諸葛菜草叢記

 "窓前の草を除かず“ 草深き(草叢)中で過ごす日々の記

雉 鳴きて~# 終章

2020-05-29 13:57:06 | 日記・エッセイ・コラム

 

  朝明けの 雑草(あらくさ)わけて 雉 行かむ

       貌(かお)赤あかと 大見得(おおみえ)切りて

                                  夢 蔡

 

  もともとは、この近郊に、雉は棲息していなかった。

 

   しかし、周辺開発まえの利根川水系の小河川・粕川は、

  禁猟区の指定外であった。それに目を付けて、

  20数年前に、ハンター愛好者が、雉をかなりの数、放鳥した。

  毎年、猟期に入るや、愛好心を満たすため、小型ジープを

  乗り入れ、猟犬を放した。その後で、猟銃の炸裂音が何度もした。

  

   枯れ葎(むぐら) 鉄砲打ちの 影ありて

            雉よ 逃げろと  無言にさけぶ

                                無 才

  

   幸い、この一帯は、禁猟区となり、かなりの雉が生き残った。

   

   最初の放鳥組からの生き残りは、その後、繁殖に成功する。

   雉の寿命は、約10年とされている。

   今、盛んに鳴いているのは、2~3世代目くらいかも知れない。

 

   写真の 雉は、急ぎ足である。

 

  2~3週間後に、ブロッコリー畑になる,荒起こしの土の中を横切る。

  雉の行く先は、皆出ていった廃屋。いまは、雑草群落である。

  廃屋跡とは言え、一応、村の内側である。

  しかし、人影ほとんど無し。限界集落的でもある。--

  故に、ここが、安全地帯ーーー

  ちょっとした、皮肉な出来事である  ーー 

 

   辺りを伺いつつ、この後、雑草群落の中へ入って行った。

   時に、雌雄が走り出ることがある。土手際で、食事かー

 

    【 雉も鳴かずば 撃たれまい 】

  「 鳴くことがなかったら、猟師にきずかれず、撃たれまいに。

   転じて、無用なこと言ったばっかりに、災難をこうむる。」

   とかの”言い回し”に使われておりますが、

   キジ曰く、「 迷惑で~すーーー  」

 

   雉=オス雉は、鳴くことを義務付けられている。

   ① 「メスへのアプローチーー 」 声の大きさー

   ② 縄張り宣言ーー

    「 これだけの面積(安全性‣食料)を確保しているーー!

      故に、君を飢えさせることがな~い。

     安心して、卵を抱いていなさい。ヒナをかえしなさい。」

     故に ケン・ケーンと二声に鳴くのである。

     いや、鳴かねば、男が、”すたる”のである。

 

  ーーー 参考 添付

  「 雉子(きじ)の雌鳥(めんどり)薄(すすき)のもとで

                    妻を尋ねて”ほろろ“打つ」 

        岩波文庫  「山家鳥虫歌」(近世諸国民謡集)より

   *注 「ほろろ(を)打つ」 雉が羽ばたきして鳴くこと。

    

    「春の野の繁き草葉の妻恋に

             とびた立つきじのほろろとぞなく」

                   (古今集 1033  平貞文)

     :*注 「ほろろ・・」 は、人の方では 涙流すこと。

     雉子は、古来、親子・男女間の深い愛情の歌には、

     欠かせない”アイテム”であったのです。

     万葉・古今以来、日本人には、身近なと言うよりも

     日常生活に接した鳥でした。

     

     いま、雉の声に起こされ、藪の中の彼らの生態を

     想像している。

 

     

     「 自然は、あらゆる真理を、

            おのおのそれ自身の中に置いた 」

                              ( パスカル )

 

          

          ------<了>-------

     

        

 

 

   

   

 

  

   

   

 

  


最新の画像もっと見る

コメントを投稿