「酷暑です。全国的にやヴぁいです」
「太陽が人を殺しにかかってる気がしますね。ところで何でこの家は冷房がついてないんですか?何かの戒律ですか?」
「風通しがいいから何とか我慢できる、てのが家主の言い分なんだけど、そもそも我慢する必要ないでしょってね。あんまりな天気だから午後は図書館に避難したよ。あそこも大して冷房効いてないけど大分マシ」
「ただ、夜は心なしか去年より過ごしやすい気がしますね。あの時はでっかいタライに水張って足突っ込んでましたよね」
「ああ、窓全開にしてるから。冷えた空気が入ってきて去年より快適よ?」
「網戸してても虫入ってきそうなもんですが、大丈夫なんですか?」
「虫入ってこないんだよね。不思議と」
「そういえば気温が35度を超えると蚊の活動が停滞するとかネットで見ました」
「それが原因かも?暑すぎて逆に夜が過ごしやすくなるとか皮肉なもんだ。というか普通に日中35度超えてるんだよな」
「異常ですよね。恐ろしいのはこの異常気象が世界レベルで起こってるってことで、もしかしたら来年以降これが標準になってしまうかもしれないと」
「そうなったらもう冷房入れないといかんな」
「毎年恒例の我慢大会はもう打ち切りましょう」
「ところでこの暑さの中だけど、朝いちごの畑行ってきた」
「うわ、お疲れ様です」
「いちごの苗づくりをしてたんだけどさ、8時過ぎたら人間が活動する環境じゃなくなるよホント。2時間くらいいたけどそれが限界だ」
「熱中症なりますって」
「先週植えたいちご苗も枯れ気味だし、朝水やるだけじゃ不安だ」
「去年は雨が降るのを見越して植えてたんですが、今年のカラ梅雨はどうしようもありませんよね」
「毎朝水やるには畑と距離あるし、さてどうしたものか」
「遠距離の冠水装置があるといいんですけど」
「ないことはないし、むしろ作れないこともないと思う。てかググってみれば・・・ほら、あった。自動水やりき。1台1万円しないんだ。へー」
「言ってもこれ家庭菜園用のやつじゃないですか。本格的なのはもっとしますよ」
「まぁ苗も全部が全部枯れてるわけじゃないし、ポットで育苗した苗はもっと丈夫になるだろうから。様子見てやってくさ。お盆前には植え終わらないといけないけど」
「今進捗率はどの位ですか?」
「全部で300本、試しに植える分を含めて400本。今50本ほど植えているから、来月上旬には終わらせるよ。早く終わらせないと冬の寒さに耐える丈夫な苗が育たないし」
「ところで庭にあったあの怪しいバケツ無くなってましたけど、もしかして畑に持ってったんですか?」
「ああ、スギナ汁の話?そだよ?」
「スギナだったんですかあれ。ヘドロを希釈してたのかと」
「ヘドロを水に薄めて何をすると思ってたのかな君は」
「・・・飲む?」
「俺を何だと思ってんだ」
「スギナって雑草じゃないですか?」
「そだよ。生命力の極めて強い雑草。刈り取ってたっぷりの水に付け込んで2週間で出来上がるどす黒い液体がスギナ汁。ケイ素が含まれる害虫忌避剤になるとかなんとか。要は自然農薬だ。オーガニック野菜を作ってる農家さんに教えてもらった。ところでオーガニックって商標登録されてるからうかつに使えないらしいぞ」
「畑に放置するならとにかく家の隣に置くのはやめてもらえませんか?最近虫湧いてたんですけど」
「自然農法にこだわるなら虫との共存もある程度やむをえないなって」
「家にまで侵入してきたら殲滅やむなしですがね」
「とりあえずこの前作った分はその有様だったから、全部畑に使い切ったよ。カラカラだったし」
「あの匂いはちょっと酷かったですから、それで安心です。ただ苗には逆効果になるような気がしますが」
「大丈夫大丈夫。人にとっては臭くとも苗にとっては栄養だ多分。とりあえず定植の続きは来週末だな。1日仕事で余計なことやらなきゃいけないけど。今から気が重い」
「畑作業は気重くないですか?」
「正直、メッチャ面白い。セラピー受けるよりよほど精神にいいよ」
「子どもの頃家での農作業は嫌いでしたよね」
「うん。親に言われることだけやって、工夫の余地がなかったから」
「自分で計画して、目標作って、効率のいいやり方を考えて。それは確かに面白いですよね」
「自由だね。これで収穫もしっかり出来たら本当言うことない。今のうちに言っとくけど、俺の性格この手の農業向いてる」
「心から楽しいと思えることができたのなら、私は何も言うことないですよ」
「あとは死なない程度に頑張る気力だな」
「それは今の仕事で鍛えられてるから大丈夫ですよ」
「肉体的な辛さより、精神的に殺される方がよほどきついってのを、この職場で嫌というほど理解しましたから。ふふふふふふふ」
「ねー」
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