それはきっと初めから出来上がっている
それはどこかにあるのか、それともどこにもなかったのか、違うやり方をすれば手に入れられたのか、近くにあったけれど見落としていただけなのか、要因なんて探せばいくつだって見つかるものさ、...
今日の証拠
秋が重い腰を上げて、ようやく日も少しずつ短くなり始めた、空には一文字に切り裂かれたような雲が浮かび、そいつらを見下ろすように鱗雲が多足生物の足跡のようにぽつぽつと揺れていた、秋に生...
自分をも欺くために、すべて
この夜は戻らない、錆びれた運動場のフェンスに巻き付いた蔓の記憶のように、検知出来ない場所で発酵した感情を生み続ける、それはどこにも行かない、蓄積してやがて漏れ溢れ、内側から肉体を侵...
狭間
非常階段の先で光輝く太陽を見た、それは死にゆくものが最期に見る光景のように思えた、でもそれを確かめる手段なんか何も無かった、それを知るには俺はまだ強欲過ぎたんだ、衝動に従って―意味...
俺にDDTを
緩く縛った紐ほどほどけ始めていることに気付けない、それはあまりメジャーじゃない真理だ、...
モノローグ・ギャングの照準
知らないでいたって別に困るようなことはなにもないけど、余計なことをたくさん知っている方...
命のすべての闘いにおいて俺が語ることは
じくじくと膿んだ傷の中に次の一行があった、指を指しこみ痛みに悲鳴を上げながらつまんで拾...
大雑把なルーレットの上の夜
鼓動には0・5秒程度の誤差があるように思えた、真夜中のキッチンでシンクの側に腰を掛けて水を飲んでいた、現実感はあまりなかった、と、普通は書くのかもしれないが、それがその日の中では一...
喪失というものにかたちがあるとしたら
それでも血は流れ続けた、ひっそりと咲いたアカシアの上にも、俺は俺を見放しそうな意識をど...
Shattered
氷山の心臓に居るような凍てつきと遮断を感じていた、外気温は決してそんなに低くはなかったが…お...