していれば、あれほどの批判は出なかった気がしています。
とはいえ、全体としてはプラスの評価ができないと個人的には思います。野党にもっとがんばってもらいたいですね。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます