不定形な文字が空を這う路地裏

Absinthe








剥落する幾許かの、幾許かの輪郭を、新規の過去を手繰る輪転機の脈絡に乗せて、点滅する電灯の落胆のような痛み
病み落ちた魂のホメオパシー、降る闇の狭間の脱落、板張りの壁で散らばった羽虫の黄ばんだ複眼
零度、から数えて何度めかの目盛りの夜半、湿気た寝床の上で目を見張る早合点の夢魔の長い、途方もない苛立ち
ソプラノで小さく嘶く幾つかの電気機器の、和音を拾えば大抵短調だ
焼土を敷き詰めた脳漿の疼きは頑丈に仕上がって、瞬きにうろたえる水晶体は被写体のフォーカスを絞り損なう
白濁した視界の臨界はおそらく俺をどこにも連れては行かない
心房から滴る血液の乱気流、存在点は盲目に昂り、潜在意識は放熱を訝しみ、咆哮にはおそらく獣のそれとは程遠い、幾許かの輪郭しか残されてはおらず
回転する限界の融点、ああ不要物は流れだすのだ、異常な放出の停止を執行出来ずに、ただ放り出されて流出していくのだ
逆遺伝学を唱える卓上ラジオの周期的な歪み、電波構造が解析されるには不十分な緯度と経度で三半規管は天秤がしっかりと釣り合う地点を探す、でも盲目だ、おそらくは
ケビン、ケビン、ケビン、何時か名付けた窓の外の女郎蜘蛛、甲虫の血を吸い尽くして萎んだ殻を廃棄している、風が強い日女郎蜘蛛は居なくなる
天鵞絨の目をさげた何かが静かに此処を窺っている、姿無きものはいつでも目的を気配に変えるのだ、次第に濃くなる霧のリズムで
便槽に沈殿した遺言の修正箇所、すべてを書き変えた誰かが整えた明日の準備
グラン・ギニョール忍び寄る不整脈的な足音のインプロビゼイション、群生する感情の性器の不作法な射出現象、錆びた思春期が偶発的に生き永らえたら最も見慣れた鏡像の…


時代錯誤な戒律のメロディ、離断した部分に異端者の施術、不透明な体液は培養する細胞の分類を容易くする、幻灯機が映し出した悪夢の様なイマジネーション、蝋燭の炎のように首を振りながら、そう、初めも終わりもない眩みの仕様、夜が眩めいている、部屋が眩めいている、俺が眩めいている、未整理に進行する時、生まれるはずのものたちの躊躇い、悟れるはずのものたちの血迷い、すべてが便槽の沈殿した遺言のように、脈絡、短調、執行、遺言、脈絡、短調、執行、遺言、遺物の形状はどこかに憎しみを湛えているように見える、だから眩むのだ、僅かな揺らぎを確かに感じ過ぎて…移動する泥土に紛れ込む体躯の蠢きは概ね無意味で、咥えこまれることには慣れっこだひと通り…天鵞絨の目をさげた何かの金属的な嘶き、伽藍の中の死体の腐乱、指をねじ込んで水晶体を定位置に戻せ、俺はまだ血流を止めることを許されてはいないのだ…

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