“寒禽しずかなり震度7の朝”(戸恒東人) ▼【冬の鳥】 寒禽 (かんきん) 冬季の鳥の総称。特に冬に限って棲息する鳥の意でなく、山野・水辺で冬の生活を鳥と言う意味である。(虚子編 新歳時記「花鳥諷詠」より)▼ 寓居の窓前の早朝。、ヒヨドリ・椋鳥・尾長の群れの回遊。、葉の落ちた小枝に、コガラ・ショウビタキ(←冬鳥)・メジロ。時々、栗のてっぺんに、コゲラ。畑を歩くセキレイ。雀は、朝日が軒に差し込んでから起き出す。
ー① ひよどり
ひよどりに 熟柿(じゅくし)ひとつを 残しけり ー夢蔡ー
▲ 剪定を怠っているが、富有柿は、毎年よく実をつける。ヒヨドリ・ムクドリが、回遊してきて熟し加減を吟味しに来る。少し渋みの残る“実”がたわわに付いた枝をそのまま切り落とした。ヘッタに小穴を開けて、焼酎を浸み込ませた。自前の“おけさ柿”である。 (←4~5日すると、渋が抜ける。)
ー② 江戸文化の華、“柳川”を参考に“せきれい”ーー
せきれいを 真似してみてと *女神(めがみ)云(い)い ー夢蔡ー
▲① 【ハクセキレイ】 河原・市街地の公園・田畑でよく見られる。尾羽を上下に大きくふって、河原の小石などの上を歩き回る姿が特徴的。別名は「イシタタキ」「イワタタキ」(←「鶺鴒」とは、この種類の総称)
*注→「女神」について。 沢山の神(35柱)を産み落とし、日本列島の島々を創ったのは、イザナギ命(夫)・イザナミ命(妻) の夫婦神でした。(←本川柳では、♀「イザナミ命」を指します。)▼ 夫婦の“共同作業”は、最初は上手く行きませんでした。それは、「女神」が先に誘ったせいだと、天の神に諭されました。さらに、“セキレイの所作”を真似ると上手く行くことも学びました。
“知(しり)切(きつ)て居るに せきれい馬鹿な奴” (柳多留名句選1454) (←(訳)夫婦神は、 男女の道など当然いる知り尽くしてだろうに、わざわざ教えるなんて、せきれいはおせっかいで馬鹿なやつ) ▼ 「そお~、言われましても~」 とハクセキレイは小首をかしげて申しております。 (写真①参照)
ー 補注ーーー
“余ったを不足へ足して人は出来”(柳多留名句選) ▼ 「我が身の成り余れる処をもちて、汝が身の成り合ざる処に、刺し塞ぎて、国を生み成さんと思ふ。(←イザナギ命)」ー と「古事記」に記されています。(←江戸庶民の故事を読み込んだ諧謔あふれる名川柳です。)*神聖にして犯すべからずの神様の「国創り」も、凡俗がやれば、単なる“人作り”になってしまいます・・と言う可笑しいみであります。ーそれにしても 神様も結構“ダイレクト” ーーですねー
ー③ 沼は、日に日に水が引いてゆきます。“アオサギ”ー
夕映えに 紅(あか)く染まりて 青鷺は 水冷たきに 耐えて生きなむ ー夢蔡ー
▲ 【アオサギ】 いつまでも動かずに、水際にたたずんでいることが、よく見かけられる。沼では、弁天小島の樹の一番高い枝々を占拠して巣をかける。
ーカモ・鷺などの水辺の鳥達は、冷たい水に耐えることが出来るよう、適応している。彼らの太腿の付け根には、「熱交換装置」が備えられている。心臓からの温かい血液は動脈を通り「装置」にいたる。一方、水中にあった足のなかを流れる血液は冷え切って「装置」に至る。「装置」内で、脚からの冷たい血液は、動脈から温かさを分けて貰う。故に、鳥の体内には冷たさを持ちも込まない。動脈は温かさを持って足先を巡りので凍えることがない。 (参考ー「適応の動物誌」 草思社)
ーと言うことで、本短歌のごとき心配をすることはありませんでした。ただし、空腹に耐える「装置」はあるのかナア~-
---冬の鳥ーー<了>ーー
ー 追伸ーー
「 どんな小鳥にだって『好きな餌』があるように、どんな人間だって、それぞれの仕方で、よい方へも悪い方へも誘うことが出来る。」--「 われわれは、過去によって生き、過去によって亡ぶ。」 (ゲーテ 「箴言と省察」より)
ーー 死者の死ーー
“ 突風に生卵割れ、かってかく撃ちぬかれたる兵士の目 ”
“ 処刑さるるごとき姿に髪あらふ少女、明らかにつづく戦後は ”
鮮烈な言葉によって現代の詩としての短歌を築き上げた歌人ー塚本 邦雄の<日本人霊歌>から二首選らんだ。(「塚本邦雄歌集」 思潮社 より) * 塚本の「異議申し立て」は、今日においても充分生きている。
この国の 「B層」なりて 冬寒し ー夢蔡ー
--- 草々ーーーー
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