不定形な文字が空を這う路地裏

どこへ帰る?(中心部は台風)












激しい焦燥の後に濡れた犬の様な心情を目の当たりにして
またしても愚かさを売物の様に扱いながら
俺は薄曇の空に隠れながら沈む太陽にシンクロするのだ
遠くの台風が病人の苛立ちの様な風を吹かせていた
雲が割れて古代の神話の建物の様な光の柱が街に突き立っていた
サイズ…それはサイズというものを俺に突きつけるために使わされたのだ
サイズというものの基本的な概念を俺は理解するのだ―街を揺るがせるにはコメディの様なスケールを造作もなく操れなければならない、そして
それを「コメディの様な」と比ゆしてしまう時点で俺にはもうそれを手に入れることは出来ない
おおぉ、怠慢と退廃が
いつの間にかそばに寄り添って居た様な18時前だ、原動機付自転車のアクセルを不用意に吹かしながら川べりの小さな信号でそんな空を見ていた、ひと時空に築き上げられた想像上の宮殿を
逆行のせいですぐにそれと知ることが出来ない青のシグナル、どこへ向かってやつは「進め」と言っているのか?行く手は阻まれてるぜ…行く手は阻まれている、俺は右手のアクセルの角度に
爪の先ひとつほどの意味もないことを知っている、そら、先に行けよ、鋭敏なお嬢ちゃん―あんたみたいなやつを行かせてあげるのは大好きさ…急いてる後姿のなんと哀れなことよ…



昔、あの川べりの小さな信号の側の
古い商店の自動販売機で缶コーヒーを飲んでたことがある…あれはもう日付変更線が近いころ―もう数えることが出来ないくらい変えた仕事にまたしくじった日の夜だった
そのころ俺はまだ20代で今よりもう少しは脂ぎっていたが的はすべて外していた
10代の頃の何かが一度カラになりはじめていた頃で―要するにどうすることも出来ないで居た、そんな毎日だった
青写真は一度はすべて破かれてばら撒かれなくちゃいけない、だけどそんなこと渦中に居るときには判るはずもなく
重油の海で渦巻きに巻かれてる様なそんな毎日だったな…ひどく緩慢な流れだけど抜け出せない、そんな渦なのさ(しかも呼吸を奪われることは保証されている)、そうだ
俺はその頃の春の真夜中、あそこで缶コーヒーを飲んでいた…ひどくなすすべも無く
無かった、無かった、何も無かった…びっくりするくらいね
書くべき言葉は何一つ浮かんでこなかった、今から考えると信じられない気分さ
そんな日に限って月は美しく空にあるんだ、コンピューターグラフィクスの様な現実味を書いた鮮やかさで―俺はそれを見ていたが俺の水晶体はその光を反射しなかった
あの光、あの光はどこへ飲み込まれていったのだろう?でかい橋の側でじれたタクシーのホーンで俺は我に返る…なんてこった、まるで夢遊病者だぜ



五つの道が変則的に交差する巨大な中継点、誰もが賭け馬の様に鼻息を荒くして…ブルルン、ブルルン、ブルルン…文明は文化を選択したりしない、そんなこた何度も悟ってはきたけれど
ブルルン、ブルルン―綺麗に着飾ったサルどもの群れ―最新機器に指先の糞がこびりついている―もうすぐ青になる、でも
路面電車の来襲を告げる警笛が鳴り響く…そら、横槍だ、向こうに渡れるのはもう少し先だぜ―これまでに何度、その警告を耳にしただろう?もう少し先だ、もう少し先だ、それが叶うのはもう少し先のことだぜ―シグナルが青になる頃に老いぼれてなくちゃいいが
俺は周囲の奴らと同じラインに立つのが嫌で、アクセルから手を放してだらんと垂らす、こちらの都合でシグナルは変わったりしないことを教えてあげるよエブリバディ―猛暑、と今日もニュースが言っていた、涼しいスタジオですましたアナウンサーが…こうしているだけで前頭葉が燻製になっちまいそうな感じだ…俺は夕べ聞いた歌を思い出そうとするが二つ目のコーラス部分の頭がどうしても思い出せず、そうこうしているうちにシグナルは青に変わった―唸りを上げる「文明」咆哮にしてはあまりにもセオリーから外れ過ぎる―









今でもその歌をうまく思い出せない、だけど
あの頃よりはずっとマシなんだ、あの頃よりは…

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