濃霧の中にもぐりこんだ様だ
亀裂をさらに強引に押し広げながら
昨日の夢が練乳の様に心臓を埋め尽くす
吐き出したいのに経路がない
吐き出したいのに経路がないんだ
食虫植物の様に心臓は重く肋骨の下まで垂れ下がり
不自然な安定に思わず俺は叫び声を上げてしまう
怖さ、それは本当は
いつも自分の中から生まれてくるものなのだ
血液に混じってネガティブが循環する
俺は何もかも差し出すことは出来ない
だから何所にも行けずに留まってしまった
叫び声が何所へ行くのか判らない
俺に行く先を教える気がないみたいにただがらんとした空洞の中でこだまして消えて行った
あいつが何所へ消えてしまうのか判らない
いつか俺が消えたときにその行く先で会うかもしれないけれど
今はただ焦れながら見送ることしか出来ない
今はただ焦れながらただ見送ることしか
術がないことが生き延びてきた理由だと気づいたんだ
何かを手にしてしまったらきっと
その重みに踊らされてしまうだろう
埃の溜まった床にうずくまる
変な臭いを放つ虫が迷ったように行き来している
お前は俺に行く先を教えてくれるかい
それともお前自身にも判らないのかい
それともお前たちは行く先を決めることなどないのかい
よかったら俺に教えて
よかったら俺に教えて
吐気を伴う嫌な眩暈に苛まれながら
俺はやつの後足に生ぬるい息を吹きかけた
俺に気づいたらどうするか見てみたかったんだ
そいつは自分を揺るがすような風について
ほんの数秒考え込んだだけだった
そして
俺の頬をかすめて電灯を目指した
もしかしたら行先を示してくれたのかもしれない
俺はやつの残した軌跡を読み取ろうと目論みながら気を失くし
朝そのままの姿勢で続きの様に目覚めた
俺の視界には何も居ない
ああ
心臓はまだ動いている
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