心を込めて

心の庵「偶垂ら庵」
ありのままを吐き出して 私の物語を紡ぎ直す

アイスの蓋事件

2022-12-07 17:34:19 | かなしい記憶

中学生の時、アイスクリームの蓋で一つ違いの兄と揉めたことがあった。

兄妹が多いと食べ物の取り合いになる。冷凍庫にアイスクリームがあったので食べることにした、2種類2個あった、皮算用するとこのアイスクリームは兄と私のものになる。通常なら2個あったら三人兄弟の場合ヒエラルキーの関係で私の分は無い予定だ、しかし先着二名様なら証拠は隠滅される、後でごみ箱を見て妹に糾弾されるだろうが、現物が無ければどうしようもない。

妹の帰宅は遅い予定だった兄はそろそろ帰宅する、先着二名様だ、兄も私も好きではないアイスを選んで蓋を開けた。しかしふと思った「何故、私は好きなアイスを選んではいけないのだろうか?」兄の為に「なぜいつも自分が損をしなければならないのだろうか?」いつもいつも嫌な役目は嫌だった。強い立場の者に損切りすればよかったのだが、家族の中でいつも虐げられることに嫌気がさしていた。思い直して嫌いなアイスの蓋を戻し好きなシャーベットを選んで食べた。革新的な気分だった。

兄はどうやら二個あったアイスの存在を昨夜のうちにチェックしていたようだ。帰宅後遊んでいたファミコンの手を止め冷凍庫に向かう、そして好きではないアイスしか存在しないことに憤慨し怒り出した。時間的に食べたのは私だと思い至り私の胸倉をつかんで問答になった。「俺のアイスを食べたな!」「俺のではないでしょ」いつも先着順という通り文句で好き勝手していた兄に、私が冷静に答えたら話の矛先が変わった。

「蓋を開けた形跡がある元に戻せ」「好きじゃないアイスだから戻したんだろう」「いったん手を付けたのなら責任を持って嫌いなアイスを食べるべきだった」正論ではある。しかしもう食べてしまったものは戻せない、アイスの蓋も然りだ。「いったん開けた蓋は開けただけだし、開けた蓋を無かった状態に戻すなど不可能だ、ならば買い直してくればいいのか?」「自分が食べたくないアイスだったから腹が立っただけでしょう」兄は激昂し胸倉をつかんだまま私を床に押し倒した、怖くなって必死に喋った「じゃあ、どうすればいいのよ!」兄は黙った、そして「自分で考えろ」と言った。

私は兄に組み敷かれて今にも殴られそうだ、睨み合いながらこのシュールな状況を遠くから眺めている感覚と、どうしたらこの状況が改善されるのか必死に考える自分がいた。謝っても許されない場合、どうしたらいいのか私には今もわからない。今思えば、これは兄が「思い通りにならなかった憤懣」を私に向けただけなのかなと思う。

私は「理解に困る=怖かった=暴力」回避したんだろうと思う、そして発達的な特性の為に記憶の整理が上手にできず、断片的に記憶した結果が今の「いいようのない不安」に繋がったのかもしれない。「誤った認知=自分が悪いから」に繋がったのかもしれない。

 


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