対話 台風

「台風だ・・・」
「お顔に生気がございませんね」
「仕事にもろ影響がでる・・・まじ嫌になる・・・はぁ」
「愚痴とは珍しい。ため息をつくと幸せが逃げますよ」
「恨み言のひとつやふたつも言いたくなりますよあんた！これのせいで俺がどれだけ面倒な事態に陥ってると思う！？そりゃあ全国に目を移せば台風の影響で農作物が駄目なったとか土砂崩れなったとか洪水なったとか大きな被害を受けた方々もいらっしゃるでしょうし俺だけ不幸自慢するのは不謹慎ってもんさ！けど！だけど！詳しくは言えないけど今俺がやってる仕事は雨が降られると難易度が急上昇する上にたくさんの人に迷惑がかかる上俺にかかってくる責任が理不尽に大きいってそりゃあ難儀なもんなんですよ！さらに会社のシステムの不合理性も相まって真綿で首を絞められながら綱渡りしてるようなもんだ！やっとこさ先週の台風をやり過ごしたと思ったらまただぁ！？ふざけんじゃねぇぞ腐れ台風がぁぁぁぁぁぁぁっぁ！！！」
「荒れてますね。台風だけに」
「うまい事言ったつもりかくそがああああ！！！」
「そんな自棄になっても状況は変わらないですって。それほど困難な状況ならば事前に対策を取ればいいのです。段取り八分といいます。休日中にどうにかしましょう」
「やったさぁ。おかげ様で三連休全部潰れました」
「あらら」
「秋になってからわたくしまともな休みが一日もありません。糞忙しいです」
「それはそれは」
「旅行行きたーい。適当な山行って秋を感じながら写真を撮ってきたーい」
「本読んで我慢しましょ」
「日中息つく間もなく動き回る上に夜まで仕事があるから帰る頃にはへとへとでね、本を読む気力が湧いてこんのだ」
「けどブログは更新するんですね」
「今月は一度もしてなかったでしょ！疲れてんだよ！」
「今日は早く帰ってきたじゃないですか」
「祝日だよ！？世間は休み！俺！仕事！せめて早く帰りたい！これ人情！わかる！？」
「言葉が雑になってますが、そのくらいの元気があればまだ大丈夫です」
「言っとくけどな、秋に入ってから俺５㎏痩せたぞ！」
「おお！おめでとうございます」
「めでたくねえ！いたわれ！」
「散々ジムに通いながら体重が減らなかったのに仕事で減量できるなんて皮肉ですね」
「もっと健康的に痩せるつもりだったんだけどなぁ」
「過ぎてしまったものは仕方ありません。考えるべきはこれからです」
「その通りなんだけどさ、やるせねえ」
「仕事のピークも今だけでしょう。止まない雨はありません」
「台風だけに？」
「まさしく。元気出ましたか？」
「うまい事言えてはいないけど」
「もう少しがんばってみましょう」
「やむないね」
「駄目なら逃げればいいのです」
「お前がそれ言ったらブレーキ役居なくなる・・・」
「仕事で体を壊しては元も子もありませんから」